20年後の会社を支える人材を育成。未来を切り拓くリーダーを発掘する「未来人材アセスメント」と「未来人材育成プログラム」とは(前編)

時代の変化と共に、DXやイノベーションを主導する自律型人材がますます必要とされています。次世代の人材は「自己決定力を備え、自分の考えで進む道を切り開き、効果的なコミュニケーションをとり、計画を着実に実行する」ことが求められます。そのような先駆的な人材をどのように可視化し、アセスメントを通じて育成するのか。D4DR社長の藤元に聞きました。

未来の人材育成における7つのコア・コンピタンス:企業の課題と解決策

新しいテクノロジーの台頭で、企業は次々と変化を迫られている状況です。事業部単位でも変化が求められる中、社員の育成方針に悩むマネージャーや育成担当者も多いですね。
マネジメントや人材育成において直面する課題と、解決策を教えてください。

企業が直面する人材に関する課題は多岐にわたりますが、最も重要な課題は「自律して動ける人材をいかに確保するか」ではないでしょうか。

理由の一つには、指摘の通りテクノロジーの進化に対して、それに追いつくだけのスキルを社員に身につけさせることが難しいといった点があります。企業からスキル形成のための施策を都度提供するのは難しいため、社員の能動的な学習が求められるでしょう。

他にも、リモートワークの普及やグローバル化による環境の多様化も考慮しなくてはなりません。異なる価値観やバックグラウンドを持つメンバーに配慮しながら、円滑な情報共有や意思疎通を図り、協力関係を築く。そのような営みを通して、未知の変化に対処できる人材の重要性が増しています。

従来の人材では対応しきれない問題が今後ますます増えていく中、数十年後の将来を見据えて企業がどのような人材を育て、どういったスキルを伸ばしていくのか。

そもそもそうした長期視点の人材育成の知見を持つ企業は少なく、方針や打ち手が定められていない点にまず取り組むべきです。

そもそも、これからの時代には、どのようなスキルセットを持つ人材が求められるのでしょうか。

これからの企業に求められるのは、一言でいえば「自ら問題を発見・解決できる人材」。そして現在だけでなく未来を見据え、変化に対応できる自律的で創造的な人材です。

2022年に作成された経産省の資料では「未来人材」と定義されています。

汎用的な能力としては、従来需要が高かった「注意深さ」や「まじめさ」よりも、「問題発見力」や「革新性」といった、「常識や前提にとらわれず、ゼロからイチを生み出す」能力が重視されていきます。

ほかにも「夢中を手放さず一つのことを掘り下げていく姿勢」や「多様性を受容し他者と協働する能力」など、従来とは社員に求められるマインドや行動が大きく変化していることがわかります。

未来に求められるスキルの中で、特に重要なスキルはあるでしょうか。

私たちは上記の背景を踏まえて、弊社の知見をもとにより本質的なスキルを7つのコア・コンピタンスとして定義しました。それを、先程お伝えしたアセスメントツールに集約しています。

具体的には、「知の探索力」「未来洞察力」「事業構想力」「マーケティングセンス」「プロデュース能力」「マネジメント力」「デジタルセンス」の7つです。

これらは新規事業やデジタルトランスフォーメーションに成功した企業のケーススタディを基に整理し、集約しています。

7つのコア・コンピタンスについて、より詳しく伺えますか。

1つ目の「知の探索力」は、問いを立てる力です。自らの担当領域の情報しか業務を通じて得られないことが当たり前の企業では、担当範囲外のインプットを得る時間や余裕がありません。そのため、問いの視野が狭まりやすくなっています。

次に「未来洞察力」は、バックキャスティング力、妄想力とも言い換えられるものです。長期的に考えるスキルは多くの部署ではあまり求められず、現状のタスクをこなすことに主に頭を使うことも多いので、なかなか身につきにくいスキルだと思います。

「事業構想力」は、エコシステムや市場を創造するメタ認知能力とも言い換えられます。現場では新しい事業やプロジェクトを計画する際に外部の要因を適切に考慮できず、内部のアイディアやトレンドだけに頼ってしまっているという課題があると考えています。

「マーケティングセンス」は生活者視点やデザイン思考が代表的な要素です。生活者視点についてはここ10年くらいで普及していますね。ですが、まだまだ十分に活用されているとは言えません。

「プロデュース能力」は噛み砕くとヒト・モノ・アセットのリソースマネジメント、「マネジメント力」はワクワクさせる力、「デジタルセンス」はICTリテラシーが代表例です。それらも言わずもがな、必須で求められるスキルです。

2.次世代の人材に求められるスキルを可視化し、育成する2つのサービス

従来の方法では対応できない人材の変化に対し、どのようなアプローチがあるのでしょうか。

私たちは大企業を中心に、長期スパンでの新規事業のご支援を数多く行ってきました。その中でそうした人材に関する課題についても、どのように解決するかを考えてきました。

そこでまずは、未来に活躍する人材を可視化し育てるツールとして、未来人材のスキルを可視化するアセスメントと、アセスメントを活用してスキルを向上させるワークショップを開発しました。

これらを総称したものが「未来人材育成プログラム」です。D4DRでは、アセスメントとワークショップの2つのアプローチを提供します。

アセスメントはどのような課題を持つ企業向けのサービスですか。

アセスメントは、普段マネージャーや育成側がぼんやりと感じている人材のポテンシャルやスキルを可視化するものです。7つにまとめたコア・コンピタンスを図るスキルマップと、そちらに基づく改善提案を行います。

アセスメントを推奨するのは、将来的に必要とされる人材のスキルやポテンシャルを具体的に把握することに課題を抱えている企業です。

特に大企業の場合、組織が複雑であり、従業員のスキルや強みが見えにくいことがあります。そのため、適材適所の人事配置や戦略的な人材育成が難しくなっていますが、アセスメントによりそうした複雑な人材情報を整理できます。

ワークショップも併せて利用する企業は、どのような企業でしょうか。

ワークショップでは、アセスメント結果を基にチームビルディングや共通言語の形成を図ります。また、通常業務では身につかない先程のコア・コンピタンスを短期間で身につけられるようサポートします。

これにより、組織内でのコラボレーションを促進すると共に、未来人材の育成プロセスを効果的かつ体系的に進めていきます。

アセスメント結果を基にしても、それをどのように業務に落とし込むかに課題を抱えているお客さまには、ワークショップとアセスメントを併せたプランをご提案しています。特に大企業では部門ごとに異なる文化や価値観が存在し、それを一元化することが求められます。

ワークショップはこれらの課題に対処し、組織全体での協力とコミュニケーションを向上させる手段となります。たとえばDX化が進む中で、大手SIerのエンジニアとビジネス側の連携にご利用いただく事例もいくつか出てきています。

3.これからの人材開発に必要な7つのスキルを可視化する「未来人材育成アセスメント」

アセスメントについて詳しく教えて下さい。

通常業務では身につき辛い知識や思考について、どのくらいのスキルがあるのかを可視化するのがアセスメントで、その結果をもとにスキルを実践的に伸ばす場がワークショップです。

ワークショップでは、通常業務ではあまり使わないA~Dのスキルを伸ばす設計にしています。その効果を図るため、ワークショップの前後でもアセスメントを活用しています。

アセスメントでは先程お見せしたように、7つのコア・コンピタンスに紐づく具体的な質問に回答して頂くことで、人材のスキルの視覚的な把握ができます。

未来人材のコア・コンピタンスを図るスキルマップ

コンピテンシーよりも具体のスキルのあり・なしを判定したい場合、実践業務におけるスキルを把握するアセスメントと併用するパッケージもあります。

こちらは、マネジメントであれば「プロジェクト全体のタスク設計」「モチベーションコントロール」など、細かい業務のスキルを可視化するものです。たとえば新規事業やDX支援において、組織やチームのバランスを把握したい場合、人同士の組み合わせの補完や、成長幅を見極めたい時に使用します。

このようにアセスメントを通じて明確になったスキルの不足領域に焦点を当て、専門的なトレーニングプログラムを提供しています。

アセスメントを活用することで、どのような成果が期待できるのでしょうか?

アセスメントの結果は、個々の強みと課題を具体的に把握し、育成プログラムを個別に適用するための基盤となります。

たとえば経営層や経営企画担当者は、組織全体の風土や文化を形成し、サービスが陳腐化しやすい現代においてバックキャスティングを通じた未来の戦略の組み立てが求められています。

マネジメントでは、そのような人材を戦略的かつ柔軟に配置することも大きな課題です。これには将来のビジョンに基づく人材の育成や配置計画が必要となります。

そのための素材としてご活用いただき、人材開発を最適化するとともに、変化する環境に適応でき、イノベーションを促進する組織に変化することを推進していきます。

人単位でコンピテンシーの傾向を把握したい場合、どのような属性を持った人がどんな傾向になりやすいのかといった、デモグラを踏まえたクロス集計にも対応しています。

4.自己成長を促進し、数十年後の会社を支える人材を育む「未来人材育成プログラム」

次にワークショップについて詳しく教えてください。

プログラムの核となるのは、「未来コンセプトペディア」と呼ばれる弊社の未来事象のカード」。弊社の未来シンクタンク「FPRC(Future Perspective Research Center)」のリサーチから、2030~2040年の鍵となる要素を150にまとめています。

技術変化や産業構造の変遷など、未来に関連する情報を参加者に提供し、根拠に基づいたアイディア創発を行います。

カードは参加者間で共通言語を形成し、異なるバックグラウンドを持つメンバーでも同じスタートラインでアイディアを出し合える効果があります。この点は特に高い評価をいただいています。

他にも107枚の社会課題カードや、370枚の生活者のインサイトのカードもあり、これらを組み合わせて使用することで、解像度高く未来を発想するアプローチや、コミュニケーション手法を身につけることができます。

この手法では、多くのワークショップで採用されているKJ法(参加者の考えをブレスト的に出す手法)とは異なり、個人の普段の視野の外からも発想・洞察を生むことができます。

カードを使うことで、個人やチームの知識のばらつきを問わず、一定レベルのアウトプットを生むためのプロセスを経験できる設計となっています。

「自律的に行動できる未来人材の育成」のための設計ポイントを教えてください。

「自律的に行動できる未来人材の育成」を考える上で、重要なのは「自己成長を促進する方法」です。我々のプログラムでは、7つのコア・コンピタンスのスキルを向上させるのはもちろん、「自己成長の促進」を特に重視しています。

『未来人材』は単なる知識だけでなく、自らのスキルや強みを伸ばし、変化する環境に適応できる柔軟性を持っていることが求められます。そのため教科書どおりに学ぶのではなく、個人の興味関心を引き出すワークを通し、個人で成長していくための行動変容を起こすことに焦点を当てています。

また、未来社会の仮説をもとに事業アイディアを緻密化するワークを通して、「未来志向的な問題解決能力の向上」「戦略的なアプローチの習得」「将来の課題に対する有益な提案スキル」などの実践的なスキルの向上にも重点を置いています。

アセスメントとワークショップについてよくわかりました。ありがとうございます。

未来人材育成のプロセスと企業の取り組みについては、以下(後編)に続きます。

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