都道府県別 観光客の動向調査 (Twitterビッグデータによる行動変化のSNS分析) 第11回 2021年8月

47都道府県の動向

 D4DRでは、観光地への往来が回復し、産業として復興するよう応援・確認する目的から、20年10月より47都道府県ごとのSNS上の観光話題の動向を定点モニタリングしている(対象のソーシャルメディアはTwitter、主に話題量の変化から状況を分析している)。過去の公開記事一覧はこちら

都道府県別 旅行・観光話題量の変化(前年同月比)

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緊急事態宣言下の21年5月の宿泊数は2か月連続で減少していた

 前月同様、まずは観光庁における都道府県別宿泊者の統計データを確認する。21年5月の宿泊者数は、コロナ禍で最も宿泊数の少なかった前年・20年5月と比較すると263.0%と大幅に増加していた。しかし、コロナ前の同時期(19年5月)との比較では4割を下回っている(39.8%)。行楽シーズンながら前月(21年4月)の宿泊者数からも減少しており、5月の時点では宿泊者数の回復は見えていない(図1)。

図1 日本全国 宿泊者数推移

東京五輪の開催と4連休を含む21年7月の観光話題量は?
Twitter上の47都道府県別の観光話題量を比較

 続いて、前回同様1か月に観光話題(”47都道府県名”、及び”観光”または”旅行”のキーワードを含むツイート ※拡散によるBuzzを排除する為リツイートは除外)が多くみられた都道府県を分析。 21年6月から6月の主要な関連動向は、以下となる。

■6月
 
・7月中~下旬を目処に紙書面でのワクチンパスポート導入を発表(6/17)
 ・東京など7都府県での、緊急事態宣言の解除とまん延防止等重点措置への移行(6/20)
 ・国内感染者数が再び増加傾向(1,779人/日)(6/23)
 ・ワクチンの職域接種が一時休止(6/26)
 ・都内のほとんどの地域で公道での聖火リレー実施中止(6/29)

■7月
 ・大半の会場におけるオリンピックの無観客開催決定(7/9) 
 ・東京に4度目の緊急事態宣言発出(7/12)

 ・祝日移動で設定された4連休に観光客の増加が報道(7/22)
 ・東京五輪の開会式・開幕(7/23)
 ・1日の全国新規感染者数が初の1万人超(7/29)
 ・1府3県(大阪と首都圏)への緊急事態宣言追加発出、他5地域でまん延防止等重点措置の適応決定(7/31)

 7月の話題量上位をみると、前月から話題量が全体的に増加していた。日別推移を確認したところ、東京五輪期間にあてた祝日移動によって設定された7/22からの4連休に話題のベースが伸びており、以降も連休期間の観光動向の話題が継続していた。連休に行楽客が集中した20年11月と傾向が共通し、トップとなった東京では前月比およそ150%に増加していた。

図2 話題量上位10都道府県(21年7月、6月)

GoToトラベルがスタートした20年7月との観光話題量比較
期待と懸念が集中した前年の話題量には及ばない

 次に、季節要因による増減を排除して考察する目的から、前年の同月と比べて観光の話題発生の減少が大きい、特に課題のみられる都道府県を確認。21年7月の前年同月比ワースト10の都道府県を調査した(図3)。

 前年同月比ワースト1位は岩手で26.0%、2位は東京で39.7%、3位は神奈川で59.0%であった(20年7月は初めてGoToトラベルが開始され、大幅に話題量が増加していたことが影響)。特に東京では前月比では150%と、昨冬以降の観光話題量推移では高いボリュームを獲得しながら、前年同月比では40%にとどまった。また岩手や神奈川も同様に前年に突発的な話題量増加がみられたことによる結果であった。

図3 話題量前年同月比ワースト10(21年7月、6月)

 

 参考までに図4では21年7月の話題量(縦軸)と前年同月比(横軸)の関係をマッピングしている。前述のとおり、緊急事態宣言等の規制もなくGoToトラベルが期待と不安の中スタートした20年7月との比較となったことから、前年同月比100%を上回る都道府県数が16と約3割にとどまった。なお、前年同月比がワースト10の都道府県を赤字で示している。

図4 話題量(縦軸)×前年同月比(横軸)(21年7月)

祝日移動にともなう4連休の混雑が報道された21年7月は
観光客についての言及量が全体的に増加

 別の視点として、話題から各都道府県への観光客の「戻り」を把握するため、19年の平均観光話題量上位10都道府県初回記事にて選出)を対象に、客足のボリュームの印象に言及した内容に絞った調査も行っている(図5、 “都道府県名”、及び”観光客”または”旅行客”、併せて”多い””少ない”のキーワードを含むツイート ※拡散によるBuzzを排除する為リツイートは除外 )。引き続き“多い”の出現量と比率から、回復状況を分析していくダウンロード資料では全都道府県掲載!

※例:次のようなツイートを調査

図5 観光客・旅行客量の言及出現数(19年観光量上位10都道府県)

 4度目の緊急事態宣言が発出されて連日外出自粛を求めるメッセージが出される中で、祝日移動で4連休が設定され、予定通り東京オリンピックが開催されたことに疑問や違和感を示す声もみられた21年7月、観光客についての言及量は全体的に増加していた。特に沖縄県では”多い”の出現数は顕著となっていた。
 21年7月には以下のようなツイートがみられた。

 従来より感染力の高いデルタ株の増加により、東京を含めた多くの地域で緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が適用され、本記事を執筆している8月29日の時点では17都道府県に緊急事態宣言が拡大されている。

 一方直近8月27日の時点で、2回のワクチン接種完了の割合は未だ国民全体の43.5%にとどまり、感染者数も顕著な低下傾向まではみられていないことから、観光や旅行を促しにくい状態にある。この第5波が収束した後は、ワクチンパスポート等を効果的に使用することで日本の観光事業がどの程度早急に回復できるかにも注目が集まる。D4DRでは引き続き、月1回Twitterを対象に前月分の定点調査結果を公開し、数値から復興の動向を継続的に分析していく。

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Ichiko Oki

ソーシャルメディア分析を専門領域に、投稿をもとにした実践的な生活者のインサイト抽出・提案を得意とするデータアナリスト。2018年11月よりD4DR 札幌リサーチセンター開設・室長。

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