データからゆるく令和元年を振り返る~ラグビーW杯の成功要因やタピオカ、PayPayの流行要因は?~

2019年も残すところ1週間を切り、流行語大賞や今年のトレンドランキングなども発表された。以下の『2019 ユーキャン新語・流行語大賞』、日経トレンディ『2019年ヒット商品ベスト30』、Google Trendからいくつかの出来事や商品をピックアップして、令和元年を振り返っていく。

『2019年の「ヒット商品ベスト30」』(日経トレンディ・日経クロストレンド)からD4DR作成

予想を超えた盛り上がりをみせたラグビーW杯2019

誰がここまでラグビーの盛り上がりを予想できただろうか。上記の『2019年急上昇ワード-総合ランキング-』は相対的な指標でしかないものの、「台風19号」、「令和」に次いで総合ランキングで3位に入ることから、多くの国民が興味関心を持っていたことがわかる。

まず、国民に大きく認知させたのは、ワールドカップ開催時点で世界ランキング1位であったアイルランドを撃破した9月28日であることは間違いない。そして、最も関心が高まったのは決勝トーナメント進出をかけたスコットランドに勝利した10月13日の週であった。
10月1日に実施された消費税10%引き上げの話題を吹き飛ばしてしまうほどの勢いであったように感じる。 (しかし、実際には10月の景気動向指数は前月より5.6ポイント悪化し、5年前の増税後を上回った。)

もちろん、初の決勝トーナメント進出を果たした日本代表選手の活躍があってこそ盛り上がったのは間違いないが、大会組織委員会の努力もまた本大会の大成功に寄与した。試合日程やチケット価格が発表された後の消費者需要調査から予測された販売見込みは、約120万枚であったそうだ。

しかし、メディア戦略やイベント開催等を行った結果、大会開催前に約170万枚のチケットが売れ、開催中も含め最終的には約184万枚の販売を記録した。チケット販売率は99.3%を記録したのである。

プレーした代表選手、コーチングスタッフ、大会組織委員会、その他関係者も含めまさに「ONE TEAM」で成功させたワールドカップであった。

1年を通して安定的に人気があったタピオカ

以下のグラフは、「タピオカ」の検索と『2019年ヒット商品ベスト30』で1位の「ワークマン」の検索ボリューム比較である。「ワークマン」の検索数は一時的に急上昇しているが(おそらく要因は日経トレンディの『2019年ヒット商品ベスト30』で1位を獲得したこと)、それとは反対にタピオカは一時的に検索ボリュームが急増した、というようなピークはないものの年間(特に後半)を通して安定的に検索ボリュームが多かったことがわかる。

以下は、LINEリサーチが四半期毎に行っている最近の流行についての調査である。 ( 調査対象者は、全国の15~24歳の男女で自由記述形式 )
以下の調査からわかるように、 若者から圧倒的な支持を得たことがわかる。回答率は、3月から6月にかけて13.7ポイント上昇、6月から9月にかけて0.8ポイント上昇と、いまだ上昇傾向にある。しかし、3月から6月にかけての上昇(13.7ポイント)と6月から9月にかけての上昇(0.8ポイント)を考えると、そろそろ下降傾向に向かう気配がうかがえる。

次に、SNSでの投稿量を見てみる。以下はの折れ線グラフは2019年、月別のtwitterで「タピオカ」という言葉を含むツイートとそれら投稿のリツイートの合計である。

Twitter上では、6月にタピオカブームが過熱し、徐々に落ち着いていっている傾向にある。上記の数値にはインフルエンサーの投稿やバズツイート、PRツイートなどが含まれるため、一概にタピオカブームは収束しつつあるとは言えないが、さらにタピオカブームが加速することはなさそうだ。(そもそもタピオカの多くは冷たいため、季節的な要因もあるだろう。)

スマホ決済市場を独走するPayPay

今年は、消費税増税に伴い経産省がキャッシュレス・ポイント還元事業を行った。スマホ決済事業者の還元祭りと相まって、スマホ決済利用者は格段に増えた。まさに令和元年はスマホ決済元年ともいえるだろう。その中でもPayPayは大掛かりにキャンペーンを行い、登録者数を増やした。2019年12月時点で登録ユーザー数は2100万人をこえている。

では、PayPayがここまでユーザー数を増やしていった経緯を振り返っていく。 まず、今年の話ではないが、2018年12月に行ったキャンペーン『100億円あげちゃうキャンペーン』は、わずか10日間で100億円還元終了となり、キャンペーン期間こそ短かったものの、世間に広く認知させた。

2018/11/1~2019/12/27の検索人気度の動向(Google Trend)

上のグラフは、2018/11/1~2019/12/18までの「PayPay」での相対検索ボリュームである。やはり、2018年12月に一時的に検索ボリュームが大きくなっている。2019年は緩やかに上昇し、10月前半に一時的にピークを迎えている。10月前半にピークが来た理由は、PayPay1周年記念キャンペーンの影響である。PayPay1周年記念では、10/5限定で20%還元が行われた。10/5は、キャッシュレス・ポイント還元事業がスタートしてから最初の土曜日であり、国のキャッシュレス推進事業を最大限活用しようとしていることがわかる。

検索人気度動向比較(Google Trend)

上のグラフは、LINE PAY とメルペイとの比較である。LINE PAYもメルペイも還元キャンペーンを行っていたが、PayPayのように一時的に大盛り上がりすることはなかった。

なぜPayPayは、ここまで競合を引き離すことができたのだろうか。

それは、マーケティング 戦略(ユーザー側)、営業(加盟店側)、開発(アプリ)の3つがうまく絡み合ったからだろう。

マーケティング戦略では、まず2018年12月に『100億円あげちゃうキャンペーン』で圧倒的なインパクトを残し、市場に名乗りをあげた。『100億円あげちゃうキャンペーン』では、これまで買い物やサービス利用の手段でしかなかった決済をエンタメ化したことに意義があるように思える。そして、このエンタメ化(20or100%還元)は、即座に還元額がわかるからこそ成功した。

次に行った大きいキャンペーンは、2019年2月~5月まで行われた『第2弾100億円キャンペーン』である。このキャンペーンでは、還元上限額が明確に決められており、PayPayの理解、繰り返し利用の増加が目的であった。

第一弾キャンペーンでは、サービスの認知を、第二弾キャンペーンではサービスの理解を促進させた。そして、次にPayPayが打った手はインハウス推進、つまりはグループ内ユーザーの利用促進である。インハウス推進ではSoftBank(携帯キャリア)とYahoo!JAPAN利用者を優遇した。インハウス推進を2019年6月まで残しておいたのもまた優れた戦略である。インハウス推進を認知・理解の前に行ってしまうと、それ以外のユーザーは疎外感をおぼえてしまう可能性があるからだ。このような、認知・理解・インハウス推進の後、経産省のキャッシュレス・ポイント還元事業と相まってPayPay加入者増加を加速させた。

そして、利用者が増加した背景には、PayPayの利用が可能な加盟店舗数の多さが挙げられる。2019年11月時点でPayPay利用可能な店舗は170万を超えており、コンビニや大手飲食店だけではなく商店街の個人店などにも多く入っている。ここまで加盟店舗数を増やせたのは、営業の力があったからだろう。

PayPayは、優れた戦略と営業力で、ユーザー数と加盟店舗数を共に増加させたのだ。

さらに、忘れてはならないのはアプリ開発である。PayPayは、毎週1回アプリ機能のアップデートを行っている。PayPayが目指しているのは、決済アプリではなく様々なサービスを統合した「スーパーアプリ」であるから、これからも様々な機能が追加されていくだろう。

登録者数は2100万人を超えたものの、まだまだ伸ばす余地がありそうだ。PayPayにとって2020年は、認知・理解・利用者を更に拡大し、より成功するためにキャズム(16%の壁)を乗り越えれるかどうかの勝負の年になるだろう。

来年の還元キャンペーンや新たな施策が楽しみだ。 スーパーアプリや、LINEとの協業、2020年のマーケ戦略予想などは、次回の記事『2020年の流行予想(仮)』で取り上げたいと思う。

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Sho Sato

D4DRアナリスト。Web分析からスマートシティプロジェクトまで幅広い領域に携わる。究極のゆとり世代の一員として働き方改革に取り組んでいる。

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