【事例付きで解説】成功するシェアリングビジネスの共通点とは

この記事の内容
 シェアリングビジネスを成功に導く秘訣
 既存のシェアリングサービスが成功している要因

 

2030年度には市場規模が14兆円を超えることが予測されているシェアリングビジネス(シェアリングエコノミー協会調べ)。これは現在の電気通信事業に匹敵するほどの市場規模となります。

(出典:シェアリングエコノミー協会 プレスリリース

そのなかで、

  • シェアリングエコノミー領域に可能性を感じ、新規事業の参入を検討している。
  • 既存サービスの紹介だけでなく、これからのビジネスにつながるような新しい視点がほしい。
  • 事業アイディアはもちろんのこと、現状のシェアビジネスの具体的な成功事例も参考にしたい。

といった考えをもっている人もいるかと思います。この記事では、シェアリングビジネスの未来について解説します。

シェアリングビジネスの成功例は「江戸時代」にすでに存在していた!?

モノなどをシェアすることは、昔から日常的に行われてきたことであり、「おすそわけ」という言葉を知らない人はいないでしょう。古くからシェアすることが行われてきたなかで、最も理想的なシェアリングの形の一つが「長屋」です。

長屋とは、江戸時代の都市部を中心に発達した集合住宅のことです。長屋に住む人々は貧しかったこともあり、トイレやキッチン、調味料などの生活必需品までも共有していました。

なぜ、長屋がシェアリングの理想的な形といえるのでしょうか。 それは、長屋はシェアリングビジネスのすべての領域を網羅しているからです。現在、シェアリングビジネスは以下の5つの領域に分類されています。

1. 空間のシェア

民泊、農地、駐車場など空間をシェアするサービス
Airbnbやakippa、スペースマーケット、プランティオなどのサービスが該当します。

2. モノのシェア

レンタルやフリマでモノをシェアするサービス
メルカリやminne、ラクサス、airClosetなどのサービスが該当します。

3. 移動のシェア

乗り物やモノの運搬をシェアするサービス
dカーシェア、LUUP、Uber Eatsなどのサービスが該当します。

4. スキルのシェア

家事や育児などスキルをシェアするサービス
AsMamaやタスカジ、ランサーズ、ココナラなどのサービスが該当します。

5. お金のシェア

クラウドファンディングなどでお金をシェアするサービス
MakuakeやCAMPFIRE、LIFULLソーシャルファンディングなどのサービスが該当します。

長屋では上記の5つの領域のシェアがごく一般的に行われてきました。貧しいながらも住む人それぞれがもったモノやスキルをシェアすることで、生活することができたのです。

以上のように、現代のシェアリングビジネスサービスのすべてを包括した長屋は、シェアリングビジネスの目指すべき未来像ともいえます。

シェアリングビジネスにおいて最も重要な機能

では、そもそもなぜ江戸時代に理想的なシェアリングビジネスがすでにできていたのでしょうか。それは長屋に住む人々の密なコミュニティにあります。

そして「利用者同士のコミュニティが形成できる」機能こそが、シェアリングビジネス事業において最も重要な機能です。

なぜなら、シェアの気持ちはコミュニティのうえに成り立っているからです。

どういうことか考えてみましょう。

例えば、あなたが結婚式を挙げることになった場合、誰を招待しますか?

  • 家族
  • 友人
  • お世話になっている会社の仲間

などではないでしょうか。

お祝いの空間をシェアしたいと思う相手を選ぶ際に、私たちは無意識的に自身のコミュニティから選択しています。これは空間だけでなく、モノやスキルであっても同じです。

マズローの欲求5段階説」でも社会的欲求(社会に受け入れられたい欲求)のうえに承認欲求(周りに認められたい欲求)があります。シェアするかどうかの判断はコミュニティが重要な基準になります。

つまり、長屋のようなコミュニティを築くための機能がサービスに組み込まれているかどうかがシェアリングビジネスを成功させるためには必須になるでしょう。

特に、長屋しか選べなかった江戸時代と違い、複数の選択肢がある現代では、「シェアしたい!」といった気持ちを生み出すためにも、ただモノやスキルをシェアするだけのサービスでは支持を得られないでしょう。

上記のような背景から、シェアリングビジネスの未来像はどのようになっていくのでしょうか。

それは、現在は生活に必要なもの(キッチン、おふろ、クルマなど)をシェアするだけにとどまらず、個人で所有できないもの(農園、エンタメ施設、プールなど)もコミュニティ単位で管理し、安価でありながら高品質なサービスを受けるようなシェアの形も増加するでしょう。

また、個人が尊重される反面、2040年に向けてコミュニティの価値が高まることが予想されます。江戸時代に存在していた小規模のコミュニティが個人の幸福度を高めることができる重要な要素となります。

 

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シェアリングエコノミーサービス成功事例3選

現在あるシェアリングエコノミーサービスのなかで、利用者のコミュニティの形成に積極的に取り組んでいるサービスがあります。

ここでは代表的な3つのサービスを紹介します。

  • ADDress(空間のシェアサービス)
  • Peerby(モノのシェアサービス)
  • Anyca(移動のシェアサービス)

ADDress(空間のシェアサービス)

月額4.4万円で全国どこでも住み放題の多拠点コリビング(co-living)サービス。

ADDressでは「家守(やもり)」という生活をサポートするコミュニティマネージャーが、家を管理しています。家守は、宿泊するADDress会員と対等な関係であり、地域の人やADDress会員同士の交流の架け橋となる存在としての役割を担っています。

ADDress会員として利用していた人が家守になることもあるようです。

ADDressとしても家守の存在がサービスの根幹であるとし、家守を育成する「家守の学校」を開講しているほどです。

(出典:ADDress プレスリリース

Peerby(モノのシェアサービス)

オランダ発のご近所同士で、家庭用品を貸し借りできるプラットフォームサービス。

日用品が「便利に」貸し借りできることではなく、地域の中に「頼り、頼られる関係性」があることがPeerbyの本質的な価値として定めています。

そのため、貸し借りが行われた際に手数料を取る仕組みから、メンバーシップ料金を取る仕組みへと転換しています。また、日用品の故障・盗難などが発生した際には、メンバーシップ料金から得た資金でPeerbyが代わりに保証するといった「コミュニティ・ファンド」も導入しています。

Anyca(移動のシェアサービス)

オーナーと車を借りたいユーザーを結びつけるカーシェアリングサービス。

Anycaでは、サービス開始当初からコミュニティを重視しており、月に7回もイベントを開催するなどコミュニティづくりに力を入れています。

また、Anycaでは「コミュニティリーダー制」という制度を設けています。期間限定でAnyca利用者からコミュニティリーダーを選定し、コミュニティを主導してもらっていることもあるようです。「運営側から何かをお願いされたとき」にAnycaに対する好感度が高まる利用者が多いとのこと。

このような現状から、Anycaがイベントを企画するだけでなく、Anyca会員が自ら企画をしたイベントもあり、集金などもすべて会員がおこなっています。Anyca会員同士が主体的に交流したり・イベントの企画をしたりするようなコミュニティ形成に成功しています。

Anyca コミュニティガイドラインの要素

(出典:Anyca プレスリリース

上記の3つの事例からも、いかにコミュニティを形成することが重要かわかっていただけたかと思います。何をシェアするかより、シェアをしたいと思えるようなコミュニティをどう作るかがシェアビジネスの成功のカギとなるでしょう。

まとめ

シェアリングビジネスを成功させる秘訣
1. シェアリングビジネスの理想形は「長屋」である
2. シェアリングビジネスにおいて最も重要な機能は「コミュニティ」機能である
3. 「シェアができる」サービスではなく、「シェアをしたい」サービスを設計する

 


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