水処理エンジニアリング業界の市場トレンドと主要企業の取り組み
水資源は世界的な人口増加や産業の発展・高度化による需要増加の一方で、地球温暖化や森林減少により希少性が高まっています。
世界の水ビジネス市場は増加基調にあり、2021年は79兆円に達し、そして2025年には100兆円規模になると推計されています。一方、日本国内の水ビジネス市場規模は2019年から2021年にかけて20%減と縮小傾向にあり、海外トレンドとは逆行する状況となっています。
その中で、水ビジネスの中核をなす水処理エンジニアリングの国内企業は、市場の選択と集中により売上高を伸長させています。
このような市場動向において、水処理エンジニアリング企業がどのような取り組みを進め、今後どのような方向性を見出しているのでしょうか。
本記事では、水ビジネスの中核をなす水処理エンジニアリング業界市場レポートとして、同業界のトレンド、業界構造、主要企業の現在の取り組み、事業計画をもとに、今後の動向をまとめていますので、ご参考としてください。
水ビジネスの市場動向
水ビジネスの事業分野は上水/下水/産業用水・他/海水淡水化の4分野で構成されています。上水・下水が市場の中心となり、両社を合わせた世界市場の構成比は70%強と推計されています。
業務分野では、施設整備/維持管理に大別され、維持管理が市場の60%強を占めており、施設の設計・施工からアフターサービスまでの業務をトータルで提供できることが収益確保につながる構造となっています。
世界の水ビジネス市場は2021年には78.8兆円となり、2019年対比で110%の伸長がみられています。特に中国・アジア圏では同伸長率が115%と全体傾向を上回っています。
上下水道の整備、自国産業ならびに世界の工場としての産業発展による水処理の需要増によるものとみられます。
一方で、国内の水ビジネス市場は減少傾向にあり、2021年は1.9兆円となり、2019年対比で20%の減少となっています。しかし、国内ビジネスは減少しているものの、海外事業は同伸長率が120%となり、海外比率を高めることで売上高を確保する動きがみられます。
海外ではPPP法の整備により水道事業の民営化が進められていること、経済成長に伴い工場の新設や高純度の水質が要求されるようになってきていることなどの水ビジネスに関する成長要因が挙げられます。
<水ビジネスの成長要因>
要因 | 内容 |
---|---|
環境問題 | 温暖化に起因する水不足への対策 |
人口問題 | 人口増加、人口集中による生活用水需要の増加 |
経済成長 | 工場の新設による処理水や高純度水質への需要増加 |
環境対策 | 水質規制による排水対策 |
PPP法整備 | 水道事業の民営化 |
老朽化 | インフラ老朽化に伴う設備更新 |
再生水利用 | 水不足対策としての再生水利用需要の増加 |
水処理エンジニアリング 主要企業の実績
水処理エンジニアリング企業の全体売上(連結)では、栗田工業が売上高トップ(3,446億円、2023年3月期)となります。次いで、クボタ(水・環境セグメント)、日立製作所(水環境BU)、メタウォーター、オルガノと続きます。売上高1,000億円を超えるのは上位5社のみです。
水処理専業企業では、栗田工業、メタウォーター、オルガノが上位3社となります。国内の水ビジネス市場は減少基調であるものの、それぞれの売上高は増加しており、2021年度から2022年度の伸長率は110%を超えています。
各社はEPC領域(設計・調達・施工)と併せて、サービス/ソリューション領域で売上を確保しており、栗田工業のサービス事業(薬品事業含む)の売上高は2,880億円(売上構成比:83%)、オルガノは水処理エンジ事業に占めるソリューション比率は45%を占めています。
従業員一人あたり売上高では大手5社を抑えて、野村マイクロサイエンスがトップ(社員1人あたり売上高:0.97億円)となっています。野村マイクロサイエンスは営業利益率でも栗田工業・メタウォーター・オルガノを上回る13.3%を確保しています。成長産業である半導体分野へ特化(売上の76%を占める)しており、リソースを集中させることで高い人的資本効率を実現していると考えられます。
水処理エンジニアリング業界のバリューチェーンと国内主要企業の強み
水処理エンジニアリング業界のバリューチェーンは大きく3つのステージに分けられます。
- 戦略立案:経営計画策定、事業計画策定
- 計画建設:EPC、運用システム構築、ファイナンス
- 維持管理:オペレーション&マネジメント
バリューチェーンにおける対応業務について、海外企業と国内企業を比較すると、海外企業(特に欧米)は建設から保守までの全体計画を策定する戦略立案から維持管理までトータルで対応できる点を強みとしています。国内企業は業務ごとに得意企業が分かれる傾向にありますが、昨今では水処理エンジニアリング大手企業もトータルソリューションを提供しており、特に収益性の高いO&Mという事業運営に強みを発揮していることが窺えます。
国内主要企業のバリューチェーンの特徴には以下の要素が挙げられます。
国内主要企業3社の実績からみる、水処理エンジニアリング業界の現在の取り組みと今後の計画
世界的に需要増加が見込める水処理エンジニアリング業界において、各社はどのような取り組みを行い、そして今後どのような計画を立て未来へ向かおうとしているのでしょうか。
ここからは、主要3社を対象に、セグメント別の実績、取り組み分野、イノベーションや人材育成への取り組み、事業計画を確認しながら、今後の水処理エンジニアリング業界のビジネスの方向性を探索していきます。
本記事の続きは、詳細資料「水処理エンジニアリング業界市場レポート ~市場トレンドと主要企業動向」をご覧ください。
資料は以下よりダウンロードいただけます。
水処理エンジニアリング業界市場レポート
■市場動向サマリ
■市場全体の動向
・水資源の動向
・市場規模(世界、日本)
・市場構造とプレーヤー
・売上ランキング
・バリューチェーン基本構造
■ 企業比較:事業実績
・企業基本情報、事業系統図
・事業実績(全体、セグメント別)
・事業内容、バリューチェーンの強み
■ 企業比較:経営方針
・イノベーションへの取組み
・人材育成、研究開発
・機会とリスクの認識、今後の事業計画
Mikio Aaskawa
最新記事 by Mikio Aaskawa (全て見る)
- 物流業界の市場動向 - 成長分野と物流の枠を超えた新規事業の開発 - 2024-08-27
- 水処理エンジニアリング業界の市場トレンドと主要企業の取り組み - 2024-05-13
- 繊維業界の市場動向と投資計画から見る将来のビジネス機会 - 2024-03-21