c-37 : 人間中心のまちづくり・都市構造の変容

スマートシティとモビリティの関係性とは?

MaaS(Mobility as a Service)などの新しい移動サービスや自動運転技術による次世代モビリティの登場で、既存の都市インフラでは対応に限界がくると予測されている。現在、世界各国で取り組みが始まっている新しい都市の形であるスマートシティでは、自動運転、MaaS、パーソナルモビリティ、ロボットなどを個人に最適化したサービスとして提供される。

自動車を中心として形成されていた都市が、スマートシティへと変容することで、都市の中心となる要素が、自動車から人へと変化する。人を中心として都市インフラが設計されるため、道路や駐車場などの活用方法が大きく変容する。

人間中心のまちづくり・都市構造の変容は、車中心の都市設計からの脱却を目指す世界的な潮流である。車道の一部を歩道や自転車道に転換したり、高速道路の地下化(例:ドイツ・デュッセルドルフ)によって地上空間を人々の活動に解放したりする取り組みが進んでいる。公共空間の再設計により、歩行者や環境に配慮したグリーンスローモビリティの概念も広がると予想される。

 

予想される未来社会の変化

  1. 道路・駐車場のあり方、居住エリアの設定など、都市の成立要件が変化する
  2. より安全で、環境負荷の少ない都市づくりが求められる
  3. 自動運転により、モビリティの活用用途が広がる(移動オフィスや飲食店等)
  4. 自動車メーカーは、製造からソリューション提供会社へと変容する

 

トレンド

ショッピングセンター「シャポー市川」における免許不要の近距離モビリティWHILL(ウィル)の無料でレンタル

出典:PR TIMES『「シャポー市川」で誰でも快適に買い物を満喫できる「WHILLモビリティサービス」を導入』

千葉県市川市のJR市川駅直結ショッピングセンター「シャポー市川」では、2025年2月18日より、免許不要の近距離モビリティ「WHILL(ウィル)」を無料でレンタルできる「WHILLモビリティサービス」が開始。このサービスは、高齢者や足腰に不安のある方々の館内移動を支援し、誰もが快適に買い物を楽しめる環境を提供することを目的としている。

利用者は、専用アプリ「WHILL Rental」を通じて、館内に設置されたWHILL Model C2(2台)を10:30〜17:00の間、無料でレンタルできる。アプリで機体のQRコードを読み取ることで解錠・施錠が可能で、貸出・返却手続きもスムーズに行える。利用条件として、体重115kg以下、着座時に足が足置きに届くこと、操作に必要な注意力を備えていることが求められる。

2024年6月に実施された実証実験では、利用者全員が「また利用したい」と回答し、半数以上が「普段より多くの場所を回れた」と述べるなど、回遊性の向上が確認された。

また、シャポー市川のテナントの70%以上が「WHILLの導入により新たな客層の来店が期待できる」と回答し、施設全体の活性化にも寄与している。

バルセロナのスーパーブロック

出典:朝日新聞GLOBE+『バルセロナで相次ぐ「スーパーブロック」とは?歩行者優先を追求したら実現した計画』

スペイン・バルセロナ市では、「スーパーブロック(Superilla)」と呼ばれる都市構造改革が進められている。これは複数の街区(通常9ブロック)を一つの大きな単位とし、その内部を自動車の通行から排除・制限し、歩行者や自転車、公共空間を優先するもの。

車の流入は周辺道路に限定され、内部は低速車両や住民車両のみに限定されることで、安全で静かな環境が実現する。

目的は都市の騒音・大気汚染の軽減、市民の健康向上、公共空間の質の向上にある。

2016年に導入された試験エリアでは、緑地の増加や通行量の減少により、地域住民の満足度が高まった。都市空間を人中心に再構成する先進的モデルとして、世界的に注目されている。

自動走行モビリティ「iino(イイノ)」

出典:PR TIMES『自動走行モビリティ「iino」、「TAKANAWA GATEWAY CITY」に導入開始 人・街・体験を一体化させた「街 × モビリティ」モデルを日本初展開』

東日本旅客鉄道が手掛ける高輪ゲートウェイ駅直結・都心最大級のエキマチ一体の街「TAKANAWA GATEWAY CITY」では、ゲキダンイイノ合同会社(関西電力株式会社100%子会社)の自動走行モビリティ「iino(イイノ)」が導入されている。

「TAKANAWA GATEWAY CITY」では、複数人乗車可能な5台(2025年3月時点)の「iino」がGatewayParkを中心に走行しており、自由に乗り降りすることができる。乗車時の目線の高さは立っている状態とほぼ同じなので、周囲の人とコミュニケーションもとりやすくなるのが特徴。

ルートによって、音声ガイドで街を紹介しながら周遊してくれたり、おすすめの乗り方や遊び方のポイントを紹介してくれるため、「TAKANAWA GATEWAY CITY」の魅力をより深く感じることができる。

さらに、環境への取り組みとして、再生可能エネルギー由来の水素を純水素燃料電池システムに供給して発電した環境にやさしい電気を充電等(一部のモビリティ)に使用しており、駅構内にあるモビリティスポット「&Mobility」では、充電の様子も見ることが可能。(一部の時間帯)


歩行者中心の街づくり「Sidewalk Lab」の構想

歩行者中心の街づくり「Sidewalk Lab」の構想
出典:TRONTIST「Civic Tech: The City of Toronto must remain a public platform」

自動運転車の普及に伴い、自動車優先の街づくりから、歩行者優先の街づくりへの転換が進むと考えられる。

カナダ・トロントの「Sidewalk Lab」による構想(諸事情により中止となった)では、「people first」をコンセプトとし、自家用車の保有率を下げて公共交通、自転車、徒歩による街づくりを目指していた。具体的には、テント式の屋根で道を覆うことで天候に関係なく歩きやすくしたり、歩道と車道の配分を自由に変更し路肩の用途を統御するシステムや、歩行者との接触を回避できる自動走行車のみが歩行者優先エリアに侵入できるシステムの導入が計画されていた。

トヨタ「Woven City」の4種類の道

トヨタ「Woven City」の4種類の道
出典:TOYOTA WOVEN CITY 公式サイトより

トヨタが静岡県裾野市に建設中の「Woven City」では、地上に自動運転車用の道、歩行者用の道、歩行者とパーソナルモビリティ用の道の3種類が整備される。地下には物流ネットワーク用の設備が配置され、人を中心とした複数の導線を設けることによって安全かつ効率的な移動を実現するとしている。

地下駐車場跡地の有効活用@パリ

地下駐車場跡地の有効活用@パリ
出典:FINDERS「パリの巨大地下駐車場が有機キノコ農場に大変身!違法行為が横行していた廃墟から新ビジネスが誕生」

自動運転車の普及とMaaSの拡大、歩行者中心の街への転換が進むことで自家用車の数が減り、駐車場の需要が減少すると考えられる。そのスペースを有効活用する取組が拡大するだろう。

フランスのスタートアップ企業「Cycloponics」は、使われなくなった地下駐車場を有機キノコ農場に変える事業を行っている。シイタケやヒラタケ、マッシュルームといったキノコや、フランスの珍味「チコリ」といった日光をほとんど必要としない野菜、ミニブロッコリーのような「マイクログリーン」と呼ばれる栄養素の高い幼葉野菜などを栽培する。

パリでは、1960~70年代に建てられた大規模マンションの地下駐車場の廃墟化・違法行為の横行が進んでいるということで、2010年代半ばにから市から地下空間の再構築計画を発表されている。専門家がこの空間に手を加え、飲食や文化が楽しめる市民向けのスペースへと改装を行っている。

 

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