【第4回FPRCフォーラム】
企業の未来戦略に必要な「ビジョンデザイン」とその実践 ー未来コンセプトペディア公開記念イベントー

2021年11月2日、D4DR社のシンクタンク Future Perspective Research Center(FPRC)は、2030年~2040年の未来戦略を考えるためのナレッジベース「未来コンセプトペディア」の公開を記念し、オンラインイベント「FPRCフォーラム」第4回を開催した。

今回はゲストに武蔵野美術大学教授、Xデザイン研究所共同創業者の山﨑和彦氏を迎え、 「企業の未来戦略に必要な『ビジョンデザイン』とその実践」をテーマに議論を行った。ビジネスデザインの専門家である山﨑氏は、日本IBM社でThinkPadのプロダクトデザインやブランド育成に携わり、産学連携プロジェクトも数多く手掛けている。

本記事では、その内容を抜粋して報告する。

山崎氏講演
「よりよい社会を作るために 未来をみんなで作っていく社会」

山崎氏の講演では、「ビジョンデザイン」をテーマに、日本企業の事例を交えながらお話いただいた。ここでは、一部内容を紹介する。

ビジョンデザインとは?

デザインには「現在の問題の問題解決」と、「未来のためのビジョン提案」という2つの役割があり、ビジョン提案がよりよい社会を作るためのデザイン活動として重要であるという。

「ビジョンデザイン」とは、「みらいを想うことを楽しむ」ことであり、よりよい社会を作るために「未来のありたい姿」を提案することを指す。現在、社会や技術、生活、価値観がどんどん変化する中、今あるビジョンをそのまま持ち続けるのではなく、ビジョンを作り変えるためのビジョンデザインを日常的に行う必要があると、山崎氏は話す。ビジョンデザインのためには、個人で考えることと、皆で考えることを行き来することが重要であるという。

ビジョンデザインの原動力は、こんな社会であってほしいという「個人の妄想と熱い想い」であると、山﨑氏は話す。また、ある状況を設定したアイデアの「体験的なプロトタイプ」を作り、体験することを繰り返すことで、「ありたい未来の姿」が見えてくるという。

共創することでいいものができるという側面もあるが、ビジョンを作る場合は個人の想いを大事にすることも重要であり、個人の想いをつなぐツール、やり方が必要である。そのための「ビジョンマップ」「バウンダリーオブジェクト」「デザインパターン」という3つのアプローチを紹介いただいた。

ディスカッション
ビジョンデザインを企業で実践するためには何が必要か?

ディスカッションでは、「ビジョンデザインを企業で実践するためには何が必要か?」をテーマに、①分業化社会におけるリベラルアーツの重要性、②アート思考と「自分ごと化」、③ビジョン・企業文化を作り変えていくとは、の3点について議論した。

①分業化社会におけるリベラルアーツの重要性

藤元:

リベラルアーツは企業の構成員にとっても重要であると思いますが、山崎先生はどうお考えですか。

山崎氏:

今の社会は分業化しています。分業は効率的で、あるフレームワークが出来上がっていれば分業化すると効率的です。ところが、現在のようにフレームワークを作り変えていく必要がある時代には、従来の分業化の考え方ではうまくいきません。別の部門の人とはうまく話ができない、ということが起きている中で、共通に持っている知識や経験がないと、協同してビジョンを作ることができないんです。ツール自体ももちろん大事ですが、ツールを使う前提となる共通の考え方やスキルもないと、ツールを活用できなくなってしまいます。リベラルアーツという考え方は、皆が広く、場合によっては芸術的・文学的な領域も含めた知識を持つことで、未来を豊かに考えられたり、バウンダリーを超えるようなアイデアや共通項が出てくるということではないでしょうか。

藤元:

分業化すると、担当分野のことは勉強しますが、それ以外のことは人に任せてしまうということがどうしても起きがちで、かといって研修で全員に知識を詰め込むかというとそこまでの時間はないでしょう。企業で今、全員が共有すべき知識は何かも重要になりますね。

山崎氏:

そうですね。ビジョンを作ったうえで、ビジョンにふさわしい、共通で持っていないといけないものを考える必要があります。例えば、IBMは1997年に「eビジネス」の概念を提唱しましたが、最初は皆eビジネスが一体何のことなのか、よくわからなかった。eビジネスが何かを皆が共通に理解することから次の世界が始まってくるということですね。

藤元:

今の人事・人材開発では、リベラルアーツのような考え方はあまり取り入れられておらず、業務スキルなどが中心になっていますが、企業も構成員がリベラルアーツを身につけるための取り組みを行くべきなのでしょうか。

山崎氏:

分業化し、人間を機械と捉え「あなたはここの歯車をやりなさい」というような考え方から転換しないといけないと思っています。人間主義的経営という考え方に近いですが、一人ひとりが人間として価値観を持って、家族や地域を大事にしている、そういうふうに考えていかないといけません。一人ひとりの価値観を大事にしていくうえで、リベラルアーツの役割は大きいのではないかと思っています。企業もどう取り組むかを考えていかないといけないでしょう。

②アート思考と「自分ごと化」

藤元:

山崎先生の講演の中でアート思考についてお話しいただきましたが、個人がアート思考で考える時間や行動について、ヒントがあれば教えて下さい。

山崎氏:

アート思考というと言葉が重いですが、子どもの頃は楽しんで絵を描いたり、歌を歌ったり、妄想したりしていたわけですよね。そういった自分が楽しいと思う気持ちをもう一度大事にするということですね。例えば、美術館に行ったときに、一つ一つ解説を読みながら順番に見ていかないと、と思ってしまいがちですが、自分の中で気に入った作品をじっくり見ればいいんです。楽しいと思うことを素直に感じてより楽しむということがアート思考の原点なので、会社でも楽しいこと・おもしろいことはたくさんあるし、そのように広く捉えられるようになると、ビジョンを考えたりする際にも変わってくると思います。

藤元:

アート思考は気づく力を磨くことでもあるんでしょうか。

山崎氏:

そうですね。童心に帰って自分が楽しい、面白いと思うことを話して良いんだ、ということからスタートすると、自分も気づくし、周りも気づきます。

坂野:

自分ごとで感じたり表現したりすることが今一番欠けていると思っています。未来のことをテーマにするときに、「それは本当にあなたが望む未来ですか」と問いかけることが多いですが、それに対して「実はこう思っている」と語れるような心の状態が重要だと思います。

ビジョンデザインと「未来コンセプトペディア」

FPRCが公開した2030年~2040年の未来戦略を考えるためのナレッジベース「未来コンセプトペディア」は、本イベントのテーマであるビジョンデザインのツールの一つとして活用できる。

個人の想いと組織のワークをつなぐには、バウンダリー・オブジェクトのような、組織の構成員が共通に理解できる形式知化されたツールが必要である。未来予測の分野には「スキャニング・マテリアル」と呼ばれるツールを使う手法があるが、専門的な知識がないと使いこなせない難しい手法である。

FPRCは、誰でも使えるよう、今まさに日本企業に必要であると考えられることを標準化・可視化することで未来コンセプトペディアを作成した。ビジョンデザインに活用いただければ幸いである。

未来コンセプトペディアは未来創造に役立つ集合知として質を高め続けて行くための共創の取り組みを行っている。様々な方面の有識者の方々、学者・研究者の方々、企業の実務家の方々などに、「未来コンセプトペディア」について

・注目する未来コンセプト
・追加したほうが良いと考える未来コンセプト

の2点についてご意見をいただき、常に「未来コンセプトペディア」の更新を行っていく予定である。
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