c-32 : 超富裕層市場の拡大

超富裕層とは?

超富裕層とは、5億円以上の純金融資産保有世帯と定義される。野村総合研究所によると、日本の超富裕層は8.7世帯で、全世帯の0.16%の割合を占めている。超富裕層の割合は0.16%と限定的ではあるが、金融資産規模は97兆円であり、1世帯あたり約11億円の資産を持っており、経済活動に大きな影響を与えている。2013年以降、日本の富裕層、超富裕層の世帯数は年々増加しており、保有資産額も増加している。

超富裕層は、オールドリッチ(旧富裕層)とニューリッチ(新富裕層)に分類できる。オールドリッチとは代々の財産を受け継いできた富裕層で、メーカーや企業の経営者が多い。それに対し、ニューリッチとは、一代で成功した富裕層で、ベンチャー企業経営者や投資家が多い。

オールドリッチは、資産がある状態からスタートしており、資産を減らさないことを重視する保守的な傾向にある。また資産を受け継ぐ年齢が70~80代と高齢になることが多いため、消費や投資に対しては消極的である。一方で、ニューリッチは、資産が少ない状態からスタートしており、さらに資産を増やすたことを重視する進歩的な傾向にある。ニューリッチは、40~50代と比較的若い層が多く、より豊かな人生や社会を形成することに前向きで、消費や投資に対して積極的である。またITや金融等の新産業で資産を形成した人が多いため、新テクノロジー等に対する受容性が高い。

 

予想される未来社会の変化

  1. テクノロジーの進化により、今後は相対的にニューリッチが増えていく。
  2. 超富裕層の割合はさらに増え、一般層との二極化がさらに進む。
  3. 日本国内の超富裕層向けサービスは少ないため、市場の急拡大が見込まれる。
  4. グローバルな視点を持った富裕層が増え、提供サービスにも求められるようになる。
  5. 健康への関心が高く、先端医療の初期ターゲットは超富裕層となる。
  6. 高品質なサービスでありながら、時間の効率化を実現するサービスのニーズが高まる。

 

トレンド

国内超富裕層・富裕層の世帯数・純金融資産総額が過去最多に

出典:野村総合研究所「野村総合研究所、日本の富裕層は133万世帯、純金融資産総額は333兆円と推計

株式会社野村総合研究所は富裕層に関する調査を実施。超富裕層と富裕層をあわせた2019年の世帯数は132.7万世帯で、2017年から6.0万世帯増加している。超富裕層・富裕層の世帯数・純金融資産総額はいずれも、2013年から増加している。

 

富裕層をターゲットにした遠隔旅行の開発

超富裕層向けサービス:遠隔旅行
出典:TIME&SPACE「テレイグジスタンスで遠隔旅行! ロボット×VRで「感触」まで伝わる小笠原観光

JTBとKDDIは、テレイグジスタンス(遠隔存在)技術を活用して、東京から約1,000キロ離れた小笠原諸島を舞台に「小笠原村の観光資源の遠隔体験イベント」を実施した。遠隔旅行者は、頭や手にVR機器を装着し、小笠原にいる人型ロボットをコントロールすることで、ロボットを通じて視覚や聴覚、触覚を体験できる。そのため、その場に行かなくても旅行を楽しむことができる。

移動することなく気軽に旅行を体験することができるようになることは、忙しい日常を送る富裕層のニーズを満たすサービスとして支持される可能性がある。時間を効率化とリフレッシュが同時に実現できる遠隔旅行サービスは、富裕層から広がっていくことが考えられる。

 

プライベートジェットのシェアリング事業が開始

超富裕層向けサービス:プライベートジェットのシェアリングサービス
出典:レスポンス「ホンダ ジェット が1時間1600ドル、プライベートジェットもシェアする時代に」

2019年1月、シンガポールのJet It社は、アメリカでプライベートジェットのシェアリング事業を開始した。Jet Itは、ホンダジェット(小型ビジネスジェット機)を一時的に所有する機会を提供する。1時間当たり1,600ドル(約17万5000円)で、ホンダジェットを利用できる。業界で最速かつ最も費用対効果の高いプライベート輸送サービスとして期待されている。

プライベートジェットの完全所有には多額のコストが必要となる。Jet It社のプライベートジェット機シェアリング事業によって、コストを抑えながら、これまでのプライベートジェットと変わらない快適さを手に入れることができる。所有にこだわらないニューリッチの価値観にマッチするサービスとして普及していくと考えられる。

 

証券会社の富裕層向け会員制サロン「オルクドール」

超富裕層向けサービス:オルクドール
出典:東海東京証券「オルクドール」

東海東京証券は、富裕層向けの会員制サロン「オルクドール」を運営している。会員である富裕層は専任のコンサルタントと資産運用・相続・事業承継などについて相談できる場として活用できる。また、社交やくつろぎの場として、またネットワーク拡充の場としても活用できるように整備している。

オルクドール・サロンTOKYOでは、「アートコレクターの自宅にお招きする」をコンセプトに、国内外の作家によるアート作品29点を展示している。展示されているアートをきっかけに、サロンで知り合った顧客同士の話が弾むなど、顧客からの反響が高く、支持されている。想定を上回るペースで顧客数、預け入れ資産がともに拡大しており、現代アートが顧客獲得に大きく貢献している。

富裕層に限定した特別な空間やおもてなしを提供するサービスに対するニーズが日本国内でも高まっていくことが考えられる。顧客同士が繋がるコミュニティを提供することも他者との差別化として重要な要素に位置付けられる。

 

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