オムニチャネル時代の店舗のあるべき姿「本質回帰」と「体験価値化」vol.2

店舗がコミュニティと化する

vol1にて、「店舗の役割は体験価値を提供すること」と定義づけました。

店舗が「体験価値を提供する場」となった場合、顧客にとって、店舗はどのような存在になっていくでしょうか?

・ブランドを好きな人が集まるコミュニティ
・ブランド体験のショールーム
・その場ですぐ商品を買って、持って帰れる
・よく顔を知った人と関係を持てる場所
・商品について相談できる場所
・リアルな商品に触れられる場所
・商品開発につながる、意見を言う場所

上記のように多様化すると考えられます。

画像1: ※D4DR作成

※D4DR作成

店舗はより「コミュニティ」としての性格を強め、店舗と顧客の結びつきはより強固になることが予想されます。

それにより、スタッフと顧客の関係にも変化が生まれるでしょう。
スタッフは商品を売るためだけのコミュニケーションから解放され、より顧客に寄り添ったコミュニケーションに専念できるようになります。

これは、スタッフ・顧客両方にとってメリットであり、良好な関係を築きやすくなるのではないでしょうか。

店舗スタッフに求められるスキルとは?

それでは、スタッフの役割はどのように変化し、どのようなスキルが求められるようになるでしょうか?

店舗の役割が「ブランド体験をしてもらうこと」「来店して満足してもらうこと」に変化をすると、スタッフは顧客とのより円滑なコミュニケーションが求められます。

下記データを見ると、顧客は商品の背景やストーリーを知り、それも含めた価値を享受したい傾向が強くなってきていることが分かります。

画像: 出典元:生活者の「社会的意識・行動調査」結果  50%超の生活者が、商品の「安さ」より「社会性の高さ」を評価!(@press) www.atpress.ne.jp

出典元:生活者の「社会的意識・行動調査」結果  50%超の生活者が、商品の「安さ」より「社会性の高さ」を評価!(@press)

www.atpress.ne.jp

※ストーリーを含めて商品ととらえる傾向が、強まっている。

ブランドコンセプトを顧客に周知し、商品の魅力・価値をいかに的確に伝えられるか。顧客の要望をくみ取り、それに合った提案ができるか。これらのスキルが強く必要になると思います。

また、スタッフは、より商品に対する専門性の高さが重視されるでしょう。

店舗発信で、商品開発・ブランド構築へ

スタッフが、商品に対する専門性の高さを重視されるメリットは、今までより商品と向き合う時間・機会が増えることだと考えます。

商品の魅力や価値を的確に伝えなくてはならないので、必然的に商品のより深い知識が入り、それに対する顧客の反応を収集・分析することも可能となるでしょう。

その店舗ごとの顧客の特徴・嗜好を的確に捉えられるのは、やはり最前線にいるスタッフです。しかし、現状その情報が生かされているとは言えず、宝の持ち腐れとなっているメーカーも少なくないと聞きます。

これから求められるのは、その吸い上げられたデータを生かして、商品開発やブランド構築につなげることではないでしょうか。

画像2: ※D4DR作成

※D4DR作成

店舗とブランドの関係は上の図のように変化するでしょう。

今までは同じブランドの元、マニュアル通りに、どの店舗へ行っても同じサービスが得られる、ということが重要視されてきました。

しかし、同じ日本国内でも関東と関西の顧客では、求めているもの・ことが異なります。同じブランドだから同じ価値を提供する必要はなく、その店舗の顧客に合った商品を置き、顧客に合った商品開発やブランド構築が必要になるのではと考えます。

近年の顧客は他の人と同じものを求めない傾向が強くなってきました。市場のグローバル化により、顧客の「欲しい」が多様化・複雑化し、大量供給される商品に魅力を感じなくなってきています。

画像: 生活者1万人アンケートにみる 日本人の価値観・消費行動の変化-第七回目の時系列調査結果のポイント-(野村総合研究所) www.nri.com

生活者1万人アンケートにみる 日本人の価値観・消費行動の変化-第七回目の時系列調査結果のポイント-(野村総合研究所)

www.nri.com

様々な選択肢が生まれる中で、「自分に合った商品」「世界に一つだけの商品」と言ったような、他とは違う自分のこだわりを重視する傾向にあると、アンケートも示しています。

マス的に与えられる商品が売れる時代は、終わりに近づくと言えるでしょう。

具体的な体験価値

顧客に寄り添った店舗づくりが提供されたと仮定すると、店舗は一つの価値を提供する存在にとどまらなくなるでしょう。
「体験価値」を提供するためには、複合的な価値を提供する必要が出てくると考えます。

異業種をミックスした価値の提供、「そこだけ・今だけ」をオンタイムで発信できる仕掛けを用い、顧客の興味・関心を強く惹くことが、来店訴求につながると予想されます。

いくつか考えられる仮説を挙げてみます。

①IoTを用いたもの

VR、ドローン、AI等、時代の最先端デバイスを用いて、そこでしか体験できない内容を提示します。

例)
・VRを用いて商品のタグを読み取ると、商品のバックストーリーがリアルに体験できる

・深夜であっても、店頭スタッフの知識がインプットされたAIロボットが、店頭で応対してくれる

画像: 出典元:三越伊勢丹×DHGS 店頭デジタルプロモーション(デジタルハリウッド大学) gs.dhw.ac.jp

出典元:三越伊勢丹×DHGS 店頭デジタルプロモーション(デジタルハリウッド大学)

gs.dhw.ac.jp

※伊勢丹新宿本店メンズ館で一昨年展示された、商品ストーリーをVRコンテンツで確認できる取り組み

②異業種ミックスで、「ここだけ」の体験価値を提供する

異業種とのコラボを行い、双方の価値を提供することで、顧客に新鮮さや新たな発見を与えるものです。

例)
・飲食×アパレルなど。コーヒー店とアパレル店を一時的に融合させ、2つの業種のストーリーを提示する
(コーヒー殻を使った服、コーヒーで染色した服、コーヒーと服の原料の産地が同じ、などストーリーに必然性を持たせる)

・スタッフや常連顧客の趣味や特技に関する、教室・ワークショップを開催
(スタッフの特技である、アクセサリー作りを体験する教室など)

画像: 出典元:【新所沢パルコ】コーヒーの出がらしを使って消臭剤をつくろう(無印良品公式サイト・イベントページ) www.muji.com

出典元:【新所沢パルコ】コーヒーの出がらしを使って消臭剤をつくろう(無印良品公式サイト・イベントページ)

www.muji.com

※無印の店舗で様々なイベントが店舗ごとに用意されている。これは、コーヒーの出がらしで消臭剤を作るイベント

③3Dプリンター等を店舗に設置し、顧客に合った商品を即座に提供する

技術革新によって工場生産機能が小型化し、店舗でオンデマンド生産が可能になるものです。

例)
・3Dプリンターで好きなラテアートのコーヒーが提供される

・顧客にピッタリサイズのTシャツを、店舗の自動編み機で作製・販売できる

画像: 出典元:This robot can 3D-print and bake a pizza in six minutes(BUSINESS INSIDER) www.businessinsider.com.au

出典元:This robot can 3D-print and bake a pizza in six minutes(BUSINESS INSIDER)

www.businessinsider.com.au

※ピザを作る3Dプリンター。好きな形、好きなソースを選ぶことができ、人間が焼くよりも早く商品を提供できる(写真はハート型のピザ)

これらを一例として、店舗にて「体験価値」を提供することで、顧客が集まり、コミュニティが形成されるでしょう。

このコミュニティが、高いブランド価値を生みだすと、私は考えます。

最終的に店舗はどのような存在になるのか?

店舗はまず、スタッフが楽しく働き、来店する顧客にとって「楽しい」環境であるべきです。それにより人が集まりコミュニティ化し、店舗から価値を発信・創造するのです。

「楽しい」店舗とはどのような存在であるのか。スタッフと顧客の両面から、考えられる事柄を抜き出し、この記事のまとめとします。

〇スタッフにとって
・金額をいくら売ったかで評価されることなく、顧客に上質な体験価値を提供することで、評価される
・商品を売るためだけのアプローチをせず、顧客に喜ばれるコミュニケーションを第一に考えて接客できる
・陳列された商品についての魅力・価値について向き合う時間が増え、自分が本当に良いと思う物をオススメできる
・顧客の特徴や嗜好を取り入れ、顧客に受け入れられる店舗作りができる
・店舗で異業種に触れることができるなど、多様な価値に触れる機会がある
・在庫整理に追われることなく、顧客との時間を確保できる

〇顧客にとって
・商品を購入しなくては、という精神的プレッシャーから解放された状態で、ブランド体験ができる
・陳列された商品のバックストーリーや価値を知ることができ、満足した上で購入ができる
・店舗が購買の場ではなく、自分の学びの場や居場所、誰かとコミュニケーションする場となり、行くと満たされる
・自分の趣味・嗜好が店舗の商品やイベントに反映され、欲しい物や情報を手に入れることができる
・店舗を核としたコミュニティに参加でき、店舗を盛り上げる一員として活躍できる

店舗が「楽しく」あるために、顧客同士が盛り上がるコミュニティを提供できるかという点がポイントになると考えます。
顧客へのマス的アプローチが力を失いつつある中、顧客が本当に価値を感じたものが自然とコミュニティの中で広がっていき、店舗に反映されるという流れが、今後は支持されると私は信じています。

執筆:D4DRアナリスト 吉田

 

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