RPA市場レポート - AIを取り込み領域拡大と専門特化へ
日本のRPA市場は、人口減少や人手不足、業務効率化・DX推進へのニーズを背景に年10%超の成長を続け、2025年には1,183億円規模に達する見通しです。
RPAは定型業務の自動化によるコスト削減・品質向上に加え、AI連携で非定型業務や判断業務にも対応範囲を拡大。今後はクラウド型やサブスクリプション型の普及、AIとの融合による業務プロセス全体の最適化が進み、企業の競争力強化とイノベーション創出の基盤になると予想されます。
本記事では、RPA業界市場レポートとして、日本企業が抱える課題を解決する一つの有効な手段としてRPAに着目し、その導入効果、主要企業の提供製品、今後の注目点をまとめていますので、ご参考としてください。
日本産業全体に共通するリスク・課題とRPA導入の潮流
日本は急速な少子高齢化と人口減少に直面しており、特に生産年齢人口(15~64歳)が大幅に減少しています。ベビーブーム世代の大量定年退職も重なり、企業は深刻な労働力不足に直面しています。このままでは企業の生産性低下や経済成長の鈍化が避けられず、社会保障費の増大や税収減少など、国全体の競争力低下リスクも高まっています。
こうした構造的課題を受け、企業では以下のようなテーマへの取り組みを進めています。
- グローバル市場での競争力強化
- 人的資本の有効活用
- 単純労働からの解放と付加価値業務へのシフト
- 柔軟な働き方・多様な人材活用
その取り組みの中で、RPA(Robotic Process Automation)は、これらの社会的・経済的要請に応えるデジタル変革の中核技術として注目されています。
企業が抱える業務課題
日本企業が抱える主要な業務課題は以下の通りです。
- 人手不足による業務停滞・残業増加
- 業務の属人化・ブラックボックス化
- 手作業によるヒューマンエラーや品質低下
- 業務プロセスの非効率・重複作業
- DX推進の遅れとデジタル人材不足
- コスト削減・生産性向上圧力の高まり
特に、定型的なデータ入力や転記、帳票処理、メール送信などの反復作業が多く、これらが現場の負担となっています。熟練者の退職によるノウハウ喪失や、業務の標準化・自動化の遅れも深刻な課題です。
RPAツールの役割と解決できる課題、期待成果
企業の業務課題を解決するDXの一つとしてRPA(Robotic Process Automation)が挙げられます。RPAはパソコンなどのデバイス上で人が行う定型的な業務をソフトウェアロボットで自動化する技術です。主にデータ入力やファイル管理、複数アプリ間の情報連携など、繰り返し発生するルールベースの作業を効率化し、人の負担を軽減します。

RPAはDX推進の第一歩としても位置付けられ、変化するビジネス環境に柔軟に適応し、事業を強化・継続するための基盤となっています。
主な役割と期待成果は以下の通りです。
- 定型業務の自動化による作業時間短縮・人件費削減
- ヒューマンエラーの削減・業務品質向上
- 業務標準化・属人化解消
- 24時間365日稼働による生産性向上
- 現場の負担軽減と付加価値業務へのシフト促進
人手不足や業務効率化のニーズを背景にRPAの導入が進み、企業は人手不足の中でも業務を安定的に遂行できるようになります。また、アセットの再配分として、単純作業から付加価値業務に人財をシフトすることが可能となり、競争力を維持・強化に貢献しています。
RPAツールの選定視点と主要なRPAツールの特徴
現在、多くの企業からRPAツールが提供されており、それぞれ導入により実現できることが異なります。解決したい課題や必要とする機能、実行環境や運用のしやすさなど、企業に合ったツールを比較・選定することが求められます。
RPAツールの選定視点
- 自動化したい業務範囲や課題の明確化(基本事項)
- 自社の規模や導入目的に合った機能・価格か
- 実行環境(デスクトップ型・サーバ型・クラウド型)や運用管理のしやすさ
- 操作性や開発手段(GUI型かコーディング型か)
- 社内システムや他アプリとの連携性
- セキュリティやサポート体制
- 無料トライアルの有無や費用対効果
RPAツールの提供企業においては、ツールの機能提供というハード面に加えて、提供するツールが対象とする企業の課題を解決し業務パフォーマンスが向上すること、あるいはスムーズに導入・運用できるものであることを事前に確認・共有するアセスメントなどのソフト面での支援を行うことも必要と思われます。
RPAツールは、提供形態、機能、価格、AI搭載の有無、開発環境、サポート体制など、ツールごとに強みとする要素が異なります。
主なRPAツール

- グローバル三大RPAツール
RPAツール名 | 主な特徴 |
---|---|
UiPath | 世界シェアNo.1。直感的なUI、AI/ML統合、豊富な統合機能 |
Automation Anywhere | クラウドネイティブ設計。AI連携や非構造データ自動化に強み |
Blue Prism | AI機能搭載。大規模運用・セキュリティに優れる |
- 国内主要RPAツール
RPAツール名 | 主な特徴 |
---|---|
WinActor | 国内シェアNo.1。NTTグループの技術のノウハウで業務を支援 |
BizRobo! | 国内RPAのパイオニア。幅広い業種で導入実績がある |
Robo-Pat | 初心者でも導入しやすく、サポート体制が充実 |
その他、ERP連携や金融・自治体向け特化型など、多様な製品が存在します。
AIによるRPAツールの進化
近年、RPAはAIとの連携で大きく進化しています。AIと連携することで、単純な定型作業だけでなく、より複雑な業務や判断が必要な業務、あるいは制作業務にも自動化の範囲を広げることが可能となっています。

- AI-OCR:手書きや非定型帳票のデータ化を高精度で自動化
- 自然言語処理AI:メールやチャット内容の自動分類・対応
- 生成AI:レポートやメール文の自動生成、自然言語でのロボット作成指示
- 機械学習:業務パターンや例外処理の自動学習・最適化
これにより、従来RPAが苦手だった非定型・判断業務や、複雑な業務プロセスにも自動化範囲が拡大。AI×RPAは、単純作業から高度な意思決定支援まで、業務効率化の中核技術へと進化しています。
RPAツール提供企業のビジネスモデル・マネタイズの変化
RPAベンダーのビジネスモデルは、従来の「製品ライセンス販売」中心から、「サブスクリプション型」「クラウドサービス型」へとシフトしています。また、RPA導入・運用コンサルティングやAI連携、業務プロセス最適化などの付加価値サービスが拡大し、マネタイズポイントが多様化しています。
- 製品ライセンス(オンプレミス・クラウド)
- サブスクリプション(月額・年額課金)
- 導入・運用コンサルティング
- AI連携・業務最適化支援サービス
- トレーニング・サポート
特に国内市場では、オンプレミス製品が約9割を占める一方、システムの柔軟性やメンテナンスなどのコスト優位性などの観点で、今後はクラウド型やAI連携サービスの需要が拡大すると考えられます。
RPA導入プロセスと課題・留意点
導入プロセス
- 業務プロセスの見える化・課題抽出
- 自動化対象業務の選定(定型・反復・ルールベース業務が中心)
- RPAツールの選定とPoC(概念実証)
- ロボット開発・テスト
- 本番運用・効果測定
- 全社展開・運用体制の整備
導入時の主な課題・留意点
- 業務の属人化・ブラックボックス化:現場業務の可視化が不十分だと自動化が進まない。
- ツール選定の難しさ:自社業務やIT環境に合った製品選定が重要。
- 現場の抵抗感・意識改革:業務フロー変更や新技術導入への抵抗が障壁となる。
- 運用・保守負担:ロボットのエラー対応やシナリオメンテナンスが必要。
- AI連携時のデータ品質・API連携の難しさ:AI活用には高品質なデータとシステム連携設計が不可欠。
成功企業は、業務の見える化・標準化や現場主導の自動化提案、効果測定と全社展開を重視しています。
RPA市場の将来展望
日本国内のRPA市場は2023年度903億円、2024年度1,034億円、2025年度1,183億円と年10%超の成長率で拡大中です。2027年には1,541億円規模に達すると予測されており、今後も堅調な成長が見込まれます。
成長を支える主な要因として以下の点が挙げられます。
- 人手不足・生産年齢人口減少への対応
- DX推進・業務効率化ニーズの高まり
- AI連携による非定型業務自動化範囲の拡大
- クラウド型・サブスクリプション型サービスの普及
今後は、AI・生成AIとの融合による「判断・分析・意思決定」領域まで自動化が進み、RPAは単なる業務効率化ツールから、企業競争力強化・イノベーション創出の基盤へと進化していくと考えています。
まとめ
RPAは日本の構造的な労働力不足や生産性向上、DX推進といった社会的課題に対する有効なソリューションとして、今後も市場拡大と技術進化が続くと見込まれます。企業はRPAの導入とAI連携を通じて、業務効率化と競争力強化を同時に実現することが求められていくでしょう。
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Mikio Aaskawa
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