ゲーム市場に見るバーチャル体験のポテンシャル(第十五回)


【特集】アフターコロナ時代のビジネス戦略 とは
D4DRでは、今回の新型コロナウイルス(COVID-19)の流行を経て社会がどのように変化するか、そして各業界がどのような戦略にシフトしていくべきなのかを考察した「アフターコロナ時代のビジネス戦略」を毎週連載しています。
連載一


アフターコロナ時代のビジネス戦略 -エンタメ②ゲーム-

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が猛威を奮っている。緊急事態宣言は解除され、徐々にイベント規制などが緩和されたものの、ここ十数日の感染者数を見る限り未だ移動を制限せざるを得ない状態が続いている。
前述のエンタメ記事にもあるが、外出規制によるエンターテインメントの大きな変化がみられる。映画鑑賞やスポーツ観戦などに費やす時間が減っているということだ。反面、コンシューマーゲーム機などで費やす時間が大きく伸びている。

本稿では、アフターコロナ時代のゲームはどうあるべきか、リアルとバーチャルの融合、注目すべき概念をもとに考察する。

ゲーム市場の順風とコロナ禍を通した顧客意識の変化について

コロナ禍で外出を控えるなか、自宅で楽しむための商品が需要を伸ばしており、ゲームもその一つである。株式会社KADOKAWA Game Linkageの調査によると、国内ゲーム市場規模は、2010年から10年連続で拡大を続けているとのことだ。パンデミック発生により、拡大に更に拍車をかける形となるであろう。

また、生活者の自宅滞在時間が増えたことによって、顧客の消費コンテンツの変化がみられる。野村総合研究所の調査によると、「ゲーム」、「マンガ・本・書籍」のカテゴリーでは、今まで消費できなかったコンテンツ、いわゆる「積みコンテンツ」の消費が増加している。「VRコンテンツ」では、新規利用者の比率が増えており、各カテゴリーとも利用媒体のデジタル化が進んだとされる。

ゲームからソーシャルへ、現実とのリンクの深化

アフターコロナ時代のビジネスを考えるにあたって、コミュニケーションは注目するべき点の一つだ。

ここで、重要視されている「メタバース」について触れる。SF作家のニール・スティーヴンスンによる著書『スノウ・クラッシュ』(1992)内に登場する仮想世界のことで、メタ(meta)とユニバース(universe)をあわせた言葉である。以前より存在していた概念であるが、今回のパンデミックにより注目を集めた。抽象的な概念であり、具体的な説明が難しいものである。表現上近い代表的なサービスとして、「SecondLife」、「PlayStation Home」がある。最近では、「Fortnite」、「VRChat」などが挙げられている。また、人気シリーズ最新作「あつまれ どうぶつの森」も、ゲームをプレイするというよりもコミュニケーションツールとしての利用が目立っている(ゲーム上での、入社式や結婚式などが行われているようである。)

「同一仮想世界に多人数で集まって、同時に何かをする」サービスは以前より存在している。90年中盤以降のインターネットの普及にともなって、MMORPG(大規模多人数同時参加型オンラインRPG)の流行、2000年代には前述の「SecondLife」の登場とバブル、がある。

しかしこういった歴史を振り返る限り、メタバースを主軸においたサービスは比較的短期に下火に向かっているものが多い。SecondLifeの場合は、サービス側、利用者側ともに障壁が高かったことが要因と考えられる。利用者側の障壁とは、そのサービスを利用するための最低要件がどの程度かというものだ。現在で例えると、VRデバイスが必須であることなどである。反対に、スマートフォンさえあればプレイできるものは障壁が低いと言える。

すなわち、現在の再注目の要因としては、近年のスマートフォンなどの身近な情報端末の普及がベースにあり、パンデミックを引き金として、ニッチからより一般層にむけて浸透し認知されたと見たほうが良い。

そういったメタバース主軸のサービスに比べ、ゲームを主軸とした(目的を持った)サービスは長期的にユーザーに定着しているように思われる。また、サンドボックスゲームの「Minecraft」、「Fortnite」のクラフトモード、どうぶつの森など「自分で目的をつくっていく」要素とコミュニティーの組み合わせが今後のポイントとなるかもしれない。

リアルとバーチャルの融合、他業界との協業に今後の可能性を探る

以前よりゲーム市場は拡大を続けてきたが、新型コロナウイルスの大流行が転機となりさらなる増加をみせている。特にコンシューマーゲーム機の販売は、品薄の状態が続き抽選販売となっているものもある。しかし重要視するべきは短期的な売上云々よりも、ゲーム内における仮想フィールドをいかにしてプレイヤーの生活の場の一部にするかというプロセスのほうである。つまり、リアルでの生活とバーチャルでの体験をシームレスにする必要性に迫られることになる。

仮想フィールドについては、前述の通りVRの新規利用者が増加したということも注目すべき点である。 株式会社HIKKYが主催するVR空間でのイベント「バーチャルマーケット」は、のべ約100万人を集める一大市場を築きつつある。バーチャルライブプラットフォームを運営するWAVEXR, Inc.が資金調達に成功したニュース(参照:Road to VR)も、ゲームに留まらずインフラ化に向けたVR市場の追い風を象徴していると言えるだろう。

VR以外にもゲームの技術を他業界向けに転用する例はある。株式会社ヒストリアは、ゲームエンジンを活用して自動車のバーチャル展示を実現するデモを公開した(参照:総合自動車ニュース レスポンス)。このように、小売などの他業界と協業することを視野に入れたプラットフォームの開発は、これから競争が激しくなる領域と予想される。

アウターコロナ時代の生活者の自宅時間を制するのは何者か。動画配信サービスの雄ともいえるNetflixは、2019年の時点で興味深いコメントを発表している。「ライバルは他の動画配信サービスではなく、Fortniteである」というものだ(参照:Engadget 日本版)。近年続々と現れる海外の有力コンテンツに対して、日本のコンテンツも劣勢にある。スマホゲームなどは特に顕著である。コンテンツ自体を磨くことも大切だが、中長期的な未来を見据えるならば、バーチャルとリアルを組み合わせて顧客体験を最適化し、かつ他業界をも巻き込む方策を探ることが必要になるだろう。

次回「アフターコロナ時代のビジネス戦略」のテーマは「エンタメ③アダルト」、7/22(水)更新予定です。


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