関西電力 上田嘉紀氏 ×FPRC【前編】インフラ企業がデザインする未来の街づくり

IoT技術を取り入れ、エネルギーや交通、建物、行政サービス等のあらゆる分野を垂直統合し、効率的な都市の実現を目指すスマートシティ。私たちの生活や社会・経済活動を支える街そのものが、未来に向けて大きく変わろうとしている。

Photo by Marc-Olivier Jodoin on Unsplash

そんな中、電力自由化、蓄電池・EVの活用、サステイナブルエネルギー転換の世界的な潮流など、エネルギー業界は新時代をむかえたと言えるほど、激しい変化にさらされている。
安定的に電力を供給するインフラ企業として、長く私たちの生活や社会・経済活動を支えている電力会社は、街自体が大きく変わろうとしている未来に、どのような価値を創造し、私たちに提供してくれるのだろうか。

関西電力株式会社 経営企画室 イノベーションラボの上田嘉紀氏に、D4DR FPRC研究員が話を伺った。

関西電力 上田嘉紀氏の自己紹介

関西電力 上田嘉紀氏:

関西電力株式会社 経営企画室 イノベーションラボにて、イノベーション全般、モビリティ、DX(デジタルトランスフォーメーション)に広く関わっています。
過去には気候変動政策の対応、アメリカ・シリコンバレーにて2年、ハンズオン型ベンチャーキャピタルにてベンチャー投資に従事していた経験もあります。

藤元:企業のイノベーション部門に従事する方は、上田さんのように多様な経験・多角的な視点を持つ人が、活躍されている印象があります。今後は、このように経験豊富な人が先頭に立って、企業を引っ張っていく必要があると、個人的には思っています。

モビリティを通じて社会課題を解決していく

上田:関西電力では、昨年10月に「eモビリティビジョン」を作成し、HPに公開しています。主に、EVの普及とインフラ整備に取り組みます、という内容です。

インフラ整備という視点から、関西電力として社会課題に貢献できることをまとめた内容になっていて、対社内・対社外両面において、関西電力として目指す方向のビジョンを策定しています。
体制としてはイノベーションラボ内でユニットを作り、バーチャルで部門横断的な組織となっています。

早川:「Eモビリティビジョン」を拝見しましたが、「分散型」というキーワードを自ら入れていることに興味を持ちました。関西電力としては対抗する潮流かと思いますが、どうお考えでしょうか?サービスを展開していますね。

上田:分散化は技術革新により、安価にできるようになってきています。関西電力としても無視できないトレンドとなっており、注目すべき、と考えています。

藤元:防災的観点で、EVはどのような位置づけにあるのでしょうか?フェーズフリーや分散化は、災害対策の文脈では重要と考えられますが。

上田:災害地域にEVを活用し、BCP対応している例はあります。電力業界では、エネルギー供給強靭化法案が通ったこともあり、電力インフラ・システムを強靭にする(エネルギーレジリエンス)、という文脈になるかと思っています。

坂野:電柱データの提供とも書いてありますが、こちらはオープンデータ化していくのでしょうか?電柱をはじめとする膨大なファシリティをお持ちの会社なので、それらを活用したビジネスは大いに考えられるかと思いました。

上田:一部、有料でサービス展開するモデルは考えられると思います。関西電力一企業だけでなく、皆で電柱をはじめとしたファシリティを活用する、ということも考えています。のようにビジネスをとにかく高速に回していく精神とは、違うところかなと思います。

藤元:電力会社特有のお話ですと、電力会社による設備投資のインパクトは、地域における波及効果が非常に大きいと思います。もはや電力会社自体がエコシステム、とも言えるでしょう。
電力会社に課された意義も考えると、GAFAとは異なるエコシステムと考えられるので、今後のスマートシティを考える上では、電力会社の社会的意義や役割、ポジションは大きいと思うが、どうでしょうか?このような使命感は、貴社内であるのでしょうか?くのでしょうか?

上田:昔は乗数効果がどうか、という評価軸が存在しました。波及効果というのは、設備投資だけでなく、産業として24時間、365日やり続けるということが使命になっているので、当然あると思っています。
災害となると、現場レベルでも必至に復旧の努力をしているので、そこは関西電力に残る、良い精神だと思います。
長期的視点、長い時間をかけて構築しなければならないものも世の中にはあるので、GAFAのようにビジネスをとにかく高速に回していく精神とは、違うところかなと思います。

インフラ企業として、街づくり、ライフデザインから新しい価値を提供する

藤元:関西電力として、今後の新しい電力モデルはどうなっていくのでしょうか?

上田:今後の電力の新しい形については、分散型電源も新しい電力モデルだと思っていますし、イノベーションを取り入れていくということもあるでしょう。
エネルギー分野でグリッドという面の分野、各お客様に向けた点のサービス、その間をつなぐ線の役割を果たすモビリティ、このような新しい挑戦領域を再定義しています。社会に今後必要とされるような、ライフデザインや文化エンタメのような領域に関しても、挑み始めているところです。
今はお客様がサービスに対して様々な選択肢をお持ちなので、イノベーションに積極的に取り組むべきと考えています。います。

早川:大阪ガスはAmazonとバンドリングしたサービスを展開していますね。

※大阪ガス「電気スタイルプランP」契約期間中、Amazonプライムの年会費を負担する

上田:B2Cの部分ではお客様と接点を持ちながら、何を望んでいるのかを探っていく必要があります。Amazonとバンドリングという方向性もありますが、スマート家電の制御サービス※ や電力の見える化※ など、こういったサービスによってお客様の行動変容が見られることが、新しい動きかなと思い、注視しています。

※「はぴリモ+」スマートリモコンと連携して、家電をまとめて制御できるサービス
「はぴeみる電」電気・ガスの使用量を可視化し、エネルギー管理をサポートするサービス

藤元:貴社のビジネスをエネルギー領域と非エネルギー領域で分けて考えると、非エネルギー領域は新規事業として捉えられる。エネルギー領域では、エネルギー需要がマクロで減退していくことが考えられるが、関西電力としてはエネルギーに付加価値を付けてビジネスを継続しつつ、非エネルギー領域も成長させていくという認識でしょうか?

上田:エネルギー需要はこれまでのように伸びないでしょう。人口減少だけでなく、競争が激化しているということもあり、右肩上がりのシナリオは描けないため、いかに付加価値を付けていくかということがカギになるかと思います。
非エネルギー領域に関しては、どこまでビジネスとして大きくなっていくのか見えていないので、エネルギー事業のへこみまで補えるのかはわからず、判断するにはもう少し時間がかかるというのが本音です。

藤元:エネルギー領域と非エネルギー領域の組み合わせ、が重要になると感じます。そうすると、スマートシティはエネルギーがインフラとして存在し、その上に非エネルギー領域が乗る構造になっています。
今後スマートシティが関西地域で増えていけば、関西電力としてはビジネスチャンスかと思いますが、どうでしょうか?

上田:その通りかと思います。関西電力は、地元との信頼関係という無形のレガシーも持っていますので、スマートシティのような街づくりとは親和性が高いと思っています。また、インフラ企業として、逃げずに覚悟を持ってやっていくという意思が、最大の強みになると感じます。

藤元:早川は、石川県加賀市のスマートシティをお手伝いしているが、従来工業化社会で一般的とされていた、移住者や産業を誘致して人口を増やすモデルは終焉をむかえたように感じます。消費者の選択肢が広がる中、加賀市を好きになってもらう、短期間居住する、観光で来る、などなど関連人口が増えることで、非エネルギー領域の産業が潤うようなモデルが、今後の時代にあった新しい戦略なのではと考えています。

上田:非エネルギー事業の中で旅行事業も展開していますが、インバウンドが激減しているように、旅行や観光に関する事業は、新型コロナの影響で非常に厳しい状況となっています。ニューノーマル時代においては、バーチャルな人の移動も考えられます。例えばデータセンターが加賀市に来て、バーチャルに加賀市に移住するなどもあるでしょう。

※2019年10月1日にTRAPOL合同会社を立ち上げ、新しい形の旅行サービスを提供

https://www.kepco.co.jp/corporate/pr/2019/1205_1j.html

坂野:電力会社は最も需要予測のモニタリングを精緻にやってきた企業かと思います。今後、全産業でこのようなモニタリングをやるとなったときに、モニタリングのノウハウを横展開できるのではと考えています。
まさにデジタルツインの先行企業であるので、このあたりは強みになるかと思いますが、どうでしょうか?

上田:需要予測やモニタリングがご期待に沿うようなノウハウかどうかは分からないが、関西電力では、設備をしっかり用意して、メンテナンスを効率的に回していくということが、事業の柱となっています。
デジタルツインになると、需要側に柔軟性が生まれると思います。お客様の価値観変容、SDGsにおいて自分ができることをやっていこうという行動変容、IoTや蓄電池など技術の発展により柔軟性が生まれ、より効率的にコストを低く回していくことが求められるようになるでしょう。


インフラ整備とEVの普及による社会課題の解決を示したeモビリティビジョンからは、長く関西地域を支えてきたインフラ企業としての使命感・責任感を感じました。
また、非エネルギー領域にも果敢に挑み、お客様に価値を提供し続けていくという姿勢から、スマートシティにおける重要なプレイヤーであることを再認識した次第です。
後編では、スマートシティを軸にした街のあり方や、大企業のイノベーションの実情や所感をお話いただきました。

関西電力 上田氏×FPRC 研究員の対談後編はこちらから
関西電力 上田嘉紀氏×FPRC【後編】 イノベーションの推進で企業価値、顧客提供価値を高める

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Yoshida

専門は卸小売り、個人のライフスタイル、宗教・哲学など人文学。未来社会の事業環境整理・ 戦略コンサルティング、スマートシティ戦略立案等のプロジェクトに関わり AI、ロボット、IoT による社会課題解決に関心を 持つ。 カワイイ白犬と一緒に暮らす、ミレニアル世代。趣味は筋トレ・山登り・座禅・華道で、剛と柔の両立を目指している

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