フィードバック④:粟飯原 理咲氏(アイランド株式会社 代表取締役社長)

NTTコミュニケーションズ株式会社先端ビジネス開発センタ、株式会社リクルート次世代事業開発室・事業統括マネジメント室勤務、総合情報サイト「All About」マーケティングプランナーを経て、2003年7月よりアイランド株式会社代表取締役。日経ウーマン誌選出「ウーマン・オブ・ザ・イヤー」2000年度ネット部門第1位、2003年度同賞キャリアクリエイト部門第6位受賞。

注目する「未来コンセプト」

c-26 可処分時間の増大 自己裁量時間の増加

料理をいかに時短で簡単に、節約して済ませるかというハックのマーケットが伸びていて、可処分時間を増やすための食に関するツールの市場もすごく伸びると思っています。私たちは年に一度「トレンド料理ワード」として、ユーザーさんが日々検索しているワードからその年のトレンドを選んで発表しているのですが、ここ数年は自動調理家電がずっと上位にあります。

一方で、AIやロボットでいろいろなものが自動化されて可処分時間が増えると、できた余裕でスパイスからカレーを作ってみようとか、美味しいケーキの作り方を追求してみようといった、プロセスや完成度を楽しむような、ホビーやアートとしての料理の世界もすごく伸びてくると思っています。



二つの潮流がそれぞれ伸びているんですね。完全に自動で料理が作れたり、冷凍食品をロボットが自動で配達して冷蔵庫の中まで届けてくれるようなサービスもこれから出てくるでしょう。

d-10 自給自足生活者

自給自足生活とまではいかなくても、ゆる自給自足、ミニ自給自足のような形で、生活の一部を自分で担うことによって満足感や安心感を得たい人が増えてきていると感じます。また、育てるプロセス自体を楽しむという面もあると思います。自給自足生活は、昔はすごく大変で覚悟が必要でしたが、都市・郊外生活者が気軽にできるようなIoTなどのデジタルツールが出てきた結果さらに伸びる分野ではないかと思います。



コロナ禍で家庭菜園を始める人が増えたことを感じます。サーキュラー・エコノミー的な考え方から自給自足的な生活を志向するほかに、戦争、物価の上昇といった社会環境を鑑みて、自己防衛のためにという人も多いのかもしれません。

d-13 マルチハビテーション

マルチハビテーションによって関係する土地が増えることで個人の食体験が豊かになるということもありますし、多様な価値観の人との関わりが増えることによる食への影響も大きいと思います。コロナの後には、多拠点生活者の中に海外の方も増えて、まだ日本で馴染みのないエリアの料理の浸透が加速するのではないでしょうか。もともと日本ではいろいろな文化の料理を取り入れることがすごく得意ですからね。一方で、ある土地でしか体験できない食によって、そこに行くこと自体がプレミアムになることも増えると思います。



「地のもの」がよりプレミアムになってくるということですよね。地産地消でフードマイレージが小さいものを食べようといった観点からも、多拠点で生活する人が増えると地元の食を求める人が増えるので、いい流れになるかもしれません。

追加したほうが良いと考える「未来コンセプト」

「プロセスエコノミー」

作る過程を公開して、そこにすごく価値があるということを生活者に知ってもらうことによって応援消費が広がるので、プロセスを開示すること自体がビジネスになっていくと思います。これからの企業は、企業の中では当たり前だと思っているSDGs視点や、製品を作る過程で大事にしている視点をいかに開示して、応援してもらったりファンになってもらうことでブランドを育てていくことが大事になると考えています。生活者も知らないと応援できないし、消費もできないという時代になるのではないでしょうか。


今後もさらに多くの有識者の方々より「未来コンセプトペディア」に対するご意見をいただき、進化を続けていく予定です。乞うご期待ください!