現役服飾大学生39名の傾向から読み解く、これからのZ世代の消費行動とインスタ利用スタイル

まとめると…Z世代の消費体験3原則
1.Z世代はハッシュタグや写真の”組みあわせ”にメッセージを込めている
2.Z世代は”バランス”をとって商品情報をみている
3.Z世代は”伝達手段の半分”がSNS

新社会人はすでに96年以降に生まれた「Z世代」にシフト
彼らが消費の中心を担う時代がやってくる

  2022年現在もっとも年長で社会人2~3年生、近い将来に購買層の中心を担うことから、Z世代の関心や行動スタイル、消費傾向を取り入れたマーケティングが活発となってきている。
 技術の進歩もあり、生活者自身が体験したことや、日常生活の一部をスマホで切り撮ってSNSで公開すること、それが読まれることが当たり前となった今、Z世代においても本人の体験をもとに投稿され、検索・閲覧利用も盛んに行われているインスタグラムの役割をおさえておくことは、消費行動を分析する上でますます重要となる。
 今回はD4DRとNRL(Next Retail Lab)がZ世代研究のために提携している服飾専門の大学・杉野服飾大学の五月女 由紀子教授と学生の皆様にご協力いただき、アンケートとインスタグラムアカウントの投稿を確認した。 意識調査のアンケートは39名、アカウントの投稿閲覧はそのうち22名(26アカウント)の学生の皆様にご協力いただき、関心の対象や利用方法、意識について分析した。

【意識・消費行動】
ミレニアルとの世代間ギャップは5割が実感。
関心が強いものとそうでないものとの違いの詳細に「熱量」「時間」

図1 意識調査「Z世代の服飾学生が感じる、日常生活・消費行動におけるギャップ」

 アンケートから、ひとつ上のミレニアル世代との間に、約半数の50%がギャップを感じている結果となった。
世代間ギャップを感じる部分について、具体的に「対面重視(ミレニアル)か効率(Z)か」「ネットに対する信頼への価値観」(レベル感)「ジェンダーの意識」、ファッションでは「着心地」(ミレニアルはZより着心地を重要視している)などが挙げられており、例えばZ世代をコアターゲットにする場合には、こうした違いを踏まえたアプローチ設計は今後特に重要となるだろう。

 いっぽうZ世代であり、かつ服飾を専攻する学生の視点では、ミレニアル世代との世代間ギャップ以上に、同じ世代での関心領域が違う友達との間において、意識や消費行動にギャップを感じており、どの世代においても関心ターゲットをしっかり設定することが重要、ということは大前提となりそうだ。

 ちなみに関心領域の違いによるギャップについては、「好きな分野にこそ課金をして応援したい(けれど、ライト関心層からは理解が得られない)」「お金や時間をかける熱量の違い」などがあげられた。複数の回答者から共通で、具体的なギャップについて「量」「お金」「時間」「知識」などのワードがみられ、これらの言葉からは例えばコアファンとライトファンで、ターゲットを分けて考えることが重要、といったヒントが得られるはずだ。

【消費の価値観について】
商品購入にあたり8割が情報収集を行うと回答
ポジティブ体験の伝達は、SNS投稿が会話の半分にまで達した

図2 意識調査「Z世代服飾学生における消費の価値観」

 消費の価値観を確認する設問では、「商品を購入する際はいろいろ情報を調べる」がもっとも多く、全体の8割を占める結果となった。今回の回答者が服飾学生であること、また売れ筋商品や、話題になったものへの関心の数値が低いことから、Z世代全体と比べるといくぶんこだわりや趣味消費の高い層とは思われるが、「新しい商品やお店を開拓するのが好き」「他の人があまり持っていない商品を選びやすい」がいずれも48.7%であることと併せると、直感だけではなく、購入の際はしっかりと調査を行っていることが分かる。

 また消費後の行動について、「自分が購入したり利用して良いと思ったものをSNSで投稿する」が約36%と、会話での伝達の半分程度みられている点も、重要だ。

【インスタグラムの閲覧・検索】
閲覧・検索は95%が利用と回答
情報収集メディアとしての利用が浸透している

図3 意識調査「Z世代服飾学生におけるインスタグラムの閲覧・検索利用」

 「検索や閲覧」の利用についての設問では、「よく利用する」「ときどき利用する」合計で95%に達し、まったく利用していないと答えた人はわずか2.6%にとどまった。

 NoteやTikTok、Twitter、YouTubeなど多様なユーザー発信のネットメディアやスマホのソーシャルゲームなどがコンテンツ化している中で、インスタグラムは引き続きアクティブな閲覧メディアでありつづけていることが分かる。注目は利用方法についての回答で、「カフェやご飯屋さんなど、お店を探す」のに使う、「欲しいものを検討する」などが具体的に挙げられ、情報収集(認知獲得)と比較検討・吟味の役割を持つメディアであることがわかる。他、「Googleと同じ感覚で使う」(=調べる)「暇なとき」(=時間をつぶす)といった表現もみられた。

 特に趣味商品や、好みのわかれる商品では、インスタグラムの検索で見られる口コミが購入の決め手になることもあり、まだ新しく有名なブランドや商品でない(=他の人があまり持っていない)ケースでは、たまたま見つかった体験を通じた評価が購入を左右することも大いにある。また 有名なブランドや商品においては、どのように書かれているか(=感じられ、それが伝わっているのか)は、単なる個人の感想として特に見ないでおくことは、意外な評価の拡がりや、支持に変化の兆しがみられても訴求ポイントを改善しないなどの「機会の損失」にもつながるため、しっかりと意識する必要がある。

【インスタグラムマーケティングのバランス】
CtoCではZ世代利用者の95%に行動・態度変容を起こすメディア
4割以上が投稿動機に「おすすめを教える」を選択

図4、図5 意識調査「Z世代服飾学生における投稿閲覧による「行動変容」「態度変容」」(上)と 意識調査「「投稿」」(下)

 
 投稿閲覧を通じた購入や利用などを示す「行動変容」、行動の前段階として興味の発生を示す「態度変容」について、90%以上の回答者が「行動変容」「態度変容」いずれかの経験があると答えており、企業公式の紹介、一般の口コミいずれも決め手や検討の重要な要素となっている。思った以上に、企業発信の投稿においても成果を期待できる結果で、Z世代ではバランスを取って情報を見ていることがわかる。
 
 ただし、企業公式の投稿できる量や役割には限界があり、購入した一般消費者の投稿のほうが当然ボリュームが増えやすく、多様な状況で目につきやすい。このため、直接的な公式アカウント運用と、消費者の投稿増加をわけて考えることが重要で、自然に投稿してもらえるよう意識して見映えやネーミング、看板商品や見どころを用意するなど、企業側でもバランス意識を持って設計していくことが求められる。

 投稿については、自身に当てはまるものとして「気に入ったり満足した商品、サービス、お店、観光地を、友達や閲覧者に教える」が4割以上を占める一方、「がっかりしたり不満を感じた商品、サービス、お店、観光地を、友達や閲覧者に教える」は0%と、改めてインスタグラムではポジティブ寄りの動機が中心となる。不満の書かれない体験レビューが集まっているメディアは他にはなく、インスタ上の投稿量の増加=支持の増加と捉えて良い。課題の抽出には向いていないが、支持要因を把握する点でも非常に有用であると考えられ、D4DRでは強く推奨している。

 

【Z世代服飾学生のインスタ投稿から】
分野別では専攻のファッションの投稿率が3割を超えた
ユニークなカフェやアートなど関連分野の投稿率も高い結果に

 次に、Z世代の専門分野を持った学生がどのようなポイントに関心を持ち、発信しているかを確認する目的で、実際の具体的な投稿について調査を行った。対象期間は2021年1~11月とし、期間内に、アカウント合計5投稿以上している回答者(サブアカウントや閲覧に同意いただいた非公開アカウントも含めてカウント)22名の投稿を対象として、1人5投稿をランダムにサンプリングした110投稿の内容を目視分類した。

図6 Z世代服飾学生のインスタ投稿分類

 分野別では、大学での専攻分野でもある「ファッション」が34.5%で最も多く、次いで「グルメ」が20%の結果となった。他、「レジャー」が13.5%、誕生日などの「記念日」が10%、現代アートを中心に「アート」が8%、グルメの中でも、カフェが多いといった点に着目した。数値の上では風景も20%みられるが、通りすがりの花やビアガーデンでの飲み物越しの夜景など日常風景も半数程度含まれ、意図的に風景を撮影する意識は高くない印象だ。

ファッションは自身で着用したコーディネイト投稿中心 衣服から小物までブランド名もしっかり紹介され組みあわせも重要な情報

 「ファッション」は、服飾学生においては購入品としての投稿は限定的で、34.5%中28.2%が着用での投稿で占められていた。日々のコーディネイト(組みあわせ)で新しい見せ方や発見が生まれることから、他の商品ジャンルと比べてたびたび投稿される、ロングテールに効果が期待できる分野であることも分かった。

 また、多くの投稿において、「GUCCI」から「GU」「VANS」まで、着用しているブランド名がハッシュタグできちんと投稿されていることも重要だ。フォロワーや検索閲覧者は気になった服があれば、ブランドやモールのオンラインストアで同じアイテムやコンセプトの共通する服を探しあてて、自分も同じ組み合わせを試したり、購入することができる
 なおコーディネイトの撮影は、ちょうどスマートフォンで顔が隠れることもあってか鏡越しの自撮りも多く、駅や洗面所など、自宅以外でも鏡があれば場所を問わず撮影されている(=撮りたいと思った時に撮る)印象で、興味深かった。

独自の世界観のカフェの内装やアートなど、ファッションとデザインやコンセプト設計で共通する関心領域の投稿が多い

 「飲食」もユニークな傾向を示しており、全体の15.5%みられた「カフェ・レストラン」は飲食物だけでなく「内装」の写真が8.2%と多く、ユニークなお店を意図的に撮影した内容が多い(「食事」の10%に並ぶ投稿量となっている点にも着目したい)。併せて「アート」もバンクシー展など現代アートの展示撮影を中心に全体の8.2%を占めたことから、世界観やストーリー設計、デザインなどで、ファッションとも強く関連する分野にも高い関心を持っている可能性が窺われる。

 企業視点に立つと、直接的な関心層に加えて、分解した関心の要素にも露出や接触機会を設けていくことは、潜在顧客の獲得の点で有用となる可能性が高いことを示しているだろう

自分たちでもテーマを決めてディズニー訪問を楽しむ様子

 「レジャー」の13.6%は、ディズニーランドが全体の10%と多く含まれたことに起因していた。ファンシーでポピュラーなイメージも強い同施設の投稿は、「売れ筋の商品」への関心が低い結果を示した消費行動についてのアンケートも踏まえると意外と思われたが、内容からは「シミラールック」などテーマを決めてモノトーンや暗めの彩色でコーディネイトしてみたり、大学生として「制服ディズニー」を楽しんだり、人気の商品や場所でも、独自の視点で楽しまれている印象を受けた。こうした傾向も、これらの世代の、メインターゲット以外の取り込み・巻き込みを考える際には、大きなヒントとなりそうだ。

「昭和レトロブーム」「推し消費」などZ世代を象徴する文化も投稿に確認

 他、今回カテゴリーとしては設けなかったが、昭和テイストの雰囲気やサービス、アイテムが味わえることで人気を集める「ネオ居酒屋」や、写真をもとに、推しのアイドルのラテアートをオーダーできる「推し活」など、Z世代を中心に広がりを見せているトレンドや現象を体験している様子もしっかりと確認された。

使用されたハッシュタグを集計・分類

 参考までに、投稿写真と併せて、接触の背景や体験の動機(例:カフェを投稿した理由は、メニューか、お店の雰囲気なのか等)などをより具体的に、正確に把握する目的から、共通のサンプル(=分析対象の110投稿)を対象に、用いられたハッシュタグを集計して、簡単に分類を行った。(110投稿に352種類含まれ、そのうち99のハッシュタグは2投稿以上でつけられていた)

出現率上位のハッシュタグにはファッション関連や検索・閲覧性を意識したタグが並ぶ
#ootdや#f4fなど「ミーム」も自然に使われている

 出現数上位には#ootd(今日のコーディネイト)や#f4f(フォロー・フォア・フォロー)などインスタグラム上でよく利用されている「ミーム」や、閲覧者にファッションを意図した投稿であることを一目で分かりやすく示すタグが並んでいる点にも注目したい。

#gucci、#zaraなどコーディネイトに含まれたファッションブランド名は多くが記載される
カフェはメニューと「#素敵空間」などのデザインや印象のタグいずれも出現

 前述のとおり、コーディネイトでは着用しているアイテムのブランドをハッシュタグで紹介する傾向が強く、インスタグラム上ではファーストリテイリングの#GUは国内を中心に373万、ハイブランドの#GUCCIはグローバルで6,900万もの投稿(いずれも2021年12月中旬時点の累計投稿数)が確認されている。そして他ブランドのアイテムも含めて、どのような組み合わせで着用されているかも、重要な情報となるだろう。

 またファッション以外では、「#アフタヌーンティー」(看板メニューの体験と満足)「#素敵空間」(カフェの魅力)「#20thbirthday」(商品の購入シーン)など、写真とハッシュタグをセットで捉えることで、体験されているシーンがより具体的に分かる。

インスタ閲覧を起点に行動変容・購入・体験投稿が循環
Z世代においても消費サイクルに大きな役割を果たしている

 今回のZ世代を対象とした意識調査・投稿調査を通じて、改めて以下のポイントが明確になったと考えている。

【Z世代の消費】
・購入や消費の前には積極的な情報収集と検討が行われる
・投稿に書かれたブランドや店の名前を起点に、閲覧者から追体験が生まれていく
・インスタグラムの投稿閲覧をきっかけに、態度変容や行動変容が発生している
・接触後も、「気に入った」「満足した」等の消費体験がSNSで多く投稿される

【アプローチの視点】
・支持要因や利用シーンの把握はマスト(写真と合わせてハッシュタグや本文も確認)
・「熱量」「ジェンダー」「重視するポイント」など、「世代」「関心」の違いをおさえることが重要
・これからは「関連分野」への関心や「組み合わせ」をおさえたターゲット戦略が必要

 今回の調査では、Z世代のなかでもひとつの分野に強い関心を持った属性として、「服飾学生」による傾向を確認したが、これは「飲食」「旅行・観光」「アート」「エンタメ」「アウトドア」「自動車」など他の分野においても共通だ。

 購入にこだわりのない「なんでも良い」層の一部は、広告や店舗の商品棚、ECなどで露出の機会を増やすことで取り込むことができるが、将来的なLTVや強いブランドづくりを考えた際には、味方となってくれるこだわり層のファンを増やすことは重要となる。Z世代が消費層の中心となる近い将来においても消費・SNS投稿・口コミ閲覧はますます密接につながっており、重要性が高くなることを示したといえるだろう。

(おわりに)複数アカウント運用が当たり前の時代で、誰もが目的と相手を切り替えて考えるマルチパーソナリティの時代となった

 今回、プロフィール欄に特定の内容・目的に特化したアカウントであることを明記し、それに則した内容のみを投稿する「専門アカウント」も4含まれたが、5投稿ずつをランダムサンプリング抽出する今回の調査手法においては、分野やハッシュタグなどに結果に偏りが出てしまうことから、分析の対象外とした。
 具体的にはコスプレサークルの部員募集やメディア出演者の公式などの、学生ながらビジネス的なゴールを持たせた運用と、どうぶつの森(=あつ森)などメタバースの世界のスクリーンショット投稿、推しのアイドルの応援など、内容特化型の専門アカウントが確認された。
 アンケートの回答からは、39名中36名と、92%が2アカウント以上を運用している結果となり、役割を分けた複数アカウントの運用はZ世代では当たり前となっている。加えて従来のように必ずしも日常投稿のアカウントが主体とは限らない「マルチパーソナリティ」の時代となっていることが窺われ、興味深かったので最後に紹介させていただいた。

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Ichiko Oki

ソーシャルメディア分析を専門領域に、投稿をもとにした実践的なインサイト抽出・提案を得意とするデータアナリスト。2018年11月よりD4DR 札幌リサーチセンター開設・室長。

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