都道府県別 観光客の動向調査 (Twitterビッグデータによる行動変化のSNS分析) 第8回 2021年5月

47都道府県の動向

 D4DRでは、観光地への往来が回復し、産業として復興するよう応援・確認する目的から、20年10月より47都道府県ごとのSNS上の観光話題の動向を定点モニタリングしている(対象のソーシャルメディアはTwitter、主に話題量の変化から状況を分析している)。過去の公開記事一覧はこちら

都道府県別 旅行・観光話題量の変化(前年同月比)

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2月の宿泊数は前年の47%と未だ低水準
9都府県が緊急事態宣言下にあった

 前月同様、まずは観光庁における都道府県別宿泊者の統計データを確認する。全国的な感染再拡大は1月中の収束には至らず、2度目の緊急事態宣言は21年2月も9都府県で継続された。宿泊数が前年比4割と更に減少した1月との比較では、2月は前年の47.1%と増加に転じたが、コロナの影響のなかった19年2月との比較では、引き続き4割にとどまる(図1)。

図1 日本全国 宿泊者数推移

3月・4月ともに緊急事態宣言下、明確な話題量回復は見られず
Twitter上の47都道府県別の観光話題量を比較

 続いて、前回同様1か月に観光話題(”47都道府県名”、及び”観光”または”旅行”のキーワードを含むツイート ※拡散によるBuzzを排除する為リツイートは除外)が多くみられた都道府県を分析。 21年3月から4月の主要な関連動向は、以下となる。

■3月
 ・1都3県を対象に、緊急事態宣言の2週間延長発表(3/5)
 ・東京都(靖国神社)で桜開花を確認(3/14)
 ・12の都府県で合わせて150人/週が変異ウイルスに感染(3/23)
 ・4月以降の地域観光事業支援の検討発表(3/26)
 ・大阪府がまん延防止等重点措置の適用を国に要請(3/29)
■4月
 ・世田谷区・八王子市で高齢者へのワクチン接種開始(4/12)
 ・4都府県を対象に3度目の緊急事態宣言発出(4/25)
 ・新型コロナウイルスによる死者数が1万人を超える(4/26)
 ・大阪 兵庫 京都で8割超、東京で5割超の陽性者の変異ウイルスへの感染を確認(4/28)
 ・大型連休の開始(4/29)

 4月の話題量上位をみると、全体的に前月より話題量が減少しており、明確な話題量回復は確認されなかった。(沖縄のキャンペーン関連ツイートや修学旅行の行先など、3月は突発的な話題が多かった)

図2 話題量上位10都道府県(21年3月、4月)

初回の緊急事態宣言下の20年4月との観光話題量比較
概ね前年の話題量からは回復の兆しが確認

 次に、季節要因による増減を排除して考察する目的から、前年と比べて観光の話題発生の減少が大きい、特に課題のみられる都道府県を確認。21年4月の前年同月比ワースト10の都道府県を調査した(図3)。

 前年同月比ワースト1位は大分で10.4%、2位は石川で25.2%、3位は鳥取で48.4%であった(岩手までの下位6県は20年4月当時、感染者が少なかったなどの理由で一時的に観光来訪についての話題量が増えたため、比較して低い比率となった)。それらを除いた北海道、鹿児島などで、初回の緊急事態宣言下であった20年4月と比較しても70~80%の話題量にとどまる都道府県が一定数確認された。

図3 話題量前年同月比ワースト10(21年3月、4月)

 

 参考までに図4では21年4月の話題量(縦軸)と前年同月比(横軸)の関係をマッピングしている。初回の緊急事態宣言下との比較となる今回は、前年同月比100%を上回る都道府県数が26と、過半数の55%を占めた(ピンクのエリアの都道府県増加を確認し、回復度をみていく)。なお、前年同月比がワースト10の都道府県は引き続き赤字で示している。

図4 話題量(縦軸)×前年同月比(横軸)(21年4月)

観光客が”多い”とする言及量は前月から横ばい
観光地ではGW前半に一定量の言及も確認

 別の視点として、話題から各都道府県への観光客の「戻り」を把握するため、19年の平均観光話題量上位10都道府県初回記事にて選出)を対象に、客足のボリュームの印象に言及した内容に絞った調査も行っている(図5、 “都道府県名”、及び”観光客”または”旅行客”、併せて”多い””少ない”のキーワードを含むツイート ※拡散によるBuzzを排除する為リツイートは除外 )。引き続き“多い”の出現量と比率から、回復状況を分析していくダウンロード資料では全都道府県掲載!

※例:次のようなツイートを調査

図5 観光客・旅行客量の言及出現数(19年観光量上位10都道府県)

 ほとんどの都道府県で”多い”の話題量、”多い””少ない”の比率ともに大きな変化はなく、観光立県をはじめ本格的な観光回復には未だ時間がかかることが予想された。

 もっとも初回の緊急事態宣言下だった前年のGWとは異なり、3回目の緊急事態宣言下で感染拡大の対策期間に観光を行う様子も一部で確認され、GW前半を中心に、以下のようなツイートがみられていた。

 5月23日には沖縄も緊急事態宣言対象地域に追加され、これで10都道府県が再び緊急事態宣言下となった。5月26日時点では、5月末での宣言解除は難しく、6月20日頃までの延長も視野に入ると報道されている。

 ワクチンの大規模接種も開始されたが、日本の全国的な接種率はまだ9%にとどまっている。加えて五輪開催までの感染拡大抑制が優先されれば、ワクチンが浸透した、安全な状態での観光支援施策が投入再開される時期は早くても秋以降になるだろう。D4DRでは引き続き、月1回Twitterを対象に前月分の定点調査結果を公開し、数値から復興の動向を継続的に分析していく。

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Ichiko Oki

ソーシャルメディア分析を専門領域に、投稿をもとにした実践的な生活者のインサイト抽出・提案を得意とするデータアナリスト。2018年11月よりD4DR 札幌リサーチセンター開設・室長。

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