アパレル業界で進むRFID導入の利点―店舗や商品管理はどう変わる?―

RFID(Radio Frequency IDentifier)は、商品の一つ一つに多くの情報を付与でき、商品と接触することなく容易に商品データの読み取りも行えるシステムです。販売計画から消費者に届くまでのプロセスを統合的に管理し、効率化する「モノの統合サプライ」市場においても、RFIDは重要な役割を果たします。

「消費トレンド総覧2030」第14章モノの統合サプライ市場

(モノの統合サプライ市場の詳しい内容については、書籍にてご確認いただけます。)

RFIDは商品をユニークIDで管理でき、サプライチェーンや販売後のトレースも行えるといった利点があり、モノ(商品)のあらゆる流れを効率化し、流通や物流に革新的な影響を与えることが予想されます。

本記事では、RFIDの導入が進むアパレル業界を例にとり、RFID導入のメリット、店舗形態や商品管理に与える影響を解説し、他業界への導入の動きを見ていきます。

アパレル業界で進む、RFIDブーム―RFID市場をけん引するアパレル業界―

国内ではアパレル業界が積極的にRFIDを導入し、市場のけん引役となっています。2010年にI.T.S’インターナショナルが国内で初めてRFIDタグを導入したのを皮切りに、ユニクロ、オンワード、TSI、良品計画、シップスなどでも採用が進んでいます。

(図1 :小型で防水性、耐熱性、耐圧性を備えたソフトリネンタグ 出典:富士通プレスリリース):左
無印良品のタグに導入されたRFID(筆者撮影)タグの裏側にRFIDが貼り付けされている:右

アパレルで導入が進んだ要因として、RFIDタグの単価が下がったこと(現在は10円ほどと言われる)と、アパレルで取り扱う商品は単価が比較的高いため、費用対効果が見込まれると判断されたことが挙げられます。今後、タグの単価が下がれば、他の業界にも波及することが想定されます。

RFID導入の大きな利点は、業務の効率化・省力化が可能となることです。

例えば、RFIDを利用して一部のレジを無人化し、店舗スタッフの省力化を実現しているのが、ユニクロです。ユニクロでは一部店舗にセルフレジを導入し、顧客が容易に商品を会計できる仕組みを作っています。

(図2:セルフレジ。複数商品を一度に読み込むことが可能なため、レジ操作に慣れない顧客であっても容易に会計を済ませることが可能 出典:東芝テックのプレスリリース)

また、RFIDの活用によって棚卸の効率化も実現できます。

オカベマーキングシステム株式会社によると、アパレル企業向けRFID入出庫棚卸システム導入の成果として、商品点数25,000点の棚卸作業は、バーコードタグ使用時6人×6時間かかっていたものが、RFIDタグ使用時で2人×1.5時間と、27人時の短縮が達成されたということです。

導入成果イラスト

(図3:オカベマーキングシステム株式会社サービスページより)

このように、棚卸の負荷が大きく削減され、人件費の削減ができます。

さらに、在庫管理が適切になされることで、紛失や盗難によるロスの削減も見込まれます。

変わる!アパレルの店舗形態と商品管理

RFIDタグがアパレル業界に広く導入されることで、近い未来、店舗形態や商品管理は具体的にどう変わっていくのでしょうか。

まず、店舗形態は以下のように変化すると考えられます。

  • ユニクロで導入済のセルフレジの、他企業への波及
  • 店舗入り口のRFIDゲート設置による、万引きや盗難の防止
  • 棚卸や在庫管理の大幅な効率化

これらの変化により、リアル店舗の必要人員が大幅に減っていくことが想定されます。

加えて、店舗スタッフはバックヤード業務に掛ける時間が削減され、顧客とのコミュニケーション構築や店舗運営戦略の立案などに専念でき、専門性やサービスの質が高まり魅力ある店舗が実現されるでしょう。

また、商品管理には以下のような変化が起きると予想されます。

  • 商品に関する多くのデータがタグに保存できる
  • サプライチェーンのリードタイム短縮

このように、商品情報がRFIDで管理できるようになることで、SKU管理が簡易化され、いままでよりも多くのサイズ、カラー展開が可能となります。ZOZOTOWNのPB(プライベートブランド)ZOZOは、非常に細かなサイズ展開を実現することで、最適なサイズをリコメンド可能となっています。これらの商品にはRFIDタグが導入されており、膨大なSKU(Stock Keeping Unit:商品管理における最小の管理単位。ZOZOのジーンズのみでも、800SKUあると言われている)管理に役立っているものと想像されます。
また、商品がどの工程にあるのか、どこにあるのか、いつ店舗にとどくのか、店舗にどの商品が何点在庫として存在するのかなどの情報が、リアルタイムに把握することが可能となり、顧客のニーズに応じた柔軟な商品提供(企画段階での商品の引き当て、人や時期に応じた細かい値引き、顧客の嗜好に合った品ぞろえの実現など)が可能となります。

これらの変化により、店舗スタッフの長時間に及ぶ単純作業、商品の欠品による機会ロス、万引きや盗難・紛失などによる棚卸減耗リスクといった様々な無駄が削減され、アパレル業界ではさらなる効率化が実現していくでしょう。

2025年に向けて コンビニやドラッグストアでも進むRFIDタグ活用

アパレル業界でのRFID普及をきっかけに、他業界への普及も進んでいくことが想定されます。その追い風となるのが、経済産業省が中心となって策定した「コンビニ電子タグ1000億枚宣言」です。

宣言では、2025年までにコンビニ事業者(セブン-イレブン、ファミリーマート、ローソン、ミニストップ、ニューデイズ)のすべての取り扱い商品に電子タグの付与を目指すとしています。

<宣言文>

  • 2025年までに、セブン-イレブン、ファミリーマート、ローソン、ミニストップ、ニューデイズは、全ての取扱商品(推計1000億個/年)に電子タグを貼付け、商品の個品管理を実現する。
  • その際、電子タグを用いて取得した情報の一部をサプライチェーンに提供することを検討する。
  • 2018年を目処に、セブン-イレブン、ファミリーマート、ローソン、ミニストップ、ニューデイズは、特定の地域で、取扱商品に電子タグを貼付け、商品の個品管理を実現するための実験を開始する。

<上記宣言の留保条件>

  • 特殊な条件(レンジ温め、金属容器、冷凍・チルド、極細等)がない商品に貼付する「普及型」の電子タグの単価(ICチップ+アンテナ+シール化等のタグの加工に関する費用)が1円以下になっていること。
  • ソースタギング(メーカーが商品に電子タグを付けること)が実現し、商品のほぼ全てをRFIDで管理できる環境が整備されていること。

(出典:https://www.meti.go.jp/press/2017/04/20170418005/20170418005.html

RFID対応セルフレジ「レジロボ®」           「レジロボ®」イメージRFID貼付商品
(図4:ローソンで行われた実証実験より。出典:ローソンのプレスリリース)

 

同じく経産省は「ドラッグストア スマート化宣言」も策定し、日本チェーンドラッグストア協会加盟店舗においても、2025年までに取り扱い商品に電子タグを実装して、商品の個品管理実現を目指すと宣言しています。

 

これらの動きは、小売業界でRFIDタグを用いた商品管理が推進されるトリガーとなる可能性が高く、見逃せません。
RFIDによる店舗流通やモノの効率的な運用は、現在普及が進むキャッシュレス化とともに、流通において重要なムーブメントになることは間違えないでしょう。
消費者である私たちが自分の欲しいモノを、最適な手段で、手間や無駄なく手に入れられる未来が、少しづつ近づいているのを感じます。

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Yoshida

カワイイ白犬と一緒に暮らす、ミレニアル世代。 趣味は筋トレ・山登り・座禅・華道で、剛と柔の両立を目指している。 AI、ロボット、IoT等のイノベーションによって、社会課題が解決することに興味を持ち、業務に取り組んでいる。