都道府県別 観光客の動向調査 (Twitterビッグデータによる行動変化のSNS分析) 第14回 2021年11月

47都道府県の動向

 D4DRでは、観光地への往来が回復し、産業として復興するよう応援・確認する目的から、20年10月より47都道府県ごとのSNS上の観光話題の動向を定点モニタリングしている(対象のソーシャルメディアはTwitter、主に話題量の変化から状況を分析している)。過去の公開記事一覧はこちら

都道府県別 旅行・観光話題量の変化(前年同月比)

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一日の感染者数が過去最高に達した21年8月
東京オリンピック開催中でも宿泊数の改善は見られず

 前月同様、まずは観光庁における都道府県別宿泊者の統計データを確認する。21年8月の宿泊者数は前年に比べて118.5%と前月の138.6%から若干の後退が確認された。お盆休みや夏休みなどから、本来は宿泊数が多くなる8月だが、本年は緊急事態宣言対象地域が拡大され、感染者数が増加し続けたことも影響したようだ。またコロナ禍前で最も宿泊数が多かった19年の8月と比較すると、宿泊数は半分に満たなかった。

図1 日本全国 宿泊者数推移

様々な規制が解除・緩和された21年10月の観光話題量は?
Twitter上の47都道府県別の観光話題量を比較

 続いて、前回同様1か月に観光話題(”47都道府県名”、及び”観光”または”旅行”のキーワードを含むツイート ※拡散によるBuzzを排除する為リツイートは除外)が多くみられた都道府県を分析。 21年9月から10月の主要な関連動向は、以下となる。

■9月
 ・東京パラリンピック閉会式(9/5)
 ・全国知事会による、行動制限の緩和を危惧した提言(9/11)
 ・9月末まで19都道府県を対象に緊急事態宣言が延長(9/12)
 ・国内のワクチン2回の接種率が50%を超える(9/13)
 ・全ての地域を対象に緊急事態宣言及びまん延防止等重点措置の解除が決定(9/28)
 ・全国の感染者数が1,574人まで低下(9/30)

■10月
 ・解除後初の週末、多くの地点で前4週平均より外出人数増(10/2)
 ・今年初東京都の感染者数が100人を下回る(10/4)
 ・飲食店への時短要請が全面解除(10/25)
 ・ワクチン2回摂取済が全人口の70%を超える(10/26)
 ・1週間の平均感染者数が264人と過去最小水準(10/29)

 10月の話題量上位の都道府県をみると、トップ10はすべて前月の話題量を上回り、大幅に話題量が増加していた。特に沖縄や東京、大阪は前月みられた大きな観光話題減少から回復しており、感染者数が順調に減少していることも相まって、人々が観光や旅行に対して目を向けやすい状況になったと言える。

図2 話題量上位10都道府県(21年10月、9月)

感染者数増加でも観光促進政策を強行した20年10月との比較
観光話題量は回復傾向にあり

 次に、季節要因による増減を排除して考察する目的から、前年の同月と比べて観光の話題発生の減少が大きい、特に課題のみられる都道府県を確認。21年10月の前年同月比ワースト10の都道府県を調査した(図3)。

 前年同月比ワースト1位は前月に引き続き東京(78.4%)、2位は静岡(85.9%)、3位は大分(88.1%)であった。東京以外はすべて8割以上となり、改めて話題量は回復傾向にあると言える。
 また2ヶ月連続でワースト1位となった東京について、GoToキャンペーン開始当初の20年9月や10月は感染者数の多い東京からの来訪を危惧する声も話題の一部を占めていたが、現在ではこうした感染起因の話題が落ち着いたことが話題量低下の大きな要因と考えて良さそうだ。

図3 話題量前年同月比ワースト10(21年10月、9月)

 

 参考までに図4では21年10月の話題量(縦軸)と前年同月比(横軸)の関係をマッピングしている。前年同月比100%を上回る都道府県数は31で、前回の21から大幅に回復する結果となった。なお、前年同月比がワースト10の都道府県を赤字で示している。

図4 話題量(縦軸)×前年同月比(横軸)(21年10月)

緊急事態宣言が全面解除された21年10月
観光客量に対する話題量にはまだ大きな変化は確認されず

 別の視点として、話題から各都道府県への観光客の「戻り」を把握するため、19年の平均観光話題量上位10都道府県初回記事にて選出)を対象に、客足のボリュームの印象に言及した内容に絞った調査も行っている(図5、 “都道府県名”、及び”観光客”または”旅行客”、併せて”多い””少ない”のキーワードを含むツイート ※拡散によるBuzzを排除する為リツイートは除外 )。引き続き“多い”の出現量と比率から、回復状況を分析していくダウンロード資料では全都道府県掲載!

※例:次のようなツイートを調査

図5 観光客・旅行客量の言及出現数(19年観光量上位10都道府県)

 宣言解除後も順調に感染者数が減少し続け、行動制限も緩和されはじめた21年10月だが、観光客量に対するツイート量にはあまり変化がみられなかった。殆どの地域で「多い」が若干増加しているものの、沖縄県では「多い」が先月の半分にまで減少している。以前のような状態になれば「多い」が増加することが見込まれ、今後も動向を注視していく必要がありそうだ。
 21年10月には以下のようなツイートがみられた。

 11月現在は感染者数がリバウンドすることもなく、東京都の感染者数が一桁台になる日も増えるなど、感染者数の押さえ込みは順調に続いている。また来月より、ワクチンを2回接種後からおおむね8か月以上がたった対象者の中から希望者に対して3回目のワクチン接種が始まる予定だ。

 加えて政府からはワクチン接種の状況などを慎重に見極めた上で、来年1月下旬からGoToトラベルの再開も正式に発表された。他にも、大規模イベントや飲食店等の行動制限緩和の具体案もまとまるなど、ワクチン接種をキーとして様々な施策が練られている。しかし、オミクロン株の感染拡大など、先に感染収束に至っていた海外では再び感染が拡大している国も確認されているため、多くの旅行者からは今後もリバウンド防止やリスクを意識しながらメリハリをつけて行動することが安全に旅行を楽しむための近道と捉えられそうだ。D4DRでは引き続き、月1回Twitterを対象に前月分の定点調査結果を公開し、数値から復興の動向を継続的に分析していく。

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Ichiko Oki

ソーシャルメディア分析を専門領域に、投稿をもとにした実践的な生活者のインサイト抽出・提案を得意とするデータアナリスト。2018年11月よりD4DR 札幌リサーチセンター開設・室長。

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