デジタルトランスフォーメーション時代のカスタマージャーニー活用  〜カスタマージャーニーの次にとるべきアクション〜

カスタマージャーニーを画餅にせず、企業の資産にするためには、次にどの様なアクションをとれば良いのでしょうか。D4DRでは、その一つの答えが「データ活用」にあると考えています。本稿では、カスタマージャーニー設計後に取るべきアクションとして、デジタルトランスフォーメーション時代の「データ活用」のポイントについて解説していきます。

デジタルトランスフォーメーション時代のカスタマージャーニーとは

前回の記事「D4DRが考える、デジタルトランスフォーメーションに必要な4つの視点」でも触れましたが、デジタルトランスフォーメーション時代のカスタマージャーニーの要点は3つあります。

顧客のライフタイムバリュー(LTV)向上の視点

デジタル化の進行に伴い、企業と顧客の接点・接触機会が多くなってきています。その中で、従来は購入プロセスにフォーカスしてカスタマージャーニーを設計していましたが、そのスコープを日々の生活の中や購入後の利用シーンまで拡張して、ジャーニーを考える必要が出てきています。

オフラインシーンでのコミュニケーション

現在では、モバイルの普及やIoTの浸透によって、顧客のオフライン行動を把握あるいは価値を提供できるようになってきています。オンラインの世界だけではなく、今まで見えなかったオフライン領域でも顧客との関係性を高めていきます。

データ活用

前述の2つの要点で触れた通り、あらゆる顧客の行動がデータ化され、収集できるようになってきています。このデータを活用し、今まで見えなかったことを可視化し、また幅広い領域で活用する事で、より効果的な施策が実施できます。

カスタマージャーニーの次の一手は「データ活用」

関係部門を巻き込んでカスタマージャーニーを作ったものの、アクションプランに落とし込めていない、という声をよく耳にします。
ここからは、せっかく作ったカスタマージャーニーが宝の持ち腐れにならないように、次の一歩をどの様に進めるかを考えていきます。

カスタマージャーニーの弱点

カスタマージャーニーの優れている点は、やはり顧客起点で、企業の部門の垣根を越えた形で、顧客体験を最適化・創出する設計ができる事です。

しかし、このメリット=「部門の垣根を超えた形」が、アクションプランに落とし込む段階では弱点にもなり得ます。従来からの日々の業務をこなしている中で、特定のミッションに向かって部門横断で業務を進める事が困難であることは無理もありません。

理想をいえば、カスタマージャーニーをもとに全社的にKPI体系を見直し、合意形成のもとで部門連携を推し進めたいところです。しかし、強力なトップダウンでの指令が無い限りは事を進めにくいのが現実です。

次の一手は収集データの「可視化」から

そこで、D4DRでは、カスタマージャーニーの次の一手として、「データの可視化」を推奨しています。

部門連係に関わらず、企業では何かしらのデータが蓄積されていて、比較的クイックに活用できるというメリットがあります。

一方で、この活用が意外とできていない企業が多く見受けられます。「データは活用している」という企業でも、実施した施策の効果検証として、スポット(短期、局所)的に数値を追いかけるだけで精一杯のケースが多いのが実際のところではないでしょうか。
データ活用にも戦略的な視点をもち、活用サイクルを検討していくと良いでしょう。

戦略的なデータ活用の視点(例)

・顧客の視点:カスタマージャーニー(コミュニケーション)の最適化
-顧客とのエンゲージメント強化
-効果の最大化
-リスクの最小化

・業務の視点:サービス提供プロセス(業務プロセス)の最適化
-ナレッジ共有
-効率の向上
-影響要因の可視化
-新しいセグメントの発見
そして、顧客データを可視化する事で、関係部門間でメリットを具体的な共有することもできます。
他部門の施策で得られた情報を自部門で「どう活用できるか」が具体的にイメージできると、次は自部門で得られた情報は他部門で「こう使える」と発想を繋げていく事ができます。

顧客ライフタイムバリュー(LTV)の向上には購買以降のデータを活用する

LTV向上を視野に入れると、従来の購買フェーズよりも、購買以降のデータの重要度が増してきます。
顧客のリピート購買・利用を促すのであれば、顧客に合った商品・サービスのレコメンドが求められます。また、エンゲージメントを
高めるのであれば、顧客の価値観を理解し、共感してもらえるコミュニケーションが必要です。

ここで実データでの活用イメージをみてみましょう。

併買傾向をもとに商品をレコメンドする

この併買分析の活用シーンは以下の通り、様々なチャネル(部門)でオファーに活用する事ができます。
・WEBサイト:LPO、レコメンド
・CRM:メールオファー、架電、マイページでの推奨
・販促:クーポン発行、サンプリングターゲット
・EC:LPO、レコメンド
・広告:ターゲット配信

インスタ投稿の利用シーンからコミュニケーションコンセプトを検討する

この結果も同様に、多くの部門でクリエイティブに活用する事ができます。
・広告宣伝:CM、動画、バナー
・WEBサイト/ECサイト:サイト内バナー
・販促:POP、店内ポスター、サイネージ
・マーケティング:ブランド戦略

既存データで活用サイクルを作る

データ活用を進めるために、まずは既存データを整備し、データ活用サイクルを作っていきます。
初期段階ではPoCとして、アドホックに試行錯誤を繰り返し、成功モデルを見出し、情報共有パターンを作っていきます。ある程度運用に乗ってきた段階で、ツールやシステムを導入して自動化・省力化を図り、最小限の人的リソースで成果を出しつつ、リソースの余力分で新たなチャレンジを行っていくような体制を作っていきます。

D4DRが考えるデータ活用サイクルで押さえておきたい視点

<戦略的な視点>
・顧客のセグメンテーション
・KPIの計測、再設計

<施策へのインプットの視点>
・ターゲットの発見(セグメントごとのポテンシャル)
・オファーの最適化(レコメンド、組み合わせ最適化など)

<エンゲージメントの視点>
・商品・サービスに対する評価、シーンの把握
・リテンションの促進(利用状況の把握、パーソナライズ)

(最初に戻ってサイクルを回す)

データの粒度は活用目的に合わせて調整

使用するデータは、理想を言えば顧客一人一人に紐ついている状態が望ましいですが、サンプリングデータや統計化データでも活用シーンがあります。例えば、アイトラッキングを活用して店舗の棚割りを最適化できるようになりましたが、店舗の棚割りはパーソナライズ出来る訳ではないので、顧客一人一人に紐つく情報ではなく、属性などのセグメント単位でリサーチを行った結果があれば問題ありません。

このように、活用目的ごとに必要なデータ粒度を整理しておくと、必要以上のコストや労力をかけなくても良くなります。一方で、現時点で収集可能なデータ粒度から、今達成できる事を再設定するという柔軟な視点も必要です。

まずは活用可能なデータを整理し、有意義かつスモールな単位でスタートできる事を見極めます。

まとめ

デジタルトランスフォーメーション時代のカスタマージャーニーは3要素の掛け算で再設計

・広さ:日々の生活シーンから購買後の利用シーンまで拡大
・厚み:オンラインだけではなく、オフラインシーンでも顧客体験を提供
・深み:顧客データを活用して、顧客体験を最適化

カスタマージャーニーの次の一手はデータ活用

・「データの可視化」により、具体的なメリットを確認・共有

顧客のライフタイムバリュー向上には、購買以降のデータ活用がキモ

・顧客の購買履歴、商品・サービスの利用状況や評価データを活用

データ活用サイクルで押さえておきたい視点は3つ

・戦略的な視点
・施策へのインプットの視点
・エンゲージメントの視点

データ活用サイクルは、まずは既存データで出来る範囲からスタート

・既存データをまずは整備。必ずしも顧客に紐ついていなくても良いケースもある

これらの視点を踏まえ、D4DRでは、デジタルトランスフォーメーション時代のデータ活用ソリューションを提案し、支援ています。

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Mikio Aaskawa

マーケティングエージェンシーや制作会社にて各種リサーチ・分析業務を経験した後、2009年よりD4DRのシニアアナリストとして、データドリブンのマーケティング支援に従事。現在はプリンシパルとなりプロジェクトリーダー兼アナリストとして、顧客視点で企業のマーケティング戦略立案や課題抽出、アクションプラン立案を支援している。

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