【イベント報告】いきなり!ステーキを成功に導いた“PPAP” 事例に見る組み合わせの妙(第4回NRLフォーラム)
2017年5月25日、D4DRが企画・運営に関わる「Next Retail Lab(ネクストリテールラボ)」フォーラムの第4回が開催されました。
Next Retail Labでは、オムニチャネル、EC等の分野で活躍されている著名な方々に、フェローとして参加いただいています。今回の講演者は、ビートレンド株式会社コマースCRM本部本部長の松井功さんです。急成長を続けている「いきなり!ステーキ」が、なぜ成功したのか。その事例をはじめ、ビートレンドが提供している販促の仕組みをご紹介いただき、リアル店舗とネット店舗の両方の売上を向上させていくためには何ができるのかを考えました。
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ビートレンドは、リアル店舗を持っているお客さまの、店頭の販促の仕組みやCRMの仕組みを提供している会社です。顧客は外食のチェーンが多いのですが、小売の店舗でも利用されています。
肉好きの気持ちに寄り添い、くすぐる「肉マイレージカード」とスマホアプリ
いきなり!ステーキでは、常連客との確かなつながりを支える仕組みとして、「肉マイレージカード」と「スマートフォンアプリ」を導入しています。
肉マイレージカードは、食べた肉の量でランクアップする会員カードです。通常のカードの他にゴールドカードとプラチナカードがあり、自分が食べた証が、ひたすらたまる。ただそれだけなのですが、むしろその簡単さがいい。ゴールドカードを持っていると、ちょっと自慢したくなります。
ただ、プラチナカードを持つ人が増えると、あまり自慢できなくなってしまいます。すると、一人で何枚も持つ人が出てきてしまいました。もう一度最初から食べ始めるのです(笑)。
同じ人が何枚も持つことになると、CRMがうまく運用できなくなってしまいます。そこで、それだけ肉を食べていることを自慢したいのならランキングをやったらいいのではないか、みんなで自慢できる場所を提供しようということで、肉を食べた量のランキングを、アプリに取り入れました。
皆さん、すごい勢いで食べています。肉好きの心をくすぐっているのです。さらに、一度に食べた量のランキングや年間ランキングだけでなく、がんばればランクインする可能性が高まる月間ランキングなど、どんどん改良しています。
肉マイレージカードは、プリペイドの機能も持っています。毎月29日の「肉の日」にチャージをすると、ボーナスチャージが5倍になります。29日には、次々にチャージが入ります。最初はお店に行かないとチャージできませんでしたが、ウェブでチャージできるような改良も加えています。
プッシュ通知とメルマガは、熱いうちに
いきなり!ステーキのネットショップについては、ECの広告は打っていません。アプリとメルマガでコミュニケーションを展開しています。20万人がメール会員になっていて、アプリは10万人がダウンロードしています。そこで、アプリのプッシュ通知とメルマガで、どちらのほうがECサイトへの誘導率が高いのか、実験しました。
開封率は、メールが約30%だったのに対し、プッシュ通知は約10%しかありませんでした。しかし商品購入ページへの誘導率は、メルマガが2.4%なのに対して、プッシュ通知は15.2%で、メルマガの約6倍でした。メールは見てくれているけれども、次のアクションになかなかつながらない。アプリをダウンロードして、さらにプッシュ通知まで開いている人は、次への誘導がしやすいと思われます。
開封の推移を見ると、メルマガはほとんどの人が初日に開封して終わりです。プッシュ通知は、二日間で約8割が開封します。どちらも、あとでじっくり読んでもらうメディアではないことが分かります。熱が冷めないうちに次のアクションを起こさせるためのメディアです。
成功の秘密は、PPAP
ピコ太郎の「PPAP」は、ペンもリンゴもパイナップルも、それだけでは全然面白くないのに、世界的にヒットしました。成功の秘密は、組み合わせの妙にあります。
いきなり!ステーキを考えてみると、マイレージのポイント(Point)、プリペイド(Prepaid)、アプリ(App)、プッシュ(Push)。偶然ですが、これも「PPAP」です。
ポイントだけでは、その次につながらない。ポイントを貯めていく喜びをアプリで作りました。貯めたいからプリペイドでチャージする。店を訪れることができない人に対しては、アプリが活躍する。ランキングなども楽しめるところに、プッシュ通知で誘導をかける。また、リアル店舗の成功も、ネットショップ運営にもうまく響いています。
どれか一つではなく、組み合わせ方が重要なのではないか。これが、いきなり!ステーキと一緒に仕事していて、感じているところです。
まずはショッピングアプリから
今後、ますます店舗誘導とEC誘導の統合が進むと思われます。リアル店舗とネット店舗をうまく連携させるために、さらにスマホアプリが活躍することでしょう。
店舗とECが存在する場合は、ショッピングアプリの会員を増やしておくことをお勧めします。アプリをダウンロードしてもらえれば、楽天市場やYahoo!ショッピングを経由しなくても、自分のお店に直接リンクする仕組みを作れます。
自社ECサイトを作れば、CRMを効果的に活用できるようになり、リピート向上の施策も打てます。SNSなども活用しながらショッピングアプリの会員を増やしていき、次のステップとして店舗とECとのポイントや在庫の共有、オムニチャネルの構築に着手できます。
最初からオムニチャネルの構築を狙おうとすると、かなりの時間がかかってしまいます。いずれ構築するにしても、まずショッピングアプリを作ったほうがいいのではないでしょうか。早く作って、お客さまに早く仲間になってもらうことが大事です。そのとき、お客さまの心に寄り添って、お客さまの考えに合わせながらアプリも進化させていくことが重要です。
最後の一押しで、売上対販促費比率1000%超
EC専業の会社は、デジタルの世界で閉じているケースが多く見られます。しかし、ビートレンドではハガキなど、旧来のダイレクトメール(DM)も効果があるのではないかと考えています。私たちはアプリのプッシュ通知やメールなどに、DMを組み合わせて販促を図る仕組みを提供しています。これを「スマートDM」と呼んでいます。
ひとつ事例をご紹介しましょう。MNC New Yorkという新興のコスメブランドが、ダイエットサプリを開発しました。夏場に向けて売上がアップしますが、10月以降は売上が減少します。また、初回購入は多いものの、定期購買までになかなかつながらない傾向がありました。そこで、スマートDMで販促を行いました。
「スペシャルDMが届きます」という内容のメールを配信すると同時に、DMを発送します。メールが届いた数日後に、DMが届きます。キャンペーンが終わる頃にもう一度メールを配信し、キャンペーン終了前日にもメールを送っています。
その結果、この事例では、売上対販促費比率が1000%超えになりました。
スマートDMでは、ウェブで多くのお金をかけて広告を打つよりも、一度買っていただいているお客さまを定期購買につなげられる効果があります。メルマガは二日くらいしか効果がないのですが、はがきはすぐ捨てないことも多い。ただ、冷蔵庫などに貼ってあっても期限を忘れたりします。そこをメールでフォローして購買につなげる、最後の一押しができる仕組みになっています。
さらに、アプリでプッシュ通知を組み合わせるのも効果的です。メールを送って、お客さまの反応があったときにプッシュ通知をして買っていただく。我々がマルチコンタクトチャネルと呼んでいる、デジタルもアナログも含めたさまざまなコンタクトチャネルを組み合わせる手法によって、メルマガ、プッシュ通知、DMの効果を最大化していくことができます。
新たな組み合わせを、Next Retail Labから
顧客情報の管理は統合されているでしょうか。今なおDMが担当者のパソコンから宛名ソフトで印刷され、メールは別のツールから配信されるといったことは、しばしばあります。それだけリスクが増えていきます。
プラットフォーム「betrend」では、CRMは全部暗号化したデータベースになっています。そのデータを基に、DMやメール、ショートメッセージ、プッシュ通知、LINEへのメッセージを送れます。電話の音声ガイダンスにも対応できます。全部同じプラットフォーム上に乗っているので、どれを使うかは、そのときどきに考えることができます。
リアル店舗とネットショップの両方を考えたCRMは確立されていません。リアル店舗では、「そんなことを考えている暇がない」「アプリやECを運営する人がいない」と、店舗運営以外のことができないでいる方も多くいます。これらの課題に対し、さまざまな組み合わせを考え、トライアルをしながら売上をアップする協力ができるサービスなどが、このNext Retail Labから生まれると面白いと思っています。
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講演後は、フェローによる質問や討論に、会場からの質問も多く出され、いきなり!ステーキの事例やツールの活用法などに対する関心の高さが感じられました。
アプリのプッシュ通知がどのくらい効果があるのか、DMのより効果的な使い方はどうすればいいのかなど、日々の具体的な業務に悩んでいることが垣間見える質問も多く出ました。LINEとアプリの棲み分けはどうすればよいかという質問には、松井さんからLINEで新規顧客をキャッチして、アプリでお客さまとの関係を維持し、リピーターになってもらうとの回答がありました。
フェローからは、事業がうまくいく大前提として、いきなり!ステーキが厚切り肉を安く提供したように、まずは自分の会社が何をする会社で、どこに価値があるのかを、もう一度考えるべきだとの意見が出ました。そこにファンがついて、初めてCRMを考えることができます。
討論を受けて、コーディネーターの藤元は、結局は業態開発が肝ではないかとコメントしました。業態開発が成功すれば、ファンの熱狂度を可視化したり、ファンの熱量を維持したりするために、さまざまなデジタルツールが役に立つという意見も出て、これからの小売業のなかでやっていけることのヒントが多く得られた2時間となりました。
(イノビート編集部)
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今後もオムニチャネル、ECなどの分野で活躍されている著名なフェローの方々をお迎えし、活動していきます。
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