都道府県別 観光客の動向調査 (Twitterビッグデータによる行動変化のSNS分析) 第12回 2021年9月

47都道府県の動向

 D4DRでは、観光地への往来が回復し、産業として復興するよう応援・確認する目的から、20年10月より47都道府県ごとのSNS上の観光話題の動向を定点モニタリングしている(対象のソーシャルメディアはTwitter、主に話題量の変化から状況を分析している)。過去の公開記事一覧はこちら

都道府県別 旅行・観光話題量の変化(前年同月比)

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20日で緊急事態宣言が解除された21年6月も宿泊数回復はみられず
4月から3か月連続の減少となった

 前月同様、まずは観光庁における都道府県別宿泊者の統計データを確認する。21年6月の宿泊者数は137.6%と前年同月の宿泊数を上回るが(初の緊急事態宣言が解除された20年6月との比較)、コロナ前の同時期(19年6月)との比較では依然4割強で、少ない水準にとどまっている(42.8%)。また、21年4月からの減少が続いており、6月も宿泊者数の回復は見えていない(図1)。

図1 日本全国 宿泊者数推移

緊急事態宣言下で夏休み・お盆を迎えた21年8月の観光話題量は?
Twitter上の47都道府県別の観光話題量を比較

 続いて、前回同様1か月に観光話題(”47都道府県名”、及び”観光”または”旅行”のキーワードを含むツイート ※拡散によるBuzzを排除する為リツイートは除外)が多くみられた都道府県を分析。 21年7月から8月の主要な関連動向は、以下となる。

■7月
 ・大半の会場におけるオリンピックの無観客開催決定(7/9) 
 ・東京に4度目の緊急事態宣言発出(7/12)
 ・祝日移動で設定された4連休に観光客の増加が報道(7/22)
 ・東京五輪の開会式・開幕(7/23)
 ・1日の全国新規感染者数が初の1万人超(7/29)
 ・1府3県(大阪と首都圏)への緊急事態宣言追加発出、他5地域でまん延防止等重点措置の適応決定(7/31)

■8月
 ・知事会から国へ“都道府県またぐ移動”の中止・延期呼びかけの提言(8/1) 
 ・ワクチン2回接種後の行動制限の緩和検討表明(8/3)

 ・東京五輪の閉会式・開幕(8/8)
 ・「宣言」対象地域の百貨店地下売り場への入場制限の部分的導入開始(8/13)
 ・お盆の帰省、Uターンにおける大きな混雑無しと伝える報道(8/15)
 ・20日からの「緊急事態宣言」「重点措置」対象拡大と期限延長の決定(8/17)
 ・国内のワクチン2回の接種率40%に到達(8/27)

 8月の話題量上位の都道府県をみると、 沖縄で増加(前月比121%)、京都で減少傾向(同90%)が確認されたものの、他は7月からの大きな変化はみられなかった。(念のため、日別の話題量を算出してボリュームの推移も確認を行ったが、本年はいずれの都道府県でも、お盆期間に観光話題量の顕著な増加はみられていなかった)

図2 話題量上位10都道府県(21年8月、7月)

過去最低の新幹線利用率と報じられた20年8月との観光話題量比較
今後への期待を窺わせる内容も徐々に増加

 次に、季節要因による増減を排除して考察する目的から、前年の同月と比べて観光の話題発生の減少が大きい、特に課題のみられる都道府県を確認。21年8月の前年同月比ワースト10の都道府県を調査した(図3)。

 前年同月比ワースト1位は岩手で65.6%、2位は鳥取で72.0%、3位は長崎で72.3%であった(岩手を除き70%台となり、60%台の多かった前月から一定の改善)。投稿内容には、行きたかった、(感染状況から旅行を)取り止めたという声も多く含まれることから、制限が解除された際には、観光客の増加も期待される。

図3 話題量前年同月比ワースト10(21年8月、7月)

 

 参考までに図4では21年8月の話題量(縦軸)と前年同月比(横軸)の関係をマッピングしている。前年同月比100%を上回る都道府県数は非観光立県を中心に21で、前回の16から改善。下回る都道府県も、多くが80%以上に集中した。なお、前年同月比がワースト10の都道府県を赤字で示している。

図4 話題量(縦軸)×前年同月比(横軸)(21年8月)

交通機関に例年の混雑なしと報道された21年8月
他の時期と比較した文脈で観光客が多いと捉える内容が増加

 別の視点として、話題から各都道府県への観光客の「戻り」を把握するため、19年の平均観光話題量上位10都道府県初回記事にて選出)を対象に、客足のボリュームの印象に言及した内容に絞った調査も行っている(図5、 “都道府県名”、及び”観光客”または”旅行客”、併せて”多い””少ない”のキーワードを含むツイート ※拡散によるBuzzを排除する為リツイートは除外 )。引き続き“多い”の出現量と比率から、回復状況を分析していくダウンロード資料では全都道府県掲載!

※例:次のようなツイートを調査

図5 観光客・旅行客量の言及出現数(19年観光量上位10都道府県)

 4度目の緊急事態宣言下で予定通り東京オリンピックが閉幕を迎えた21年8月、お盆の交通機関も例年の混雑には至らなかったものの、コロナ禍の前年8月や他の時期と比較して、観光客が多いとする言及が各地でみられていた。感染者拡大のピークでもあり、依然不安をともなう書き込みが多い状況ではあるが、ワクチン接種が進んだこともあり、一部の観光客の行動にはこれまでと変化がみられている格好だ。21年8月には以下のようなツイートがみられた。

 本記事を執筆している9月29日の時点では必要な回数の接種完了者が約57%と、ワクチンの接種が急速に進んだこともあり、全国の感染者数や重症者数、病床使用率は大幅に低下。感染拡大状況を示すステージも下がり、30日には全都道府県の緊急事態宣言解除が予定されている。

 加えて10月からは、政府による行動制限緩和に向けた全国10か所程度での実証実験も行われると報じられており、大阪の一部エリアやすすきのなど具体的な対象地域や内容も明らかになり始めた。海外でみられる、陰性証明書やワクチン接種済み証明書等の、観光事業における効果的な使用に、注目と期待が高まっている状況だ。D4DRでは引き続き、月1回Twitterを対象に前月分の定点調査結果を公開し、数値から復興の動向を継続的に分析していく。

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Ichiko Oki

ソーシャルメディア分析を専門領域に、投稿をもとにした実践的な生活者のインサイト抽出・提案を得意とするデータアナリスト。2018年11月よりD4DR 札幌リサーチセンター開設・室長。

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