BMI・脳と機械の接続とは?
BMI(BrainMachineInterface)とは、脳と機械をつなぎ、直接信号をやり取りする技術を指す。米国ではBCI(BrainComputerInterface)と呼ばれることも多い。
BMIは、信号をやり取りする方向によって、出力型と入力型に分けられる。出力型BMIは、脳信号を利用して機器を操作するもので、入力型は感覚信号を電気信号にコーディングして脳に刺激を与えて感覚を得るものである。現在は情報が一方向に流れる片方向インターフェースのみが実現しつつあるが、脳と機械の双方向の情報のやり取りが可能な双方向インターフェースも実現する可能性がある。
また、信号のやり取りのルートを確保するために手術が必要かどうかで、大脳皮質に電極を埋め込むインプラント型(侵襲型)と、脳の外から磁気信号などを読み取る装着型(非侵襲型)に分けられる。侵襲型BMIでありながら、ロボットを活用して手術のリスクを低減し、ユーザーが持ち帰って自分で操作できるほどの手軽さを備えたシステムなどが開発されている。
まずは医療分野での侵襲型BMIの活用が進み、その後日常生活で装着可能なデバイスが手軽に利用できるようになれば、医療の領域にとどまらず、睡眠や幸福度のマネジメントといった日常生活の質の向上や、エンタメ、教育など様々な分野での活用が期待される。
予想される未来社会の変化
- 脳の認知機能や記憶力を外部デバイスで補完・強化できるようになり、人間の知的能力が拡張される
- 多人数の脳内データが蓄積され、集合知が誕生する
- 言語を介さない直接的な意思疎通が実現し、コミュニケーションの形が劇的に変化する
- 機械と人の境界を曖昧化させ、生物の意味・生の意味が再定義される
トレンド
脳卒中による麻痺患者に向けたBMI技術

LIFESCAPESは、脳卒中による重度の手指麻痺患者向けに、脳波を活用したリハビリ機器「医療用BMI(手指タイプ)」を開発。この装置は、患者が「手を動かしたい」と思った際の脳活動を検出し、電動装具を通じて実際に手指を動かすことで、脳の可塑性を促し、運動機能の回復を支援する。
2024年6月の販売開始以降、全国の回復期リハビリテーション病院で導入が進み、400例以上の臨床実績がある。
さらに、在宅での使用を想定した簡易型BMIデバイスの開発も進行中で、患者が自宅で継続的にリハビリを行える環境の整備を目指している。
この取り組みは、東京都の「未来を拓くイノベーションTOKYOプロジェクト」にも採択され、国内外での展開が期待されている。
埋め込み型BMI

大阪大学発のスタートアップ企業JiMEDは、重度の神経疾患や外傷により身体を動かせず意思伝達も困難な「閉じ込め状態」の患者向けに、ワイヤレスの埋め込み型ブレイン・マシン・インターフェース(BMI)医療機器を開発している。
この取り組みは、公益財団法人PwC財団の「2024年度春期 人間拡張」助成事業に採択され、1,000万円の支援を受けている。
JiMEDのBMIは、頭蓋骨と脳の間に薄いシリコン型の電極を挿入し、外部からのワイヤレス給電で脳波を取得・解析し、パソコンやロボットアームなどの外部機器を操作できる仕組みです。
この技術により、患者は「動かしたい」と思うだけで機器を操作でき、視線入力に代わる新たなコミュニケーション手段として期待されている。
手術は2~3時間程度で、保険適用後の患者負担は10万~30万円と見込まれている。
現在、治験の開始に向けて準備が進められており、将来的には患者のQOL向上や介護者の負担軽減が期待されている。
北脳2号

「北脳2号」は、中国が開発した先進的な侵襲型ブレイン・マシン・インターフェース(BMI)システムで、脳信号を高精度に読み取り、機械制御などに活用することを目的としている。
生体適合性の高いフレキシブル電極を採用し、脳へのダメージを抑えつつ、神経インパルスを高密度かつ安定的に取得できる。
さらに、高速なデータ処理回路と「生成型ニューロ解析アルゴリズム」により、取得した脳信号をリアルタイムで外部機器の制御指令に変換する能力を持つ。
実証実験では、サルが思考だけで2次元カーソルを操作することに成功し、国際的にも注目された。
今後は、重度障害者の意思伝達支援や神経義手・義足の制御など、医療応用が期待されており、「北脳2号」は中国のBMI研究の重要なマイルストーンとなっている。
・イーロン・マスク氏が創業したNeuralink社は、脳で思考すると文字入力ができるBMIシステムの開発を目指している。
脳直結型装置 「 LINK V0.9 」と、それを脳に埋め込むための外科手術用のロボットを発表。LINKを移植したブタによるデモが行われた。
2021年4月には、「N1 Link」を脳に埋め込んだマカクザルが、ゲームのコントローラーを使わずに、脳だけでお気に入りのゲームをプレイする動画を公開した。LINKは、2020年7月に米国の食品医薬品局(FDA)による医療端末としての認定を受けており、人への移植に向けた準備が進んでいる

・BMI技術は医療業界で注目を集めており、特に日本では下記3つの領域で有望視されている
①身体機能の代替 ②脳・身体機能の回復促進 ③精神・神経疾患等の治療
・人間の意識をコンピューターにアップロードする「脳全体のエミュレーション」はすでに技術的に可能となっている。
アメリカのNectome社は脳に防腐処理し、数千年保存することが可能で、残された脳をスキャンして、コンピューターシミュレーションして再生させられるという
・従来のBMIは、脳から機械への方向が一般的であったが、機械から脳への出力も可能にする双方向的なBMIの研究が進んでいる。これにより、ロボットアームの操作パフォーマンスを大幅に改善することが可能である。
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