保存版・Z世代の10大特徴まとめと、インスタグラムで顕著にみられる消費行動事例・法則

今や世界人口の1/3がZ世代!
1年ごとに社会人の構成比率が増加し、経済への影響力は今後さらに高くなる

 「Z世代」はメガワードとなり、昨今ではニュースや調査結果の解説、特集記事などで目にしない日は無いほどとなった。取り上げられた内容を見ていくほどにマーケティング領域において注目されていることが伝わってくるが、これは2019年時点の世界の人口78億人の32%が同世代で占められている(国連調査)こともあり、彼らの世代が持つ特徴が消費活動にそのまま反映されると考えたとき、経済的にきわめて大きな影響を与えると捉えられている為だ。

 Z世代は、1990年代半ばから2000年代に生まれた世代を指す言葉として使われており、D4DRでは、1997~2010年生まれの世代のことをZ世代と定義している。2022年現在12歳~25歳の彼らは今後1年ごとに購買力を増し、32歳~45歳となる20年後には、これまでの価値観ではマイホーム購入などのライフステージを迎え完全にマーケットの中心となる。

「デジタルネイティブ」を紐解くキーワードが数多く存在
一言で表せないZ世代の特徴もそれぞれが消費行動に顕れている。

 この世代をミレニアル以前と区別して考えなくてはいけない最大の背景ともなっている、”デジタルネイティブ”に由来する自然な情報接触・コミュニケーションの姿の変化(長時間のネットメディア閲覧SNS上のやり取りが当たり前)に加えて、地球環境問題の深刻化、大規模な自然災害の日常化、感染症が引き起こしたパンデミックや戦争といった不安定な社会情勢下で育ち教育を受けてきたことでSDGsをはじめとする社会・環境問題・活動への関心の高さ、安定志向・健康志向が強いことなど、いくつかの顕著な傾向が、「Z世代の特徴」として共通認識となりつつある。
 こうした世代固有の背景に基づいた特徴と、「レトロブーム」「推し文化」「映え」といったZ世代を中心にトレンド化した現象、カルチャーをもとに、特徴とそれに紐づく消費行動として整理することで、受け入れられる商品設計の法則を考える為の、重要なヒントとなるだろう。

物を買わない?貯蓄に回す?Z世代の10の特徴はこれだ

 今回は2022年のZ世代についてのトレンド記事、リサーチ結果の傾向から、重要な特徴を次の10の項目としてまとめた。

  1. 野心よりもリスク回避 安定志向が高い
  2. タイムパフォーマンスを重視。働き方や時間の使い方に効率化を求める
  3. 親と仲が良く、友達のような関係を築くことが多い
  4. ソーシャルグッドの意識、及びSDGsへの貢献意欲が上の世代と比べて高い
  5. 推し活で”当たり前化”が進む共通の価値観の間でのコミュニケーション
  6. グッズからアクセサリー、バッグまで自作も厭わず「自分らしさ」を表現する
  7. グルメでは積極的に「専門店」を探したり選ぶ傾向がみられる
  8. 「エモい」がブレずに尺度として成立している
  9. 定額で選択肢の豊富なサブスクリプション型サービスを重視
  10. メタバースからの関心獲得などオンラインとリアルの逆転現象

 いずれもインタビューやリサーチをもとにした記事では、個別にフォーカスして取り上げられる特徴だが、まとめて整理することでリアルなZ世代像が見えてくる。この後、個別、俯瞰それぞれで彼らの「消費行動」の可能性を考えていく。

1.野心よりもリスク回避 安定志向が高い

働き方だけでなく、消費局面で慎重な検討が多いのはこの特徴

 世代背景に由来するリスクを回避して安定した状態を求める傾向は、やみくもに出世を目指さない働き方や、若いころから貯蓄を考えて実践する・貯金があるといった堅実な暮らし方にあらわれているが、日常的な、旅行先で食べる店を選んだり洋服を購入したりする際にも反映されている。旅行に出かけたりランチをするお店を選んだりする際に、彼らは「失敗したくない」と考え、例えばインスタグラムを使って、口コミや写真を「タグる(=ハッシュタグで検索する)」などをして、間違えないように、後悔しないように検討を重ねる。

東京都心部の街頭での女性(15〜24歳)450人へのアンケート結果
(出典:https://shibuya109lab.jp/article/191016.html )

全国女性(15~24歳)240人へのインターネット調査
(出典:https://herstory.co.jp/databank/databank/research20210710)

「Z世代にとっての質の良さ」を提供、訴求

 一方で消費とコストについて、「多少高くても、質がいいものを買いたい」と答えたZ世代が多く、これは決して「買わない」わけではなく、長く使えないものや好みと合わないものなど、無駄なものに出費したくない、つまり「失敗したくない」という考え方に起因している。この消費行動を味方につけるためには、彼らの目線で「質が良い」ものとは何かを考えることに加えて(例:「フェアトレード」(特徴4)、「専門店」(特徴7)も参照)、商材やサービスがどのようなものか同じ目線で伝えてくれる口コミの質と一定の量、そしてPR記事ではない「信頼感」が必要だ。ただし、先に調査した「現役ファッション専攻大学生39名の傾向から、Z世代の消費行動とインスタ利用のマーケティングを読み解く」でも考察したとおり、企業公式の情報(パンフレット、WEB、SNS発信)についても、ただの広告とせずに検討材料に含まれる点も特徴で、口コミなのか公式情報なのかを分かりやすくした上で、それぞれ検討の際材料に含めてもらえるよう、強化することが重要だ。

(出典:https://www.d4dr.jp/topics/research/generation-z-marketing-01/ )

2.タイムパフォーマンスを重視。働き方や時間の使い方に効率化を求める

プライベート重視のワークライフバランスに、コロナ禍を経てワークライフインテグレーションが加わる

Z世代の年齢をライフステージでみると、小学校6年生~社会人3年目(義務教育終了後に就職した社会人は10年目)となり、就職を控えた学生の求めることや社会人となった彼らの仕事に対する考え方についても、少しずつ共通認識が出来上がってきた。
 日本ではZ世代は効率化を求める意識が強く、時間外労働を可能な限り避けたがることから「プライベート優先のワークライフバランス」重視と捉えられてきた。ただしコロナ禍のパンデミックにともない強制的にリモートワークやフレックスが進んだことで、日本でも欧米で主流となっている「ワークライフインテグレーション(仕事とプライベートの境目を切り離さずに統合させて考えることで、相乗効果をもたらす)」の考え方も、定着し始めている。

全国の20代の学生300人へのアンケート結果
(出典:https://www.biglobe.co.jp/pressroom/info/2020/10/201022-1)

「空き時間」や「オンオフ」の変化に対応、効率化には他の付加価値を

 こうした状況から、例えば終業後(ワークライフバランス)や隙間時間(ワークライフインテグレーション)に気軽に利用できるサービスのニーズはさらに高まるだろう。個人間で柔軟に仕事を依頼したり受けたりできるCtoCサービスの利用も進むことが見込まれ、疲れを取るサウナやスーパー銭湯などではコアタイムとニーズの変化を把握し、店舗展開やサービスの見直しが必要となるかも知れない。事前の予約が必要だったパン教室などの習い事、美容院やエステサロンなどでも、より「隙間時間や思いついたタイミングで利用しやすいこと」が課題となるが、料理教室などでは、「つくった何日分かの食事を冷凍ミールキットとして持ち帰ることができる」など従来はニッチだったサービスも、習いながらまとめて食事調達ができるといった点で効率的でタイムパフォーマンスが良く、こうしたZ世代のニーズに則したものは評価されはじめている。
 
 Z世代の「タイムパフォーマンス」の考え方は、コンテンツとの接し方においても顕著に出ている。リールやTikTokなどの短尺の動画に加えて、早回しで視聴する「倍速視聴」や先に結末を知ってから計画的に見る「ネタバレ視聴」といった従来は想定することができなかった楽しみ方が一般化しつつあり、それを前提にしたビジネス展開も誕生するかもしれない。「効率化」以外に付加価値を提供し、他の魅力にいかにつなげるかがポイントのひとつと言えそうだ。

3.親と仲が良く、友達のような関係を築くことが多い

母娘双方が自然と捉えて形成される、親しい友達のような関係性

 例えば成人した娘が実家を出ずに母と同居したり、仲良く買い物に行く様子は以前から伝えられており、今にはじまった現象ではないが、かつては結婚して家庭を持つことで関係が大きく変化したり、多くが娘が母を促し成立していた関係性であった。現代ではその娘が母へとなり、母娘の双方がこうした親子関係を自然で健全なことと捉えるようになり、結婚後も続く永続性を持った点で、大きな変化と捉えたほうが良い。(#娘とデート:18.1万件、#ママとデート:1.4万件 ※2022年10月時点(以下すべて共通)、昔ながらの小さな子どもとのお出かけも含む)

友達やカップル間で楽しむサービスやアイテムに親子の利用ニーズが発生

 例えば「双子コーデ(#双子コーデ、約100万件)」など、主に仲の良い友達との間で行われるイベント(お揃いのコーディネイトを着用したお出かけ)は母と娘の間でも確認されており、消費の喚起としてはパンフレットやSNSの宣伝投稿の際、訴求材料としても考えられそうだ。
 他にも、「カップルシート」「ペアチケット」「女子旅限定ルーム」などに、女子会やママ友向けと同様に「母娘」を明確に対象としたプラン(気の利いた名称や親子向けアクティビティの取り入れ、アメニティなどの特典の提供等 #母娘旅 約9万件)があればさらに利用促進が見込まれる。

4.ソーシャルグッドの意識、及びSDGsへの貢献意欲が上の世代と比べて高い

フェアトレードや古着が、ソーシャルグッドの視点から消費の選択肢となる

 SDGsとは「持続可能な開発目標」であり、危機的状況にある地球環境問題を中心に、総じて平等に健やかに生きる・暮らす権利が持てることを目標としている。これまで若年層からは関心が集まりにくかったこうした社会問題が、Z世代からは学生を含めて高い関心、貢献意欲を持たれている背景には、先に挙げたように戦争や食料供給や疫病の流行など社会情勢が常に不安定で、平等で健やかに生きることが当たり前でなくなってしまったことなどが要因にある。上の世代では未来、つまり子供たちの世代を案じる文脈で議論されてきたことが、Z世代では待ったなしの自分事のリアルとなり、生活スタイルに大きな影響を与えている。
 消費と関連づけて考えると、例えば長らくオーガニック・ナチュラル志向、エコ志向層向けだったフェアトレード品、同様にビンテージ志向からのニーズ中心だった古着など、有機の食品は大量生産の商品と比べてどうしても値が張るし、古着はユニクロなどファストファッションと比べるとむしろ高価になるが、こうした社会情勢のもとで育ったZ世代には自然な選択肢となる。

 ただしSDGsは消費を検討する際にも重要な1指標となるが、反面先に挙げた堅実で慎重という側面もある為、この指標単体ではなく、美味しい、エモい、かわいい、品質が良い、自分にも役立つ、などの訴求材料と併せて、多くは消費促進を後押しする補助的な役割の指標にとどまる点もポイントといえる。古着は「エモい」、フェアトレードは「品質が良い」といった指標がプラスされており、他にも例えば、安定志向で将来への投資にも関心が高いことから、地球環境銘柄を対象にしたESG投資などが、これまで以上に関心を持たれやすくなっていると言えるだろう。

日経MJによるアンケート調査(Z世代、ミレニアル世代各5,000人)
(出典:https://xtrend.nikkei.com/atcl/contents/18/00570/00005/)

5.推し活で”当たり前化”が進む共通の価値観の間でのコミュニケーション

ヲタ活・推し活で趣味領域の応援消費が促進

 以前は一部の属性に過ぎなかった”オタク層””コアファン層”だが、昨今は推し活が一般的となり、コンビニでグッズのくじだけを購入する「一番くじ」の盛況ぶり(#一番くじ:26.8万件)やコラボ商品・コラボカフェの大ヒットなど、マーケットを大きく動かしている。Z世代の意識を探るグループインタビューの結果では、Z世代の実に82%が「推しがいる」と回答。さらにこのうち89%は「(推し活の時だけでなく)常に意識している」と回答している点もポイントだ。推し活・ヲタ活にかけている年間費用も、平均4.6万円、2.1%は30万円以上とこの年代にしてはかなりの出費だ。ロケ地や作品のモデルとなった場所を訪れる「#聖地巡礼(28.5万件)」での消費はZ世代にとっても施策側にもWin-Winであり、注力しないのは勿体ない。また「#ゆるキャン(29.6万件)」のような趣味を題材にした作品では、作品ファンへの題材自体の啓蒙も、アウトドア用品の購入やキャンプ体験など、好ましい消費につながる。
 Z世代の消費行動を考える上で、「趣味」や「価値観」の世界である「推し活」は、キャラクターやタレントだけでなく、「応援消費」として思い入れのある施設や自治体にまで拡張可能な考え方として重要な特徴といえる。

一都三県在住の15〜24歳の学生525名へのアンケート及びグループインタビュー結果

「ヲタ活に年間使用する金額」一都三県在住の15〜24歳の学生525名へのアンケート及びグループインタビュー結果
(出典:https://news.mynavi.jp/article/20220714-2397769/)

「推し」を語るなど、共通の価値観層でオンラインコミュニケーションを醸成

 直接的な消費以外に目を向けると、Z世代にとっては、「推し」や「趣味」「価値観」に基づいたネットコンテンツの支持や、これらをもとにつながってゆく、リアルとは別のコミュニティ内での、オンラインコミュニケーションが自然なこととなる。
 情報や感想のやりとりはもちろん、例えばゲームを実況配信するだけのYouTuber/ライバー/VTuber(画像上)は多くの共感とフォロワーを獲得し、「緩くSNS疲れの無い優しいSNS」(「チル(まったり)」ニーズを充足、この点ではミレニアル世代もターゲット)を標榜しながら、感性・趣味や価値観でつながることができるように考えられたSNS「GRAVITY」(画像下)は、Z世代の利用者も多く、違和感なく受け入れられている。Twitterスペース、GRAVITYの「音声ルーム」といったリアルな面識が無いユーザー間での、音声配信やコミュニケーション機能も抵抗なく利用されている。従来は難しかった同じ価値観、関心で手軽に「つながる」ことを、テクノロジーが可能にしている。
 すでに浸透しているコンテンツ、イベント、アイテムの課金に加えて、投げ銭やソーシャルギフト、あるいは場の提供など、「価値観」「つながり」「コミュニケーション」にもとづく消費で、受け取る側・贈る側双方にWin-Winとなる仕組みをさらに強化することで、つながる友人やフォロワーにまで消費拡大を促すことが考えられる。

6.グッズからアクセサリー、バッグまで自作も厭わず「自分らしさ」を表現する

高級ブランドより「自分らしさ」に価値を感じる傾向が強い

 Z世代では高級ブランド品よりも、テイストを重視し、自分の個性にあったものを好む傾向がある。「古着」には”リサイクル”(=サスティナビリティ)や後述する”レトロ”(=エモさ)といった別の要素もあるが、他にもたまたま見つけた好みのブランドがお気に入りとなったり、高級ブランドと区別なく、ハンドメイドの一点ものを直して大事に長く使う世代という特徴がある。オンラインのハンドメイドマーケット「#minne(461万件)」「#Creema(181万件)」も依然人気が高く、韓国でもハンドメイドアプリ「#idus(6.2万件)」がZ世代から人気を集めているという。
 その点では、ハンドメイドはもちろん、特徴を持ったファッション、アクセサリー、雑貨などは、商業施設のポップアップストアや、ハンドメイドマーケット、従来はオーガニック志向に人気だった手作り市などに出店することで、1つしかない特別なものを選んで購入したり大事な人にプレゼントしたい、と考えるZ世代からの認知や購買意欲を喚起することができそうだ。

「自作」を味方につけるための設計も重要

 昨今ではコロナ禍での巣ごもりの影響もあって、買うだけでなく、積極的に自分たちの手で自分らしさを表現できるものを作って楽しむ一面も持ち併せてきている。素材となる生の革から装飾するキャラクターまで、手作りする為の素材・道具やキット、メンテナンスサービスなどに加えて、ワークショップや、好みのブランドや作家に手軽に1点ものをオーダーメイドできるサービスなどもさらにニーズが高まっていきそうだ。「自分らしさ」を表現する手助けを考えながら、ブランドにとっては、自作との差別化や「自作志向」も消費につなげる設計が重要となっていく筈だ。

7.グルメでは積極的に「専門店」を探したり選ぶ傾向がみられる

モンブラン専門店や、お芋スイーツ専門店の人気は品質への安心感、映え、選択肢

 「映え」や「品質の安心感」の備わった状態で、トッピングや数種類の名物から「選択」できることなど、グルメでは専門店がZ世代から人気を集めている。Z世代の女性向けメディア「Scale」でのアンケートでは、この秋行きたいグルメスポットとして、京都、川越、浅草などのエリアの中に、お芋やモンブランなどスイーツ系の専門店という回答がランクインしたほどだ。原宿では、事前にオンラインで配合やラベルをオーダーして、ロッカーから取り出す無人のフルーツオレ専門店「#ラベルフルーツ(3.6千件)」もZ世代から人気を集め、ついに金沢でも2号店がオープンした。

(出典:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000176.000033586.html)

専門店が集まった「ネオフードコート」や商業施設も注目を集めている

 「ネオフードコート」はそんなZ世代が、大衆受けするチェーンやカレーライス、うどんといった誰からも選ばれやすい定番メニューを提供する従来型の「フードコート」ではなく、より専門性・限定性を持った店、サービスを好むことにフォーカスして注目を集めている。「#渋谷横丁(1.5万件)」は昭和の屋台の情緒的な雰囲気でも有名だが、日本全国のソウルフードが食べられるなど、専門店としての要素も人気の大きな要因。フードコート形態以外に、商業施設の飲食店でもコアな専門店が増えている。22年4月に開業した「#ミカン下北(6.2千件)」では台湾の地元の飲食店をそのまま日本に持ってきたような「ダパイダン105」が話題だが、他の施設においても専門料理や飲み物、ユニークで見映えも美しい演出が続々と増えて、Z世代層が多く利用して賑わっている。

8.「エモい」がブレずに尺度として成立している

昭和・平成レトロブームの根っこは「エモさ」。情緒的なのに共感を得やすい評価軸

 Z世代の間で人気として注目を集めた「昭和・平成レトロブーム」では、純喫茶やファッション、家電やインテリア・雑貨などノスタルジックなデザイン、カルチャー、雰囲気から受け取る”エモさ”が重要なポイントとなっている。彼らは総じて、体験して楽しめることはもちろん、InstagramなどSNSに投稿できるもの・共有できるものを求めているが、投稿した写真のフィルタを通して一層情緒的な風合い・色味が強調されて共通認識と憧れができあがる。

「復刻デザイン」「懐かしの〇△」でエモ消費。令和に蘇った商品例

 昭和の日常ではごく普通のことで代わり映えしなかったスーパーのお菓子のパッケージやテレビCMなどの訴求メッセージも、令和には新鮮なエモい「#昭和レトロ(167万件)」の象徴へと変化する。昭和の町並みを再現した「#西武園ゆうえん(7.2万件)」などのテーマパークはもちろん、例えばロングセラーの商品では、明治「#たけのこの里(5.4万件)」ロッテ「梅ガム」など、「#復刻デザイン (約2,000件)」の限定販売も話題となっている。平成に大流行した育成ゲーム「#たまごっち(14.9万件)」も、ドット絵やできることの少なさなどがアナログに映る令和のフィルターを通すとエモさが感じられるという。

 「西武園ゆうえんち」も「たけのこの里」も、Z世代への直接的な訴求はもちろん、当時(1979~81年)に商品を購買していたり、この年代に生まれた・生きた人もターゲットとなる。彼らはZ世代の親にあたることから、先に考察した友達のような親子関係を通してZ世代へと、間接的に関心を醸成していく効果も見込まれ、親子で楽しめるサービスの一環としても捉えられる。

 この他、アサヒビールが21年に約30年ぶりに商品を復刻させた「#マルエフ(4.5万件)」でも、1986年の発売当時のパッケージから一層レトロさを強調するデザインへと一新している。廃盤商品の再活用・定番商品化という点では、サスティナビリティ重視の観点からも刺さりやすいといえ、こうした歴史のある大企業ならではのマーケティングが理解深化を経て、関心を高める機会にもなる。

 他、前項のSDGsとも関連して、下北沢は再開発の中でも南口の一角に古着屋が再結集し、新潟の#古町(20.3万件)では観光客が古着を買い求めて訪れているという。

9.定額で選択肢の豊富なサブスクリプション型サービスを重視

サブスクリプション型コンテンツサービスの魅力は、多様性対応&後からゆっくり検討・選択できること

 Z世代は慎重に検討して購入する傾向が強いが、一方定額課金で自分の好みとタイミングに合せてコンテンツや用途を自由に選択できるサービスは、多様性が求められるこの世代のニーズにマッチしており受け入れられやすい。

 Amazon Prime VideoやNETFLIX、FOD、Paraviなどの動画配信、Amazon Prime MusicやSpotifyなどの音楽配信、シーモア読み放題、Kindle Unlimitedなどの電子コミック・書籍などは人気で、それぞれオンラインサブスクリプションサービスで楽しんでいる作品のスクリーンショットも多く投稿されている。サブスク動画配信で視聴したコンテンツの共有についての調査結果では、「SNSで投稿する」が約22%と、「共有しない」の25%とほぼ同数みられていることが示された。利用率の高まった「サブスクコンテンツサービス」なら、関心を持ってくれた相手に課金させずに楽しんでもらえる点も魅力だろう。

(上図)Q:動画配信サービス系のサブスクについて、周囲と共有することはありますか。あなたがしたことがあるものを教えてください。
(複数回答)  n=400(男性:200/女性:200)※回答者=動画配信系サブスク登録者
(出典:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000176.000033586.html)

友達に共有しやすく楽しいサービス、お気に入りから価値観の同じ友達を見つけやすいコミュニティ機能なども要注目

 コンテンツを楽しむだけでなく、SNSでプレイリスト、お薦め、感想が多く共有される背景には、先に挙げた同じ価値観を持つ仲間と出会いたい、繋がりたい、さらには自分の関心領域を伝えたいという意識が大きく作用している。実際共有に際して、多くが#読書好きな人と繋がりたい(131万件) #東リベ好きな人と繋がりたい(1.7万件)などの、ファン同士で繋がるためのハッシュタグがつけられている。

 無料の本棚共有サービスの「読書メーター」では、読書した書籍の重複、傾向から相性を診断することができるが、基準が不明瞭で精度が低いという不満や疑問の声が一部で見受けられる点からも、「繋がりたい」ニーズが高いことを示している。仲間を求めている人同士がオンラインサブスクサービス内で繋がることができる場所があれば、他のサービスとの差別化・囲い込みなどの効果も期待できそうだ。

(出典:https://www.ibm.com/downloads/cas/D7NJG8A6)

10.メタバースからの関心獲得などオンラインとリアルの逆転現象

「リアルよりアバターファッション」と考えるオンラインファースト

 オンラインスマホゲームアプリやメタバース上のコミュニケーションが浸透したことにより、主人公やキャラクターが身に着けるファッション、使用するアイテム、家具などに対して課金が増えている。ユーザーの半数を占める小中学生をはじめ、約2,000万人が利用するキャラクター着せ替えアプリのポケコロでは、ファッションやインテリアの課金が行われ、21年9月の売り上げが過去最高を記録したという。

(出典:https://www.itmedia.co.jp/business/articles/2207/31/news014_2.html)

 弊社のシンクタンク部門・FPRCが22年5月に開催したオンラインイベント「Z世代の先を読む生活者トレンドとは?」においても、ゲスト登壇いただいた徳力基彦氏が、身近なZ世代のアバターファッション課金を「オンラインファースト」と位置づけ、「自分の服はユニクロで揃えて、オンラインではナイキのシューズを買うといったことが既に起こり始めている」と紹介している。

メタバース上の企業コラボでZ世代のリアル消費を動かす

 メタバースを代表するヒット作として知られる「あつまれ!どうぶつの森」では、ゲーム上でファッションやアイテムのデザインを自作できる人気の機能「#マイデザイン(6.9万件)」があり、ユーザーは作品の中でジェラートピケ、モスバーガー、キヤノンなど企業が公式に用意した「マイデザイン」をダウンロードできる。ゲーム内でアバターやキャラクターが着用したり飾ったりすることで、リアルの世界での関心獲得・消費も狙うことができる「メタバース広告」が注目を集めている。

(出典:https://altema.jp/atsumori/collaboration)

おわりに~Z世代の10大特徴は互いに影響を与えあっている。
個別に消費行動を考察した上で、”消費スイッチ”になりうる「訴求」
「派生」「掛け合せ」をみつけることでビジネスチャンスが生まれる

Z世代の特徴を理解したメッセージングが消費行動の背中を押す

 今回Z世代の傾向として、個々に調査記事でよく取り上げられる内容を中心に、「Z世代の10大特徴」にまとめて考察した。特徴ごとに、それを示す消費行動を確認していくなかで、「古着を好む(エモ消費×サスティナビリティ×自分らしさ)」「ESG投資(サスティナビリティ×貯蓄)」「ネオフードコート(選択性×エモ消費×失敗したくない)」など、改めて複数の要素が掛け合わせられている消費行動も多くみられた。
 他にも今回取り上げていないが、今後技術の進歩が期待されているもののなかには「EV急速充電(=サスティナビリティ×タイムパフォーマンス)」「メタバース上でのオンデマンドeラーニング(=ワークライフインテグレーション×オンファインファースト)」など、Z世代消費のポイントも複数含んだものも多い。社会課題のソリューション上で求められるこうしたサービスも、この世代に向けては、このようなポイント、文脈で訴求することで理解される可能性はグッと高まるとみられ、そうした視点からも、現時点でZ世代の特徴を抑えておくことは、マーケティング上非常に重要だ。

ベースにある安定志向・堅実性と、選択性・自分らしさを求める特徴にわけて考え、
年齢や環境の変化に対応することが重要

 また「Z世代の10大特徴」は今後も「増える」「派生する」ことが見込まれ、「兆しを捉えて仕掛ける」ためには、先に特徴を掛け合わせて、求められているものが何か、導き出すことも重要となる。
 その際、併せて重要となるのが彼らのライフステージの変化だ。彼らはまだ年長でも25歳で、家庭を持ったときの住まいや趣味に対する考え方、位置づけ、消費行動は予測の段階で、今後どんどん明らかになっていく。10の特徴をさらにまとめると、
ポイントA)
将来への不安・備えからベースにある考え方は保守的で安定志向、持続性のあるものを求める傾向が強い
ポイントB)
趣味や自分らしさを求める点では貪欲。選択肢があることを重視しつつ、メリハリをつけた消費、資金投資する世代
と、特徴のベースとなる「ポイントA」、局所的に顔を出す「ポイントB」の2点に集約され、個々の育ち方、考え方といった個性でバランスを取っているような消費傾向もみえてくる。
 ポイントAには今後の技術進歩や社会情勢の変化が影響を与えることになり、現状は消費の抑止力としても作用している。ポイントBは年齢を重ねたり収入や生活・家庭環境がかわることや、新たなトレンド、エンタメ領域が生まれることなどで、趣味や自分らしさを示す対象が、変化、あるいは現在の関心を維持しながら増えていく(追加される)ことが考えられる。
 現状は主にポイントBが消費に直結しているが、年齢やライフステージとともにAのウェイトも増してくるはずだ。だからこそ中長期的な視点に立つと、考察した現在の消費行動も抑えたうえで、今から10~20年後に30代~40代半ばとなったZ世代の関心や、そのとき社会のニーズとして何が求められるかといった「未来予測」の視点を取り入れることも、大事なこととなる。

 

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2022年6月1日に日経クロストレンド発行人の杉本氏とnoteプロデューサーの徳力氏をお招きし、「Z世代の次に押さえておくべき生活者のトレンドとは?」というテーマでZ世代の消費行動や生活者のトレンドを抑えるための未来洞察力について議論した。

期間限定で、当日のアーカイブ動画がノーカットのフルバージョンでご視聴できます。興味がある方は下記よりご視聴ください👇

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Ichiko Oki

ソーシャルメディア分析を専門領域に、投稿をもとにした実践的な生活者のインサイト抽出・提案を得意とするデータアナリスト。2018年11月よりD4DR 札幌リサーチセンター開設・室長。

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