ポスト民主主義・ポスト権威主義の台頭とは?
予想される未来社会の変化
- SNS時代により世論の分断が深刻化し、ポピュリズムが拡大することで、従来の民主主義の限界が訪れている。
- 民主主義の合意形成に時間がかかり、政策実行力が遅いというデメリットから、中国・シンガポール型の権威主義(効率的政治)が注目されている。AI・ビッグデータなどのテクノロジーによって統治が高度化し、市民データを活用した最適政策(スマートガバナンス)が実現する。利便性が向上する代わりに監視体制が強まる。
- 「ポスト民主主義」「ポスト権威主義」がどのようなものになるか、様々な可能性がある。
トレンド
デジタル権威主義

デジタル技術を用いた、指導者の意図的な情報統制による政権の維持・強化は、従前から行われてきており、「デジタル権威主義」などと呼ばれてきた。
現代の権威主義国家の指導者は、デジタル技術や最新のAIを駆使し、より効果的・不透明な形で自らの政権をより堅固にしている。AIやSNSを活用することで、ファクトチェックや取り締まりが間に合わないような膨大な量とスピードでの情報拡散が可能となり、インターネット・通信技術を用いた情報操作が行われている。また、反体制的な情報や活動家個人を、単体で容易に識別・追跡するAIが活用され、抑圧することで権威主義の政権を維持している。
インターネットやSNSが普及し、市民の政治参加フィールドとなっているような国では、デジタル権威主義化の手法がより効果的であり、権威主義化の進行も速い可能性がある。実際に、インターネットの自由指数とインターネット普及率の相関を確認すると、各国は大きく4分類できる。インターネット普及率が低い国々は概して自由民主主義的でない傾向にあるが、この要因は情報介入などによる権威主義化ではなく、司法や選挙の著しい欠陥やクーデターなど別の要素があると考えられる。
一方で、デジタル技術の進展により、指導者の意図的な情報統制による政権の維持・強化だけでなく、市民のデジタル技術活用の加速によって「デジタル権威主義化」する側面もある。権威主義化の加速を防ぐためには、こうした技術の利用を適切に管理・規制することも必要だと考えられる。
例えば、米国では、政治的敵対者を威嚇したり、表現の自由を毀損(きそん)したり、ジャーナリストなどを監視したりするような用いられ方をする商用スパイウェア、およびそれを利用した企業、個人を規制している。英国、カナダ、EUでは公務員が生成AIを用いる際に、社会の公平性を損なう有害な情報や偽情報が含まれないような堅牢性・透明性の確保の要求や、個人の追跡・スコアリングへの利用の禁止がすでに定められている。
このように、自由民主主義はテクノロジーによる新たな脅威にさらされており、複数の民主主義国家がデジタル技術の不公正・不透明な利用を防ぐための管理・規制体制の整備に着手している。
SNS戦略を活用した衆議院選挙と歴史的勝利

出典:自民党『「ネット地盤」が選挙結果に大きく影響 選挙ドットコム・鈴木邦和編集長が分析する衆院総選挙』
2026年の衆院総選挙では、自民党が316議席を獲得し、歴史的勝利を収めた。高市総理率いる自民党に強い支持を与えた一因が「ネット地盤」と呼ばれる、インターネット上の高い支持とされている。
高市総裁や自民党に対するポジティブな反応がYouTube上で非常に強く出たことが大きな勝因とされており、YouTubeに投稿された動画のうち、ポジティブな内容が8割以上を占め、自民党に対しても同様の傾向が出ていたという。ポジティブな反響が無党派層支持につながったと考えられる。
2026年の衆院選では約28億回、選挙関係の動画が視聴された。これは2024年の衆院選と比べると約10倍の再生回数で、しかもその多くが、第三者が制作するいわゆる「切り抜き動画」だった。
米ニューヨーク・タイムズでも、「率直で発信力のある言動やSNS戦略で若年層の支持を広げた」と報じられた。
こうした結果を受け、今後、選挙活動でのSNS戦略の激化が予想される。
国家情報局の設置

出典:中央日報『「日本版CIA」国家情報局創設の日本…「中国牽制」「民主主義萎縮」激論』
政府のインテリジェンス(情報収集・分析)能力を高める「国家情報局(日本版CIA)」の設置法案が、2026年4月23日の衆議院の本会議で可決された。この国家情報局の新設は、高市総理が総選挙の公約として掲げていたものだ。
日本国内および国外の情報収集などインテリジェンス機能強化のため、内閣情報調査室、警察庁、外務省、公安調査庁などの各機関に情報提出を要求することができるようになる見込み。国家情報局は情報収集や分析のほか、外国勢力の工作活動も調査対象とする。
プライバシーの侵害、政治的中立性、国民への監視強化などの懸念の声が一部の野党から挙がった。
高市総理は、法案は行政機関相互の関係を律するもので、新たな情報収集の権限を付与するものではないと発言しており、「情報機関による一般市民への監視が強くなる懸念はあたらない」と反論。
また、政府による国民の監視の強化やプライバシーの侵害、表現の自由の侵害につながるという点も否定した。
政府はインテリジェンス政策の一環として国家情報局に続き、外国勢力を念頭におく「スパイ防止法」の制定を視野に入れている模様だ。