テレプレゼンス技術・アバターロボットとは?
テレプレゼンス技術とは、アバターロボットなどを活用して、遠隔地にいる人々がまるで同じ場所にいるかのように感じることができる技術のことを指す ビデオ、オーディオ、センサー、ロボティクスなどの技術を組み合わせて実現される。
テレプレゼンス技術は、遠隔授業やリモート会議などビジネスや教育分野での活用のほか、遠隔手術や災害現場での救助活動、遠隔地にある施設の点検など、様々な分野での活用が期待される。
アバターロボットとは、人間が遠隔地にいるロボットを操作し、現地に存在するかのような体験ができるテレプレゼンス技術が組み合わさったロボットのことである。
アバターロボットにはカメラやマイク、スピーカー、センサーが搭載されている。遠隔地で操作する人間は、インターネットでロボットに接続し、カメラやマイクを通じて、遠隔地の場所を見たり、聞いたりすることができる。また、ロボットには、操作者が制御するためのボタンやジョイスティックがあり、これを使ってロボットを動かしたり、操作したりすることができる。アバターロボットは、物理的な距離を超えて、人と人との交流を可能にする革新的な技術であり、今後ますます普及することが期待されている。
予想される未来社会の変化
- 遠隔から味覚、嗅覚を加えた五感すべての再現が可能となり、よりリアルな体験ができるようになる
- 物理的な移動を伴わない遠隔でのリアルな存在感の共有が可能となり、働き方や社会参加の形態が多様化する
- 熟練技能者の技術指導や医療専門家の遠隔診療が、場所を問わず実施可能となり、専門人材が移動せずにスキルを発揮できるようになる
トレンド
Project Starline

Googleは、3Dビデオ通話技術「Project Starline」を2025年に製品化する計画を発表。この技術は、AI、センサー、立体音響、裸眼立体視などを組み合わせ、VRヘッドセットや3Dメガネを使用せずに、相手が目の前にいるかのようなリアルな対面コミュニケーションを実現する。
Googleは、ハードウェアメーカーのHPと提携し、Project Starlineを市場に投入する予定。また、Google MeetやZoomなどの既存のビデオ会議サービスとの連携も計画されている。
2021年の発表以来、Googleは社内および企業パートナーと数千時間にわたるテストを実施し、従来のビデオ通話よりも一体感や注意力の向上が確認されている。2023年にはプロトタイプの小型化が進み、オフィスやコワーキングスペースでの利用が現実的になった。すでにSalesforceやT-モバイルなどの企業で早期アクセスが行われている。
この技術は、遠隔地にいる人々をより自然に、リアルに繋げることを目的としており、次世代のビデオ通話体験を提供することが期待されている。
子育て支援ロボット「ChiCaRo」

子育て支援ロボット「ChiCaRo(チカロ)」は、電気通信大学と大阪大学が共同開発したテレプレゼンス・アバターロボットで、乳幼児との遠隔コミュニケーションを可能にする。このロボットは、離れて暮らす祖父母や保育士が、ビデオ通話や遠隔操作を通じて子どもと遊びながら発達を支援できるよう設計されている。
「ChiCaRo」は、200種類以上の発達促進プログラムを搭載し、子どもの表情や行動データを収集・解析することで、発達の遅れや虐待の兆候を早期に察知することが可能。この機能により、保育士や自治体職員が適切なタイミングで支援を提供できるようになる。
実際に、渋谷区の保育園や福井県鯖江市の家庭で「ChiCaRo」を活用した実証実験が行われ、子どもの発達状況のモニタリングや保護者の育児不安の軽減に効果があることが確認された。また、遠隔地に住む家族との交流を通じて、子どもの社会性の発達にも寄与している。
このように、「ChiCaRo」はテレプレゼンス・アバターロボットの先進的な活用事例として、子育て支援や発達支援の新たな可能性を示している。
文京区庁舎でのテレロボット実証実験

東京都文京区は、東京都の「キングサーモンプロジェクト」の一環として、iPresenceと連携し、2025年1月から2月にかけて庁舎内でテレプレゼンスアバターロボット(テレロボット)を活用した働き方DXの実証実験を実施した。
この実験では、自律走行型の「temi」やタブレットスタンド型の「kubi」など約20台のテレロボットを導入し、管理職や職員が遠隔地からロボットを操作して業務を行うことで、テレワークの課題であったリアルタイムなコミュニケーションの不足や職場の状況把握の難しさを解消することを目指した。
実際にテレロボットを活用した職員からは、「まるで職場にいるような臨場感があり、部下との相談や会議参加がスムーズに行えた」との声が寄せられ、従来のリモートワークでは得られなかった効果が確認された。
この取り組みは、自治体における新たな働き方のモデルケースとして注目されており、今後の行政サービスの柔軟性向上や持続可能な運営に貢献することが期待されている。
外出困難な人が従業員として働く分身ロボットカフェ

2021年6月に東京・日本橋にオープンした分身カフェ。難病や重い障がい、家庭の事情などで外出できない人たちが、自宅から分身ロボットを遠隔操作して接客するカフェである。運営元であるオリィ研究所が開発した分身ロボット『OriHime』&『OriHime-D』を活用して、接客を行なっている。
現在、60名を超えるメンバーが日本国内外から勤務している。2023年2月には、札幌に期間限定で開店するなど拠点を広げるなど、遠隔就労で新しい社会参画の形を実現している。
アバターロボットを活用して学校に登校

ベネッセこども基金とニューメディア開発協会は、2022年度の共同プロジェクトとして「病気療養の子どもがアバターロボットで学校生活に参加し『笑顔』になる。学び、体験のモデル拠点校支援事業」を実施することを発表。
ベネッセこども基金は2016年から病室や院内学級と前籍校をICTでつなぎ、OriHimeを経由して授業参加や友だちとの交流ができるモデルづくりを実施。5年の実証実験を経て、2021年4月からは東京都の特別支援学校5校にてOriHimeを活用した学習モデルが導入されている。
病気療養などで登校が難しく、学校や友だちから疎外感や取り残される焦燥感から休学や退学を選択する子どもたちの課題を解消する一つの手段として期待される。
遠隔地の観戦会場に競技会場の空間を伝送する技術「Kirari!」

Kirari(NTTグループが開発)は競技場やライブ空間を丸ごと伝送、再現することを目指している。競技会場で起きているリアルを、別の会場で丸ごと再現するために、それぞれの競技の特性や競技空間のスケール、伝送先の会場の環境など、様々な条件に合った最適な手法を選択し、「映像」と「音響」を空間レベルで正確に再現する。この手法により、遠隔地にいる観戦者も、目の前で繰り広げられる競技をリアルに体験することができる。
札幌で開催されたマラソンでは、NTT の超低遅延通信技術を駆使し、東京にいる観戦者が、あたかも選手が走っている沿道で応援しているかのような空間を実現。未来の新しい観戦体験が生まれている。
人型ロボット「Atlas」、建設現場での荷物の運搬をサポート

Boston Dynamics(ボストン・ダイナミクス)が開発している人型ロボット「Atlas(アトラス)」に、新しいスキルが追加されて、これまで以上に人間らしい動きをしている。
建設現場を想定したシーンの設定で、高い足場の上にのぼった作業員が、忘れてきた道具をAtlasに持ってくるように伝える。Atlasは軽快な動作で足場と階段の間に板を渡して橋を作り、道具袋をつかみ、ジャンプで上の段にのぼると、バッグを作業員に投げて渡す。さらにその後、体操選手のような着地を披露する。
Atlasは研究開発用途に位置づけられており、販売されていない。今回のデモンストレーションの一環の位置付けで、技術進歩の進捗状況を伝える動画となっている。実際の工事現場のような過酷な環境で危険な仕事をこなせる人型ロボットの実用化には、まだ時間がかかることが想定されるが、着実に実用化に向けて進んでいる。
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