未来社会でドローンは日常に溶け込むのか?
国内外で急速に活用が進んでいるドローン。2021年度の国内のドローンビジネスの市場規模は2308億円で、前年度から25.4%成長している。2022年12月にはレベル4(有人地帯における目視外飛行)が解禁され、さらに活用が広がっていくことが予想される。2027年度には8000億円規模に広がると予測されている。(出典:インプレス総合研究所『ドローンビジネス調査報告書』)
現在は、点検、測量、農業、空撮などの分野から活用が広がりつつある。物流分野では、まだ実証実験段階ではあるが、地方での定期便などが始まっており、実用化される日も近い。
ドローンが活躍する未来社会では、人手不足問題や危険を伴う作業からの開放、過疎地の高齢者の買い物支援など、日本社会が抱える社会課題の解決に対する影響が大きい。現段階では、機体の性能や法的制度の整備など課題も多いドローンではあるが、10年後にはスマートフォンのように必要不可欠な存在となり得る可能性が高い。
予想される未来社会の変化
- ドローン操縦に特化した人材のニーズが高まる。
- AR(拡張現実)とドローンが融合することで、体験の幅が大きく広がる。
- 各ドローンの画像や飛行データから3D地図データの更新・詳細化が行われる。
- ドローンによるデータ取得で、街のデジタルツイン化を促進する効果も期待できる。
- ドローンが感染症のパンデミック防止の手段として活躍する。
トレンド
花火×ドローン×音楽を完全シンクロさせた花火ショー

2025年5月5日、千葉県の東京ドイツ村で開催された『FIRE DRONE FANTASIA』は、花火、ドローン、音楽が完全にシンクロした革新的なエンターテインメントショー。
このイベントは、日本橋丸玉屋が企画・演出・制作を手がけ、同社のクリエイティブチームが花火とドローンの動きを精密にプログラムし、音楽と連動させることで、視覚と聴覚を融合させた壮大な演出を実現した。
ショーでは、2,000発の花火が夜空に咲き誇り、300機のドローンが光の軌跡を描きながら舞い踊った。この融合は、火薬やドローンが本来持つ戦争のイメージを超え、「平和」と「愛」のメッセージを伝える新たな表現手段として位置づけられている。花火の迫力とドローンの精密な動きが一体となり、観客に未体験の感動を提供した。
日本橋丸玉屋は、1995年に日本で初めて花火と音楽をコンピュータ制御でシンクロさせたショーを実施し、以来、国内外で数多くの花火大会やイベントを手がけてきた。2023年からはドローン演出を取り入れた「FIRE DRONE FANTASIA」を展開し、花火とドローン、音楽の融合による新たなエンターテインメントの形を追求している。
能登半島地震の復興活動におけるドローンとデジタルツイン活用による作業効率化

大林組とKDDIスマートドローンは、石川県輪島市での国道啓開工事において、自動充電ポート付きのドローンを用いた遠隔運航を実現。
この取り組みでは、ドローンによる定期的な空撮を通じて、現場状況を高精度な3Dデータとして取得し、デジタルツイン化を行った。これにより、現地に赴かずとも遠隔で施工状況や地形の変化を確認でき、作業の効率化と安全性の向上が図られた。
2022年度に実施した自動充電ポート付きドローンを使った検証事業においては現場監理業務を80%削減できることを確認しており、本工事の監理業務においても同程度の作業効率化を確認している。
また、自動充電ポートを活用しない一般的なドローンによる測量と比較した場合も、現場までの移動時間や現場での準備やデータ処理などにかかる時間(約75分/日)の削減を確認している。
2023年の能登豪雨後にも、迅速な被災状況の把握に活用され、復旧活動の判断や計画立案に貢献した。
観光地でのドローンを活用した無人空撮サービス

JTBと日本航空(JAL)は、ドローンを活用した無人空撮サービス「SKYPIX(スカイピクス)」を開始すると発表。
利用者が観光地に設置されたQRコードをスマートフォンで読み取り決済すると、ドローンが事前に設定されたルートで1〜2分間撮影を行い、その映像をAIが30分程度で自動編集する。若年層や訪日外国人観光客のニーズを想定し、観光地の魅力を活かした収益化を狙う。
システムはドローン開発企業「fly」が提供し、JTBが観光地への導入を推進。
2025年3月〜5月に香川県小豆島の寒霞渓で実証実験を実施し、多言語対応で料金は1回2000円。
2025年8月以降に本格展開を予定し、2027年までに47カ所の観光地への導入を目指す。有人のドローン撮影と比較して価格も安価で、品質も安定すると見込まれており、観光体験の新たな価値創出が期待される。
経済産業省「空の産業革命に向けたロードマップ2022」
2022年12月5日より、ドローンを有人地帯で目視外を飛行させる「レベル4」が可能となった。経済産業省が公表している「空の産業革命に向けたロードマップ2022」では、「ドローンがより効果的に社会に貢献する未来を実現する」ことを掲げ、農林水産業、災害対応、警備業、測量、医療の各分野におけるロードマップを策定している。
長崎県五島市でもサービス開始 米国発医療品配送ドローン「Zipline」

2014年に米国で創業したスタートアップ企業のZiplineは、ルワンダやガーナなど配送網が発達していない農村部へ医療物資のドローン配送を提供している。最大85kmの距離まで配達ができるため、使用期限の近い血液などを短時間で届けることができるため、地域ごとの医療格差を縮小させられる。
また、Ziplineはウォルマートと提携し、ヘルスケア用品など健康関連の商品をドローン配送している。アメリカのアーカンソー州のピーリッジの住民はオンラインで注文し、当日中に受け取ることができる。日本では、豊田通商とZiplineが提携し、長崎県五島市でZiplineを用いた医療用医薬品配送サービスが展開されている。
立命館大学 ドローンで大学内警備の実証実験
ALSOKが立命館大学びわこ・くさつキャンパスでドローン3機を使い、大学内を監視する実証実験を行った。ドローンを地上10mまで高度を下げるとタバコの見分けがつくほどモニターではっきり識別できるようになるが、校内は人が多く衝突を避けることが課題となっている。警備コストは年間で1億2000万ほどかかっており、ドローンを導入することで警備費を削減し防犯体制を強化する狙い。2025年を目処に3つのキャンパスで導入を目指している。
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