重松大輔×藤元健太郎 対談後編「スペースマーケット代表取締役社長と語る 富裕層・低所得層の二極化は悪か?相互扶助の可能性」

約150の未来仮説「未来コンセプトペディア」などのナレッジを活用して、各分野の有識者に未来を考えるヒントを伺うFPRC未来コンセプト対談。日本におけるシェアリングエコノミーの先駆者であるスペースマーケット代表取締役社長 重松大輔氏にお話を伺った。後編では、富裕層・低所得層の二極化に関連して、富裕層の価値観の変化や相互扶助の可能性について語った。

プロフィール
重松大輔 スペースマーケット 代表取締役社長
1976年千葉県生まれ。千葉東高校、早稲田大学法学部卒。2000年、東日本電信電話(株)入社。主に法人営業企画、プロモーション等を担当。2006年、(株)フォトクリエイトに参画。一貫して新規事業、広報、採用に従事。国内外企業とのアライアンス実績多数。2013年7月、同社にて東証マザーズ上場を経験。 2014年1月、(株)スペースマーケットを創業。2016年1月、シェアリングエコノミーの普及と業界の健全な発展を目指すシェアリングエコノミー協会を設立し代表理事に就任(現在理事)。2019年12月、東証マザーズに上場。

藤元 健太郎 FPRC 主席研究員、D4DR 代表取締役
元野村総合研究所、元青山学院大学大学院 MBA 非常勤講師、関東学院大学非常勤講師。 1993 年からインターネットによる社会変革の調査研究、イノベーションに関わる多くのコンサルティング、スタートアップを支援。

スペースマーケット重松大輔×藤元健太郎 対談③「富裕層・低所得層の二極化は悪か?相互扶助の可能性」|FPRC未来コンセプト対談Vol.6

社会に富を還元する富裕層が増える

今後、技術革新などの影響により経済格差が拡大するという予想がある。未来には人間が「AIやロボットに仕事を奪われる」などと言われることがあるが、その言葉が示すように、中間層の仕事が自動化されることで低所得の仕事に従事する人が増えることが要因の一つとされる。

しかし、富裕層と低所得層の二極化は必ずしも悪い面だけではない、と藤元は話す。

藤元 その理由の一つは、富裕層がイノベーションや新しいサービスに投資をするようになると、社会全体にとってプラスになるからです。これからの富裕層には富を社会に還元してくれる人が増えると予想しているんです。

重松 富裕層も個人で使えるお金には限界があるので、コモンズやインフラを提供するといったことにお金を使うのではないでしょうか。例えば、柏にラグビーグラウンドを寄付した会社もありますし、イーロン・マスクはウクライナにインターネットを提供したりいろいろなことをしていますよね。周りの経営者を見ていても、財団を作って支援する人もいて、そのような動きはこれからさらに増えると思っています。

藤元 富裕層の価値観が変わってきていますよね。

重松 そうですね。若い世代の特徴なのか、子どもたちと話していても、ゴージャスな物がほしいというよりは、お金は全然いらなくて、サステナブルであったりみんなで楽しくなれるようなことを求めていると感じます。

1996年~2010年生まれのZ世代の特徴として、「社会貢献意識が高い」「エシカル志向が強い」ことがよく挙げられるが、内閣府が実施している「社会意識に関する世論調査」によると、2010年の20代と比べ、2021年の20代は社会貢献意識は高い。この傾向が続けば、社会に富を還元する富裕層は増えていくと考えられるのではないか。

社会への貢献意識(日頃、社会の一員として、何か社会のために役立ちたいと思っているか)

出典:内閣府「社会意識に関する世論調査」

相互扶助の可能性

また、低所得者が増えるということに関しても、シェアリングエコノミーをはじめとする相互扶助の仕組みで、今までよりも楽しく生活できるようになるのではないかと藤元は話す。

藤元 例えば、一人暮らしの高齢者は買い物が困難だったり、急に体調が悪くなったときの対応が難しかったりなど、生活に不安を抱えている人も多いと思います。でも、シェアリングの仕組みでプライバシーを守りながら助け合うライフスタイルが広がれば、相互扶助は所得によらず幸せに生きるための基盤になるのではないでしょうか。二極化が進むと社会が乱れるとよく言われますが、むしろ二極化を前提としてより良い社会を目指すことができるのではないかと考えているんです。そして、シェアリングエコノミーは相互扶助の可能性を広げていると思います。

さらに、テクノロジーを活用し、シェアリングエコノミーなどの仕組みで余っているリソースを有効活用することで、生活コストも下げられると藤元は予想する。

藤元 ADDressは4万4000円で日本中に住み放題ですが、今後もっと本気で空き家活用が行われると家賃は下がる気がしています。ベーシックインカムの議論では「月7万円」が支給額の例として挙げられることが多いですが、日本中の余っているリソースをうまく活用してサービスを考えていけば、その水準で生活することも不可能ではないと思います。

その例として、重松氏は空き家を挙げた。空き家率は年々上昇しており、2018年の総務省の調査では、総住宅数の13.6%に上った。(出典:総務省統計局「平成30年住宅・土地統計調査 特別集計」)

出典:総務省統計局「空き家等の住宅に関する主な指標の集計結果について」

重松 空き家は800万戸以上あり、これからも増えると予想されるので、きちんと活用すれば家賃はとても安くなります。どこでも仕事ができて、子どもの教育がどこでも変わらない質になれば、家賃の安い地方に住む人も増えるのではないでしょうか。

藤元 働き方もギグエコノミーのようなサービスもすごく伸びていますし、隙間時間で働くなどシェアリングエコノミーで収入を得る手段も増えていますよね。また、相互扶助はお互いに辛いから助け合おう、という形だと辛いと思いますが、一人でご飯を食べるよりみんなで食べたほうが楽しいから一緒に楽しもう、といった形だと良いですよね。

【対談前編】シェアリングエコノミーと個人の選択肢の多様化はこちら


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