【イベント報告】今知りたい! 動画・LIVE動画・SNSの新潮流 ~新・ビジュアルコミュニケーション~(第14回NRLフォーラム)

2018年5月24日、D4DRが運営・企画に携わる「Next Retail Lab(ネクストリテールラボ)」フォーラムの第14回が開催されました。
今回の講師は、サイバーエージェントからCCHANNELを経て現在は、動画コンテンツ制作やメディアプロデュースを行う Hint inc.を立ち上げた やまざきひとみ さんです。
やまざきさんは、現在までにWebコンテンツの最前線でヒットコンテンツをプロデュースされています。
今回は、「今知りたい! 動画・LIVE動画・SNSの新潮流 ~新・ビジュアルコミュニケーション~」というテーマで初期のコミュニケーションコンテンツから最新のSNSコンテンツについてをご講演いただきました。

画像1: 『今知りたい! 動画・LIVE動画・SNSの新潮流 ~新・ビジュアルコミュニケーション~』: HINT inc. 代表取締役社長 やまざきひとみ さん (ネクストリテールラボ 第14回)

静から動へ ―コミュニケーションツールの今昔物語

まずは、現在までのコミュニケーションサービスについてやまざきさんはこう話します。

私が、コンテンツをプロデュースし始めた頃はブログが主流でした。徐々にアバターでのコミュニケーションが普及し始めて、近年はSNSが主流になっています。それに伴いコンテンツの内容も変化して、ブログや初期のSNSではテキストや写真がメインになり、更に、3年くらい前から動画を使用したものが数多く投稿されるようになっています。
動画コンテンツの内容も配信プラットフォームによって違いはありますが、娯楽性の高いものから料理やDIY、商品の紹介など、より情報性の高い内容のものが増えています。最近では、若い世代のスマートフォンでの動画閲覧率がとても高く、20代では2割、10代では4割近くが毎日スマートフォンで何かしらの動画を見ています。その多くは、友達のSNS間でシェアされた動画を、受身的に見ていることが多いようです。

なぜ、コンテンツの種類がこれ程までに大きく推移したのでしょうか。

1つ目に通信環境です。通信料金の定額制や、通信速度、通信安定性など技術面において飛躍的な改善のおかげで、無理なく動画を見る環境が整いました。
2つ目にスマートフォンの普及です。フィーチャー・フォンのときと比べ画面サイズや処理速度の向上により、動画を見やすくなる環境が整いました。パソコンよりも身近に、いつでもどこでも好きなときに動画が見られるようになりました。
3つ目にSNSの急速な普及です。即時性の高いコミュニケーションツールとして、爆発的に普及しました。スマートフォンの普及と相まって簡単に情報が共有可能となりました。そういった点もあり、軽く気兼ねなく見られる動画ということで、短尺動画(動画の長さが短い動画)の投稿が確立されました。
4つ目に真実性が高い情報が好まれることです。技術の進歩によって編集や合成が容易で完成度の高いものができるようになっています。SNSにおいてデタラメの情報が流通していたりします。動画であれば、写真等と比べて改変しづらいためより真実性が高いものとして選ばれています。

こういった点がコンテンツが大きく変化した背景と考えられます。
ここ十数年でテキストが主体だったブログから、画像や写真を使ったもの、近年では動画を使ってコミュニケーションがとれるようになりました。ビジュアルの強化によって、手軽に取得できる情報量が増えてより直感的に情報共有が可能となったのです。

 
画像2: 『今知りたい! 動画・LIVE動画・SNSの新潮流 ~新・ビジュアルコミュニケーション~』: HINT inc. 代表取締役社長 やまざきひとみ さん (ネクストリテールラボ 第14回)

動画だけではもうもの足りないのか

最近では、ライブ動画という新たな動画コンテンツが登場しました。
人気のライブ動画配信者も数々登場してきています。
やまざきさんは、2017年にライブ動画元年を迎えたといいます。
ライブ動画は従来の動画コンテンツと“動画を配信する”という点では同じですが、実際には新たなコンテンツともいえます。ライブ動画と従来の動画との違いについて、以下の点がポイントとなっています。

1つ目に即時性の高さです。ライブ映像なので、今起こっていることをすぐに伝えることができます。そういった、コンテンツを配信することでライブ感、一体感を味わうことができます。
2つ目に相互コミュニケーションです。視聴者からのリクエストを配信者がライブ内で応えることによって、配信者と会話をしているかのようにコミュニケーションを取ることができます。
3つ目に配信プラットフォームでの優先順位です。ライブ動画で配信を開始すると、プラットフォーム上で通知されたり、画面上でコンテンツの表示順位が上位に表示されたりします。これにより、視聴者との関係をさらに高めることができます。
4つ目に従来の動画コンテンツより真実性が高くなることです。コンテンツの推移の項目でも記述しましたが、ユーザーは真実性の高い情報を必要としています。ライブ動画であれば、動画よりも編集のハードルがさらに高くなるため、真実性もより高くなります。

リアルタイムに臨場感・一体感が体験できること、互いにコミュニケーションが可能なことが大きなポイントです。

ライブコマースについて

現在、中国にて広く受け入れられているライブコマースは、日本でも注目を集めてきています。
ライブコマースは、ライブ動画とEC(Electronic Commerce)を融合させたものです。ライブ動画の配信者が商品を紹介して、視聴者がそれを購入するという仕組みです。相互のコミュニケーションも可能なので、視聴者が商品について質問したら、配信者はライブ内で回答することができます。
「ライブ動画で質問に答えることで、互いにコミュニケーションが生まれます。そこに、一体感という体験価値と配信者と視聴者達のコミュニティーが形成されることにより、モノが売れるという流れができます。」とやまざきさんは言います。
また、「日本でのライブコマースは黎明期です。企業が本格的に利用するためにはプラットフォームをきちんと確立できることが大切です。」とも話しました。
中国でのライブコマースプラットフォームは、ライブ動画とECとの融合がきちんと行われていて、アプリ内でライブ動画を見ながらシームレスに買い物が可能です。
日本でのプラットフォームは、ライブ動画とECのプラットフォームが分かれてしまっているため、決済までに隔たりができてしまっています。つまり、ライブ動画から一旦離れないと商品の購入ができないということです。

視聴者・消費者の購買意欲を引き出して実際に商品を購入してもらうか、プラットフォームのアクセシビリティがとても大切です。

新潮流と企業はどう付き合って行くべきなのか

 
画像3: 『今知りたい! 動画・LIVE動画・SNSの新潮流 ~新・ビジュアルコミュニケーション~』: HINT inc. 代表取締役社長 やまざきひとみ さん (ネクストリテールラボ 第14回)

講演後に、フェローの方々や参加者によるディスカッションが行われました。
フェローが、企業がライブコマースを利用しようとしたとき配信者となる人材の発掘や育成のアイディアについて質問すると、「プラットフォームごとの特徴と、配信者ごとの得手不得手をよく考える」「ライブコマースだとトークの上手さが大切」「早めに発掘、育成することが大事」など意見が交わされました。
またフェローからの感想として、
「企業は、今までのようにブランドを蓄積して確立していくというモデルだけでは生存できない。信頼性やリアリティのように、直ぐに変化する脆弱なものに依存しながらやっていく時代になっていると感じました。そういった、脆弱なものをどうマネージメントして企業経営を安定させるかということを、今後考えていかなくてはいけないと思いました。」、
「売り手だけが使いやすいプラットフォームではなくて、売り手と買い手が使いやすい、コミュニケーションを取りやすいプラットフォームが必要であると感じました。」、
「企業として商品を販売する際に、ライブ動画をユーザーとより親密になるために新たなコミュニケーションツールとして活用できそうですね。」
などがあがりました。

また参加者からの質問で、次世代の通信環境に移行した時のコンテンツに起きる変化について質問がありました。やまざきさんは「コンテンツを視聴する側の変化としては、今とあまり変わらず軽微な変化に留まると思います。配信者側の変化としては、現在も問題となっている配信時の速度低下などの通信時の安定性に関する改善が考えられます。通信環境の向上によって、安定して配信できるようになればさらに簡単に多種に渡る動画配信が可能になるのではないかと思います。」と答えていました。

企業側からの視点で、動画コンテンツやライブ動画をどうやって利用していけば上手くいくのか、など、企業と消費者をSNSや動画を使って今後どのようにコミュニケーションをしていけば良いのかといった点を討論しました。


やまざきさんは、過去から現在、最近やこれからの動向を実際のコンテンツを使い丁寧に、非常にとりつきやすく説明してくれました。
コンテンツとして、そしてコミュニケーションの方法の一つとしてこれからの動画コンテンツの行く末を聞くことができた回となりました。ソーシャルメディア分析をしている私にとって、コンテンツの現状や先行きのことを知ることはプラスになりました。
トレンドが激しく移り変わるWebコンテンツをいかに早く取り入れて確立していくか、一筋縄ではいきませんが熟思していく必要のあるポイントだと思います。

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