パーソナルヘルスケアデータの収集・集約・活用とは?
個人健康記録(PHR)、医療データ、ウェアラブルデバイスから得られる生体データなどが統合的に管理され、パーソナルヘルスケアデータから包括的な健康プロファイルが構築される。AIによる分析で個人に最適化された健康管理や疾病予防が可能となり、ビッグデータは、研究・創薬、医療機器開発に活用され、医療の質向上に貢献する。データの機密性と利活用のバランスが課題であり、個人情報保護に関する法整備が求められる。
予想される未来社会の変化
- 個人がヘルスケアデータを提供することで得られるメリットが明確になり、パーソナルデータ活用に対するハードルが下がり、様々なデータが集約され利用されるようになる
- ウェアラブルデバイスとAIの連携によって個人の健康リスクを予測できるようになり、予防医療が一般化する
- 個人の健康データが医療機関間で共有され、シームレスな医療サービスの提供が実現する
- 日常的な健康管理がゲーミフィケーションされる
トレンド
ユーザーの健康診断結果から3年以内の疾患発症リスクがわかる「未来予測レポート」の機能

ソニーネットワークコミュニケーションズのAI予測分析ツール「Prediction One」が、PHRサービス「カルテコ」に技術提供し、疾患リスク予測機能が大幅に強化された。
従来の「未来予測レポート」は、非AIロジックによって6疾患の発症リスクを予測していたが、「Prediction One」のAIによる分析によって大幅に予測できる疾患数が増加し、対象疾患は34となった。
本サービスではユーザーの健康診断結果から3年以内の疾患発症リスクがわかる。
「未来予測レポート」の機能によって自らリスクを把握することは、疾患予防や健康維持のための行動変容や、二次検診を受診する働きかけに繋がる。
AIを使った次世代PHRアプリ実証事業
帝人とレイ・フロンティアは、一般社団法人名護スマートシティ推進協議会が主催する「スマートシティ名護モデル推進事業」において、AI技術を活用した次世代PHR(パーソナル・ヘルス・レコード)アプリの実証事業を推進。
アプリは、利用者の位置情報や活動量などの行動データをAIで解析し、ヘルスケアデータと統合。個々の健康状態やライフスタイルに応じたパーソナライズされた健康支援を提供する。
また、活動量に応じてECサイトで利用可能なポイントやNFT(非代替性トークン)を付与するゲーミフィケーション要素を導入し、健康行動を楽しく継続できる仕組みを構築。
アプリ内のデジタルスタンプラリーを通じて市内の複数コースを設定し、利用動態や活動量の変化、ゲーム的要素の効果を検証する。
ヘルスケアパスポート

TISの「ヘルスケアパスポート」は、個人の健康・医療情報を一元管理し、医療機関や家族と安全に共有できるPHR(パーソナル・ヘルス・レコード)基盤サービス。
マイナポータルやAppleヘルスケアと連携し、薬剤情報や健診結果、ウェアラブルデバイスからのデータをスマートフォンで確認・共有できる。
福島県会津若松市や宮崎県都農町などの自治体で導入され、地域医療の効率化や住民の健康管理に貢献している。
特に宮崎県都農町では、2024年2月より「ヘルスケアパスポート」などのヘルスケア関連アプリの利用に応じて、地域通貨「つのコイン」へのポイント交換が可能となった。
ポイント交換には、マイナンバーカードを活用した本人認証が必要で、住民の健康活動が地域通貨として還元される仕組みが構築されている。
・先進国では、少子高齢化による医療費の増大が社会問題となっている。
IoTを用いた健康管理サービスや在宅見守り等の予防・監視医療、遠隔医療が社会に定着することが期待されている
日本国内の国民医療費推移

・一方で、国連の国際電気通信連合(ITU)は2021年11月30日、インターネットを一度も利用したことのない人々が世界で約29億人に上るという推計を出しており、これは全世界の人口の37%に相当する。ウェアラブル端末どころか、インターネットに触れたこともない層がいるという事実は、今後先進国と後進国の間で医療面での格差がより拡大しうるということが示唆される。
・今後、心拍数や血圧、運動量、心電図などをモニタリングするウェアラブルデバイスの普及が想定される。
加えて、家庭や職場に設置された家具・家電・デバイス等のIoT化、パッチ(皮膚貼り付け)型デバイス、スマートピルなど、センサーの偏在化により、健康状態の把握がより精緻化されることが予測される。
そこから記録された日々の活動・食事・睡眠などのデータを基に、一人一人に最適化した運動プログラムや健康・美容情報をリコメンドするサービスや、日々のデータを医師に提供することで、個人の電子カルテにデータが蓄積し、最適な治療を受けることが可能になる

リアルタイム血糖値測定ウェアラブルデバイスを食事&健康管理に活用|話題の医療型フィットネス
・ウェアラブルデバイスについて、現段階ではデータと医療内容の連動性の懸念から、本格的な医療機器としては採用されていない
・国内でも一般的に認知されているApple社の「Apple Watch Series6」では、血中酸素ウェルネス機能や心電図の記録機能が搭載された。消費者から広く認知・支持されるApple社の商品開発は、今後のウェアラブルデバイス普及の鍵となりそうだ

Apple Watch Series 6、革新的なウェルネス&フィットネス機能を搭載
・個人のバイタル情報などをデータとして扱う以上、個人情報流出などのリスクを排除することが求められる。厚生労働省を中心にPHR(個人身体健康データ)の活用に関する検討が進められている
・センサーを摂取するだけでデータが得られる、インテリジェンスデバイスも開発が進んでいる。
抗精神病薬に体温と胃の酸性度を計測できる極小センサーを組み込んだ、スマートピル「Ability MyCite」(大塚製薬)は、成人のうつ病患者向けの服薬管理システムで、体内に入った錠剤のセンサーが発した信号を、患者の装着したパッチが受信しデータをモバイルアプリに送る仕組みになっている

デジタルメディスン 極小センサー内蔵の医薬品が実用化
・日々の尿や便の状態を分析するスマートトイレなど様々なデバイスが登場している 。排泄物を分析し、疾病の兆候を発見できるようになるという

病気の徴候を見つける「スマートトイレ」
・Apple Watchでは、使用者の健康状態を把握し、身体の危険を事前に察知して通知する機能が付いている。
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