物を持たない生活とは?
物を持たない生活とは、ミニマリズムやシンプルライフといった、物を減らしてシンプルな暮らしを目指すライフタイルを指す。近年では、環境問題への意識が高まり、持続可能なライフスタイルを求める人々が増えているため、物を長く使うことを意識する人が増えており、シンプルで持続可能な暮らしを目指す人が増えている。
ミニマリスト(必要最小限のものしか持たない、シンプルで自由な暮らしを追求する人)だけでなく、ミニマリストではない意識を持った人たちも物を持たない価値観を持っている。
非ミニマリストの約7割がミニマリストのライフスタイルに好感を抱いており、4割以上が、物を少なくすることや、物を厳選することを大切にしている調査結果が報告されている。
単に物を減らすだけでなく、物を減らすことで、心身の状態をクリーンに保ち、日々の生活に余裕を持たせることが目的であり、多忙な生活を極める現代人に支持される生き方のひとつとなっている。
予想される未来社会の変化
- 消費が情報や体験中心となり、所有にこだわる傾向が小さくなる
- モノを所有することに関する負担感を忌避する傾向が更に強まる
- シェアリングエコノミーの発展により、物を極力購入しない生活が容易に実現できるようになる
- 高品質で歴史のあるものなどがより高い価値を持つようになる
- 非デジタル領域のサブスクリプションモデルが拡大する
トレンド
76.8%がここ1年以内に断捨離、73.4%が断捨離ブームに肯定的

ドリームプランニングが運営する不動産のお悩み解決サイト「URUHOME(ウルホーム)」では、2024年7月15日から17日にかけて、日常生活の問題に興味・関心を持つ500名を対象に、断捨離に関するアンケート調査を実施。
「ここ1年以内で、何か断捨離しましたか?」という問いでは、断捨離を行った人は76.8%、行っていない人は21.8%という結果となった。
また、「断捨離ブームについて、どうお感じになりますか?」という問いには、73.4%が「良いと思う」と回答。断捨離ブームは一過性のものだという懐疑的な意見はあるものの、「生活がシンプルになる」「精神的にスッキリする」など肯定的な見方が多数派を占めた。
アンダーコンシュンプション・コア(過小消費コア)

「アンダーコンシュンプション・コア(過小消費コア)」は、Z世代を中心に広がる新しいミニマリズムの潮流で、過剰な消費を避け、必要最小限の物で豊かな生活を送ることを目指している。
このムーブメントは、既存の物を大切に使い続けることや、トレンドに流されず無駄な買い物を控えることを重視している。
TikTokでは、#underconsumption のハッシュタグとともに、すり減ったスニーカーや古着、化粧品を最後まで使い切る様子などが共有され、共感を呼んでいる。
背景には、環境問題への関心の高まりや経済的なプレッシャーがあり、消費主義的なインフルエンサー文化への反動としても位置づけられている。
従来のミニマリズムや「ディインフルエンシング(deinfluencing)」とは異なり、アンダーコンシュンプション・コアは、すでに持っている物を大切に使うことに焦点を当てた、新世代のミニマリズムと言える。
エクストリーム・ミニマリズム

「エクストリーム・ミニマリズム(Extreme Minimalism)」は、従来のミニマリズムをさらに推し進め、生活のあらゆる側面で「必要最小限」を追求するライフスタイル。単なる物の削減にとどまらず、住空間、衣類、家具、日用品、さらには思考や時間の使い方までを徹底的に見直し、究極のシンプルさを目指す。
アリシア・ライス(Alicia Rice)さんは、米国カリフォルニア州サンディエゴ在住の40歳のバーテンダーで、極限的なミニマリズム(エクストリーム・ミニマリズム)を実践することで注目を集めている。年収約7万ドル(約1,050万円)ながら、月々2,000ドル(約30万円)を貯蓄し、借金ゼロの生活を送っている。彼女の生活費は、家賃・光熱費・携帯代・車関連費用・Dropboxのサブスクリプション・慈善寄付・食費など、必要最小限に抑えられている。
ライスさんのミニマリズムへの目覚めは、Netflixのドキュメンタリー『The Minimalists』の視聴や、COVID-19パンデミック中の生活の見直しがきっかけ。彼女は、マットレスや家具、パソコンを持たず、Amazonで購入した170ドルの畳マットで寝起きし、iPhone一台でコンテンツ制作を行っている。
また、衣類は23点に絞り、化粧品もココナッツオイルソープとリップバームのみを使用するなど、徹底したシンプルライフを実践している。
彼女はYouTubeチャンネル「Exploravore」で自身のライフスタイルを発信し、多くの人々に影響を与えている。
将来的には、バックパック一つで各国を旅し、オフグリッドのエコフレンドリーな小屋を建てることを目指している。ライスさんの生活は、物質的な豊かさよりも精神的な自由と持続可能性を重視する新しい価値観を体現している。
ミニマリストでない人も4割以上がモノを「減らす」「厳選する」を重視

2021年の株式会社ネイチャーズウェイの調査によると、モノを選ぶ際の意識の変化が起きていることが報告されている。
ミニマリスト実践者だけでなく、自分自身は非ミニマリストだと思っている人も約7割がミニマリストのライフスタイルに好感を抱いており、さらにミニマリストに準ずる生活をしている人が4割近くいる。単純なモノを少なくすることだけではなく、自分が納得した物を長く使うという、物を厳選することへの意識が高いことがわかった。
シェアリングエコノミーの市場規模は約2.6兆円
モノを持たない価値観を支えているのが、各種のシェアリングサービスの普及である。一般社団法人シェアリングエコノミー協会は、シェアリングサービスの市場調査を実施し、日本のシェアリングエコノミーの市場規模、2022年度は2兆6,158億円、2032年度には最大15兆1,165億円に拡大する可能性があることを発表した。
コト消費・トキ消費の拡大

モノの消費が減る一方で、「コト消費」や「トキ消費」は拡大していくと考えられる。
コト消費を捉えた商品・サービスの事例としては、石川県の旅館「加賀屋」の例がある。加賀屋では日本人・外国人を問わず「おもてなし」を提供することを重視しており、webサイトは6言語に対応しているほか、Facebookでは日・英・中の三言語で情報発信を行うことで、web経由の予約客を増やしている。予約客は雪駄や下駄で館内を歩けるサービスや花見・雪見といった四季のイベントを体験できる。
近年、音楽フェスやハロウィーンの集まりなど、「その日・その場所・その時間」でしか体験できないような消費行動「トキ消費」も注目される。SNSの発達により、多くの人が体験したことを拡散・共有することが当たり前になった結果、SNS越しの疑似体験では味わえない、実際に参加するという事実に意味があると感じられる消費が価値を高めている。
\未来コンセプトペディアを活用してアイデア創出してみませんか?/
新規事業・新サービスアイデア創出ワークショップ
新規事業立ち上げの種となるアイデアを創出し、新たな領域への挑戦を支援します。
