b-20 : エコーチェンバー・フィルターバブルの弊害

エコーチェンバー・フィルターバブルとは?

エコーチェンバーとはソーシャルメディアを利用する際、自分と似た興味関心をもつユーザーをフォローする結果、意見をSNSで発信すると自分と似た意見が返ってくるという状況を、閉じた小部屋で音が反響する物理現象にたとえたものである。

また、フィルターバブルとはアルゴリズムがネット利用者個人の検索履歴やクリック履歴を分析し学習することで、個々のユーザーにとっては望むと望まざるとにかかわらず見たい情報が優先的に表示され、利用者の観点に合わない情報からは隔離され、自身の考え方や価値観の「バブル(泡)」の中に孤立するという情報環境を指す。

エコーチェンバーは自らが心地良い情報環境を作り出そうとした結果作られた空間であり、フィルターバブルはシステムによって作られた空間という違いがある。

エコーチェンバー・フィルターバブルによって、情報の偏りで個人の視野が狭まり、社会的な分断が助長されたり、公的な議論や意思決定の質の低下したりといった弊害が起きている。教育によるデジタルリテラシーの向上や、プラットフォームのアルゴリズムの透明性の向上といった対策が取られつつあるが、弊害は今後も引き続き問題となると予想される。

予想される未来社会の変化

  1. 個人の意見や信念が強化され、社会の分断が加速する
  2. 虚偽情報や陰謀論が拡散しやすくなり、社会の不安定化を招く
  3. メディアリテラシーの重要性が高まり、教育の変化が必要になる
  4. 個人のデータに基づく操作的なマーケティングが進化し、消費者の自律性が脅かされる

トレンド

エコチェンバー・フィルターバブルの危険性の認識を顕在化させた、米国連邦議会乱入事件

出典:spectee「米国連邦議会乱入事件の衝撃とSNSの危険性」

2021年1月6日、米国連邦議会でトランプ派のデモ隊が乱入し、5名が死亡する事件が発生した。この事件の背景には、「Qアノン」などの陰謀論が大きく影響していたとされる。

SNSやインターネットを通じて拡散された陰謀論的な考えが、現実世界での過激な行動に結びついた結果、議会乱入という事態を引き起こしたとされる。この事件により、SNS上で同じ考えを持つ人々が集まり、偏った情報や意見が強化されていく「エコチェンバー」や「フィルターバブル」の危険性が改めて認識されることとなった。

政治的主張が強いほど、デマに惑わされるリスクも高まる:調査結果

出典:読売新聞『政治的主張強すぎるとデマ受容リスク増、国際大調査…「エコーチェンバー現象」影響か』

国際大GLOCOMの研究チームによる調査で、政治的主張が強い人ほどデマを信じやすい傾向が明らかになった。この傾向は保守層とリベラル層の両方に見られ、特に相手方を批判する内容を信じやすいことが分かった。

この現象の背景には、SNSでの「エコーチェンバー現象」が影響している可能性があり、同じ意見に繰り返し触れることで考えが過激化していく傾向がある。また、SNS上ではデマや陰謀論が事実よりも拡散されやすいことも判明した。

専門家は、SNS利用により「確証バイアス」が強まり、自分の意見や願望に合致する情報を集めやすくなる一方で、異なる意見への攻撃性が高まる可能性を指摘している。そのため、特に自分の考えと一致する情報に接したときこそ、慎重に判断する必要があると警告している。

 

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