パチンコ・スロットホールの新たな形とは?(第十七回)


【特集】アフターコロナ時代のビジネス戦略 とは
D4DRでは、今回の新型コロナウイルス(COVID-19)の流行を経て社会がどのように変化するか、そして各業界がどのような戦略にシフトしていくべきなのかを考察した「アフターコロナ時代のビジネス戦略」を毎週連載しています。
連載一

アフターコロナ時代のビジネス戦略 -エンタメ④パチンコ・スロット業界-

コロナ禍に大きく注目を浴びたパチンコ・スロット業界。休業要請を無視し、営業を続けたホールは店名を公開され、メディアに取り上げられるなど他の業界に比べ、過度に取り上げられすぎといっても過言ではないだろう。実際、緊急事態宣言期間、20時以降に営業している飲食店や雀荘など多数あったがそれらの店舗はほとんど取り上げられていない。今回は、このような逆風が吹くパチンコ・スロット業界のアフターコロナについて論じていく。

パチンコ・スロット業界への逆風はコロナだけではない

パチンコ・スロット業界はコロナ流行以前から縮小傾向にある。警察庁生活安全局保安課が出した『令和元年における風俗営業等の現状と風俗関係事犯の取締ち状況等について』によると、店舗数は2019年末で前年比421店舗減の9,639店舗である。1995年の18,244店舗をピークに24年連続減少となっている。さらに、その縮小に拍車をかけるように、2020年4月にパチスロ業界にとって大きく影響を与える法律が施行された。
(その他、高射幸性機の撤去なども逆風としてあるが本記事では触れない。)

パチンコ・スロットホールの禁煙化

公共の施設において屋内喫煙が原則禁止となる改正健康増進法が2020年4月に予定通り施行された。これにより、加熱式タバコの喫煙が可能なエリアや喫煙室を設ければ室内でも喫煙可能であるが、遊戯しながらの喫煙は不可能になった。パチンコ・スロットホールの集客の観点からは、パチ・スロ屋という少しダーティーなイメージを払拭することができ、汚いイメージを持って敬遠していた層を取り込めるというメリットは確かにある。しかし、既存顧客離れというデメリットはあまりにも大きい。
シーズ、エンタテインメントビジネス総合研究所、アミューズメントプレスジャパンが共同で行った『パチンコ・パチスロプレイヤー調査2020』によると、遊戯客の喫煙率は55.1%であった。もちろん、パチンコ・スロットホールが禁煙化されたことで、既存プレイヤーの55.1%全てがパチンコ・スロット離れするわけはないが、「リラックスや気分転換のためにパチンコ屋でタバコを吸いながら遊技する」という 遊戯しながら煙草を吸うこと自体が目的化していた既存顧客 のパチンコ・スロット離れは免れないであろう。

以下は、マイボイスコム株式会社が2019年に実施した『パチンコに関するアンケート調査』と保険クリニックが2017年に実施したたばこについての調査結果の抜粋である。

パチンコ・パチスロをする理由

  • 1位:気分転換(52.4%)
  • 2位:暇つぶし(39.3%)
  • 3位:ストレス解消(37.2%)

タバコを吸いたい理由

  • 1位:リラックスのため(47.0%)
  • 2位:イライラ解消(38.7%)
  • 3位:生活の楽しみだから(25.0%)

気分転換とリラックスは非常に類似しており、ストレス解消とイライラ解消はほぼ同義である。上記調査結果から、生活者がパチンコ・スロットに求めているものとタバコに求めているものは非常に類似しており、「パチンコ・パチスロ」と「タバコ」は切っても切れない関係にあるということがわかる。

アフターコロナ・禁煙化時代のパチンコ・スロットホールはどのように転換していくべきか

上で、パチンコ・スロットとタバコは切っても切れない関係にあると述べたが、その関係が強引に断ち切られたことは、前向きにとらえればチャンスである。これまでの若干ダーティーなイメージをクリーンに転換し、新たな客層を取り込める可能性があるのではないだろうか。
とは言っても、これまでのようにパチンコ・スロットの遊戯だけをサービスとして提供していてもおそらく新たな客層は呼び込めないであろう。
新たな客層を取り込むためのキーワードは「換気」と「地域特性・密着」である、と考える。

コロナ前から取り組んできた換気対策を活かす

コロナ流行後、コロナ感染防止のために換気の重要性が叫ばれているが、パチンコ・スロットホールはコロナ流行前から室内の換気に対する意識はものすごく高かった。その理由は、上でもあげた遊戯者の喫煙率の高さが挙げられる。パチンコ・スロットホールに入ったことがない人は意外に思うかもしれないが、だいたいのホールはそこまでタバコ臭くない。(もちろんタバコ臭い、ザ・パチンコ屋的なホールも数多くあるが)
長年取り組んできた換気対策のノウハウを武器に、ホール内に漫画コーナーやカフェコーナーを併設し、「換気万全な無料漫画カフェ」や、「換気万全でPC作業・自習などができるパーソナルスペースサービス」などで新たな客層を取り込むことができるのではないだろうか。
実際、大型ホールでは、1,000冊以上漫画を置いてある店舗やカフェが併設されている店舗、さらには足湯が設置されている店舗なども既に存在する。
それらのようなパチンコ・スロット遊戯以外のサービスにコロナで顕在化した生活者の換気ニーズを強みとして掛け合わせることで、パチンコ・スロットホールの新たな価値が生まれる可能性があると考える。

地域の特性を活かす

ここで一つある店舗の事例を紹介する。

アイランド秋葉原

http://psumma.jp/hall/37434/

秋葉原にあるパチンコ・パチスロホール『アイランド秋葉原店』である。パチンコ・パチスロを好きな人ならば誰しもが知っている店舗である。アツい日(スロットに高設定が入ると予測される日)には、パチンコ・スロット合わせて約600台の設置に対して2,000人以上が開店前に集まることも多々あり、平日にも1,000人以上が集まることもある。
このようにアイランド秋葉原店の集客力が高い理由は3つあると考える。
一つは、出玉率の高さである。上でも引用した『パチンコ・パチスロをする理由』では、18.2%が「実益を得る」と回答していたが、勝って利益を得ることは当然パチンコ・スロットを遊戯する際に考えることの大きな一つである。そのため、勝つ可能性が少しでも高い店舗に生活者が集まることは当然であり、出玉率の高さは集客するうえで重要な要素である。
2つ目は、徹底した不正対策である。パチンコ・スロット業界には、勝つことだけを目的とし、期待値を常に追い求めるいわゆる「プロ」、「軍団」なるプレイヤーが存在する。そのようなプレイヤーは出玉率の高い店舗によく訪れる。マナーが悪いプロ・軍団であると、抽選でいい番号を確保するため抽選を引くだけの引き子を雇うことが多々あり、一般顧客に迷惑をかけている。そのような行為を見逃しているホールは多いが、アイランド秋葉原店は顔写真を撮り抽選者と入場者の不一致を避けるなどし、さらに不正を犯した者に対してはそれ以降の店舗への出入りを禁ずるなどの施策を取っている。
(現在はオンライン抽選の導入が進んでおり、運用テスト期間中である。)
3つ目は、世界的にも有名であるオタクの聖地「秋葉原」という土地柄を活かした設置台の選定である。具体的には、「魔法少女まどかマギカ」や「Re:ゼロから始める異世界生活」など店舗設置台の半数以上が萌え系の台である。

アイランド秋葉原店の集客力の高さの秘訣は、1つ目の出玉率の高さが新規来店を促し、2つ目の不正対策、3つ目の地域特性を活かした世界観が再来訪を促し、その結果行列ができ、その行列がさらにプロモーションとして行列を呼ぶ、ということではないかと考える。

今後のパチンコ・スロットホールの集客を考えるうえで、3つ目の「地域特性を活かした」コンテンツが重要になってくるのではないだろうか。
アイランド秋葉原店は、出玉率というパチンコ・スロット遊戯者向けの価値に地域特性を活かした空間の価値を乗っけているが、パチンコ・スロットをそこまでしない生活者向けの価値(例えば、カフェや漫画喫茶など)に地域特性を活かした空間の価値を乗っけることで新たな価値を生み出せるのではないかと考える。
例えば、駅前型のホールであれば観光・地域案内所を併設したホール、その地域をVRで体験できるVR体験サービス、有名な特産品がある地域のホールであれば地域の特産品を使ったカフェの設置、といったように店舗を持っている強みを活かしたサービスが期待される。また、これらのようなパチンコ・スロット以外のサービスに力を入れることで、パチンコ・スロット以外を主目的として来店する生活者に、パチンコ・スロットを触ってもらえる可能性もある。

なにはともあれ、アフターコロナ・禁煙化するパチンコ・スロット業界において最も重要になるのは、新たな客層の取り込み=非既存顧客に「パチンコ・スロットって意外とダーティーじゃないね」と実際に感じてもらうことである。


次回「アフターコロナ時代のビジネス戦略」のテーマは「地方行政」、8/5(水)更新予定です。


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Sho Sato

Sho Sato

D4DRアナリスト。Web分析からスマートシティプロジェクトまで幅広い領域に携わる。究極のゆとり世代の一員として働き方改革に取り組んでいる。

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