未病・予防医療市場とは?
未病とは、健康と病気を二分論ではなく連続的な状態と捉え、その変化の過程を表す概念である。未病への対処は、予防医療と合わせて健康寿命の延伸において重要な役割を果たすほか、国の「健康・医療戦略」においても、データを活用したヘルスケアサービスの創出においても未病の考え方に基づいた指標構築が重要であるとされている。
ライフスタイル医学やクオリティ・オブ・ライフ(QoL)の概念が着目され、未病・予防医学は拡大を見せる。バイオ、メディカル、ゲノム、AI製薬等の技術も含めヘルスケア市場は急拡大している。
近年では、自身の生体データをモニタリングできるウェアラブルデバイスや、個人に最適化された食事・栄養素を提案するパーソナライズ技術、自身の遺伝子を検査し遺伝的にかかりやすい疾患を特定するゲノム解析、脳と機械をつなぐことで様々なインプットとアウトプットを可能にするBMI(Brain Machine Interface)などの技術が登場している。未病への対処、予防医療の市場は、こうした技術を活用することで拡大していくと予想される。
予想される未来社会の変化
- 日常的に生体データをモニタリングできるデバイスが普及し、そのデータを蓄積・評価するサービスの利用層が拡大する
- 未病状態の検知がしやすくなり、疾病化する前の状態でのサービスや商品の市場が急拡大する
- 医療マーケットから未病・予防医療のサービス・商品へと市場ボリュームがシフトする
- 社会保険や医療保険といった関連金融分野とサービスの連携が進む
トレンド
次世代型ヘルストロン

白寿生科学研究所は、創業100周年を迎える2025年に、電位治療器「ヘルストロン」を活用した次世代の個別化予防医療の実現に向けて、海風診療所(山口県)およびIoYouと共同研究開発協定を締結。
この取り組みの中心となるのが、山口県周南市の予防医療複合施設「トレーフル・プリュス」内に設置された「HAKUJUイノベーションラボ」。同ラボでは、ヘルストロンの臨床研究を通じて、個人の健康状態に応じた最適な使用方法を導き出すことを目指している。
さらに、2026年2月末までに、パーソナル・ヘルス・レコード(PHR)を活用したAIアプリ「HAKUJUセルフケアサポート(仮)」の開発が予定されており、利用者に合わせたヘルストロンの使用箋を提供することで、効果的なセルフケアを支援する。
将来的には、利用者の生体情報をリアルタイムで解析し、最適な治療提案を行う「ヘルストロンAI」の開発も計画されている。
これらの取り組みにより、白寿生科学研究所は、健康寿命の延伸と「介護のいらない社会」の実現を目指している。
カリフォルニア工科大学が開発したスマートマスク「EBCare」

カリフォルニア工科大学の研究チームは、呼気から健康状態をリアルタイムでモニタリングできるスマートマスク「EBCare」を開発した。
このマスクは、呼気中のガスを冷却・凝縮して液体化し、微細なチャネルを通してセンサーに運ぶことで、亜硝酸塩(気道炎症の指標)やアンモニウム(腎機能の指標)、pH、アルコール濃度などのバイオマーカーを高感度に測定する。
これらのデータはBluetooth経由でスマートフォンに送信され、専用アプリで健康状態を確認可能。
喘息や腎疾患、アルコール代謝の管理などに活用され、在宅での健康管理や予防医療への応用が期待されている。さらに商用化に向け、センサー機能の拡張とコスト削減も進められている。
ME-BYOカルテ

神奈川県のスマートフォンアプリ「マイME-BYOカルテ」は、県が推進する「未病改善」のためのパーソナルヘルスレコード(PHR)アプリ。
歩数、体重、血圧、睡眠、食事など日々の健康データを記録・可視化し、「未病指標」としてスコア化することで、利用者自身が健康状態を把握し、生活改善に役立てることができる。
また、アプリ内では医療・健康関連のアドバイスや、協力企業・団体との連携によるポイント獲得や特典も提供されており、楽しみながら健康づくりを促進する仕組みが整っている。
収集されたデータは、地域の医療・介護サービスとの連携や、科学的根拠に基づく未病対策の分析にも活用され、住民の健康寿命延伸と予防医療の推進に貢献している。
・日本の社会保障費が、高齢化時代の到来により逼迫。未病・予防医学への関心が高まっている。健康寿命を延ばして平均寿命との差を縮めることで、社会保障費の圧縮が求められる

・アメリカにおいては、病気の治療ではなく予防に重点を置く「ライフスタイル医学」に着目する流れがある。サプリメントや行動変容のアプローチを用いて、健康的な食事、適度な運動、ストレスマネジメント、生活環境の改善を行うもの
・日本においては、予防医学のほとんどが保険適用外であり、現状定着は難しい状況といえる
・現在臨床の現場ではQOL(クオリティ・オブ・ライフ)を高めることに加えて、最後の時をどれだけ自分らしく、人間らしく迎えるかという視点が注目されている
・ディープラーニングによる画像認識等の技術が向上。膨大な検査結果から異常値を見つけることができる。人間で10日かかるものが、AIでは瞬時に行える
・ウェアラブル端末やIoT対応の検査機器から、健康状態のデータ収集を通じた、個々人に合わせた予防サービスの提供が始まっている
・ヘルスケア市場は拡大傾向で、2030年には37兆円と見込まれている。
ヘルステックは健康管理の他に、バイオ、メディカル、ゲノム、AI製薬の技術を含むようになる
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