食料生産の小型化・分散化とは?
食料生産の工場化・分散化は、安定した食料生産と環境負荷の低減を実現し、持続可能な食糧供給システムを構築しようとするアプローチの一つである。
特に小型の野菜工場は、消費者の健康志向や環境意識の高まりを背景に普及が進んでおり、家庭用キットも増加している。小型の野菜工場をスーパーの店頭などに設置することで、都市部でも食料生産と消費地を近接させることができ、輸送距離の短縮によるフードマイレージの削減にも貢献する。
予想される未来社会の変化
- 農産物の生産ノウハウと技術がデジタル化され、コンパクトな生産設備での分散型の生産が増加する
- 生産を支援したり、生産そのものが行えるサービスや機器が普及する
- 大規模な集約農業に適した作物は、より効率化された生産体制へと分化する
トレンド
Aqua Garden Lab(アクアガーデンラボ)
江ノ島電鉄では、魚の陸上養殖と野菜の水耕栽培を掛け合わせたアクアポニックス事業の検証を行うため、江ノ電の江ノ島駅構内においてアクアポニックス施設を設置し、「Aqua Garden Lab(アクアガーデンラボ)」として本稼働している。
「Aqua Garden Lab」は、アクアポニックスを身近に感じてもらうため、多くの利用者がいる江ノ島駅の藤沢行きホームに面した場所に設置。現在、魚はティラピアを養殖し、野菜はレタスと小松菜を育てており、今後も随時様々な野菜を栽培していく予定。
なお、本稼働にあたり、実際に食材として使用するため「Aqua Garden Lab」で収穫した野菜をイタリアンレストラン「イルキャンティ・ビーチェ」に届けるデモンストレーションを行った。運搬にあたっては、同社が事業展開しているシェアサイクル「SHONAN PEDAL(湘南ペダル)」のスポーツタイプe-bike「KUROAD」を使用し、環境に優しい輸送手段で納品した。
また、「Aqua Garden Lab」のインスタグラム(@aqua_garden_lab)において、野菜の栽培状況や魚の育成状況などを定期的に発信し、アクアポニックスの魅力を伝えている。
モジュール型ファーミングユニット
プランティオは、大建工業、四国化成建材と共に、スマートコミュニティ農園grow FIELDのコンパクトモデル「モジュール型ファーミングユニット」を開発。
「モジュール型ファーミングユニット」は、コンパクトタイプのスマートコミュニティ農園で、世界初の6つのセンサーを搭載したコンシューマー向けIoTセンサー「grow CONNECT」が野菜をモニタリングし、連携アプリを通じて生育状況やお手入れ方法を可視化することで、一般の方でも安心して栽培ができる。また、入り口には登録利用者だけが入園できるスマートロックが搭載されており、コンビニ感覚で気軽に立ち寄ることができる。さらに、コンパクトサイズのため、公共施設や駅前の空きスペース、公開空地などにも設置ができ、街中に農と食を取り入れることで、地域の活性化や食農の学びの場として役立つほか、ヒートアイランド現象抑制にも貢献する。
本製品は公共施設や商業施設など公開空地にも設置できる約3m四方のコンパクトな農園ユニットとして提案、コンビニ感覚で気軽に立ち寄れ、野菜栽培をハブとしたコミュニケーション醸成による地域や施設の活性化、持続可能な食と農のカルチャー醸成、地球温暖化や生物多様性など環境への気づきや学びの機会創出に貢献することが期待される。
勝手場

インテグリカルチャーは、細胞農業を通じて細胞性食品(培養肉)の実現を目指し、その事業化に必要な資材や知見を提供する新サービス「勝手場(Ocatté Base)」を開始。この勝手場は、細胞農業に特化した製品のマーケットプレイスであり、同社が開発した食品グレードの培養資材や「CulNet®︎コンソーシアム」で共同開発した製品の販売も視野に入れている。
細胞農業では、コストと環境負荷の低減を両立させるために、効率的な細胞培養が可能な資材が求められる。しかし、これらの資材はしばしば秘匿されており、参画を希望する企業にとっては必要な資材を揃えることが難しい状況。
そこで勝手場は、会員企業に対して簡単に細胞農業資材にアクセスできる環境を提供し、活性化を図っている。これにより、企業は研究開発にかかる時間とコストを削減することが可能。
さらに、勝手場は技術を持つ企業同士を繋げるB to Bマーケットプレイスとしても機能し、「みんなで作る細胞農業」をテーマに、多くの人々が細胞農業にアクセスできるよう努めている。
現在、勝手場では基礎培地、細胞剥離剤、細胞接着コート剤、細胞凍結液の4つの製品を展開。これらの製品は、同社が整備している日本初の培養肉生産ラインで採用した資材であり、培養肉を製造するために必要な要素となる。
このサービスは、国内外の細胞農業企業や興味を持つ企業に向けて提供されており、特にシンガポールなどの海外市場にも焦点を当てている。A.T. カーニー社の予測によれば、細胞農業の市場規模は2040年までに6,300億USドルに達する見込み。
・先端技術を活用するアグリテックが注目されており、野菜工場はICTを活用して施設内の光や水の量をデータ管理し、1年を通じて計画的に出荷することが可能だ。
天候の影響を受けずに安定して生産できることなどが魅力で、最近では家庭用のコンパクトな野菜工場デバイスも誕生している。年間を通して計画的に栽培・収穫できるのが魅力で、自宅で野菜栽培を楽しむ生活社も現れている
施設内で栽培管理するため、悪天候だけでなく病害虫による被害を受けない、農薬を使用しなくてよい等のメリットがある
・官民一体となったスマートシティの街づくりが進む千葉県柏市・柏の葉キャンパスエリアでは、パナソニックによる「ネットワーク型家庭用植物工場」を設置し、家庭内で野菜を栽培。庫内カメラの画像や育成記録などあらゆるデータが「みらい畑スマートネットワーク」に接続、スマホやPCでリアルタイムの育成状況を確認できるほか、専用SNSで専門家や各ユーザーとつながることができる

・アメリカ南部の都市エリアでは、人口増と所得向上により、健康志向や環境志向に目覚める消費者が急増
南部の大都市テキサス州ダラスでも、多くのレストランが店産店消モデルを実践。レストラン「Bullion」では、レストランの室内にて別ルームを整備し、完全人工光型植物工場にて生産を行っている
・2013年にベルリンで創業したインファーム社は、遠隔で制御される「ファーミングユニット」を9カ国で1200以上展開。日本のスーパーマーケットにも出店している

・資源や製品を、経済活動の様々な段階で円を描くように循環させるサーキュラー・エコノミーは、農業にも取り入れられており、植物の生育を促進する二酸化炭素をグリーンハウス内で再利用するなどの試みが行われている
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