非常時にこそ問われる地方行政の発信力(第十八回)


【特集】アフターコロナ時代のビジネス戦略 とは
D4DRでは、今回の新型コロナウイルス(COVID-19)の流行を経て社会がどのように変化するか、そして各業界がどのような戦略にシフトしていくべきなのかを考察した「アフターコロナ時代のビジネス戦略」を毎週連載しています。
連載一

アフターコロナ時代のビジネス戦略 -地方行政-

新型コロナウイルス(COVID-19)の流行は、私たちの生活を一変させた。

そのことは行政などの公な機関にも言える。現在、多くの人が国や自治体を問わず行政に不満を募らせている。その反面、大阪の吉村知事のようにスーパースターのような扱いを受けた行政の長も存在する。今回は自治体を中心に行政の発信力にスポットを当て、現状と今後の在り方を考えたい。

コロナ禍の行政への信頼度

過去にここまで行政について注目を集めたことがあろうか?
新型コロナウイルス感染症にはそれほどのインパクトがあった。
テレビ・新聞をはじめとするマスコミの論調では「行政がだめ」「行政はしっかりせよ」「行政はなにもやっていない」と罵詈雑言のオンパレードであるが、実際のところそのような言葉はどれほど参考にされているのであろうか?
日本マーケティングリサーチ協会正会員の株式会社アンド・ディ(東京都港区 代表取締役社長:佐藤 哲也氏)は、大手調査会社のマクロミルを利用してコロナ禍の各業種の信頼度に関するアンケート調査(調査期間:2020年4月28日~2020年5月8日)を行っている。

https://www.and-d.co.jp/2020/05/29/survey_corona_infosource/

コロナ禍で信頼する情報源は、全体ではテレビ、家族・友人知人、行政機関(中央)となっており20%を超えている。新聞は15%程度の信頼度であった。
同調査は年齢別にも集計しているが、こちらは驚くべき結果となっている。

https://www.and-d.co.jp/2020/05/29/survey_corona_infosource/

20~30代においては行政機関がテレビよりも7ポイントも高い信頼度(36%)を得ていて、40代においてはテレビと同じ信頼度(16%)である。
年長者だけがテレビの信頼度40%に対し行政は19%と大きな差がある。
外出自粛の影響でテレビの影響力がいくらか復権に近づいたことを差し引いても、行政に関しては、若年層ほど(テレビなどのマスコミが騒ぐほどには)信頼は失われていないと言えそうである。
過去に麻生副総理が、「年長者はテレビと新聞しか当てにしていない情報弱者だ」という趣旨のコメントをしたことがあったが、情報弱者かどうかは別として年長者の方がテレビの情報を鵜呑みにする傾向が高く、テレビ局も「少しくらい理不尽に叩いても」苦情が来ない行政の批判を繰り返し、よりセンセーショナルにして視聴率を稼げるコンテンツとして有用なのであろう。
とはいえ、だから行政が厚い信頼を得ているかというと、それは疑問が残る。先ほどのグラフの20~30代であっても行政を信頼している人は36%程度で、全体の1/3にすぎないのである。

非常時の行政には何が必要か

中央官庁であっても地方自治体であっても、行政というものは基本的に平時は目立つ必要がなく、粛々と決められた手順に沿って業務を処理すれば、住民からは一定の評価が得られるはずの立場にあると思われていた。しかし少なくとも非常時においてはそうではないと突きつけられたことは、今回の新型コロナウイルス感染症の大きな影響の一つであろう。
本来はこのようなパンデミックが発生した時点で、感染症対策の決められた手順にしたがって業務を遂行することが求められたはずだが、ひとたび集団感染の認められたクルーズ船が話題になると、多くのマスコミが、彼らの根底に流れる反権力志向や海外からの目を動機として大きく注目し、それに乗じて「医者ではないが感染症を専門に研究している大学教授」「感染症とは無関係だが診療を担当している医者」や「コメンテーター」「芸人」などが各々の立場からの見方をテレビなどを通して論評したことにより、完全に行政が悪者扱いされていったことは否めない。
また、行政とは本来法律など決まりごとに沿って動くものであるが、マスコミを中心に形成された「世論」というモンスターにおびえ、朝令暮改ともいえる行動があり、それがまたマスコミの好餌になるという悪循環に陥っていた。

Photo by Sam McGhee on Unsplash

そのような混乱の中、大阪府の吉村知事や北海道の鈴木知事のように、地方行政のトップが報道官的役割を演じ、一躍スーパースターのように持ち上げられていたことは記憶に新しい。
発表している政策等は他都道府県と大きく変わらないが、若く見目が良く弁舌さわやかな点、そして「センセーショナルだが分かりやすい言葉選び」が、前述のようなテレビを信頼する年代に受けたようで、時代の寵児となっていった。
8月に入った現時点で、吉村知事はまだ露出があるのに対して鈴木知事は全国放送ではほぼ露出がなくなっているが、大阪府も北海道もコロナ対策では比較的成功している自治体とされている。

また別の切り口から論じると、コロナ禍と選挙期間が重なった小池都知事も急に報道官的役割を演じだし、選挙活動をほぼ行わずに前回よりも多い得票率で当選している(SNSではコロナ禍で毎日顔を露出するのが最大の選挙活動と揶揄する意見も多く見られた)。
ここ数ヶ月間の動きから分かったこととしては、緊急時に行政の面目を保つには、いち早くトップが報道官になることが重要で、そのような素養を持った人がこれからの行政の顔になっていくだろうということである。
すなわち、少なくともマスコミを信頼する層から支持を得るには、自治体としてできる行動を、如何に迅速に、如何に能動的に検討した結果として発表できるかがカギとなる。
もっとも、これからテレビの影響の及ばない層が厚くなってゆく可能性も高いので、Web対策はテレビ以上に重要になってくるであろう。特にSNSは一人ひとりが「勝手に勝手な言い分」を発表できる場であり、中でもインフルエンサーと呼ばれる人の言動は良くも悪くも耳目を集め、大衆の意見を左右することもある。施策や対応の中身は然るべき専門家の意見やデータを参考にしつつ慎重に検討することを前提として、発信の段階においてはそのような説得力とインフルエンサー的な発信力を如何に両立するかが今後重要な課題となるであろう。


次回「アフターコロナ時代のビジネス戦略」のテーマは「宗教」、8/12(水)更新予定です。


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