パンデミックにより高まった問題意識から、未来の住宅のあり方を描いた(住環境研究所様)

未来シナリオ創発、新規事業創発、新商品・新サービス開発等をサポートする、「D4DR・超長期戦略共創プログラム」サービス。

今回は、実際にサービスを活用いただいた、株式会社 住環境研究所の乾信哉様にご協力いただき、サービス利用後の率直なご意見をお話いただきました。

今回の住環境研究所様のプロジェクトにおいては、

●分かりやすく実践的なフレームワーク(都市OS)や手法(インパクトファクターワークショップ)をご提示できたこと
●オンラインウェビナーによる住環境研究所の研究や取り組み、思いの発信とリーチができたこと
●今後の事業・サービス戦略において、自社で出せなかった切り口、アイディアが出てきたこと
●体系的な整理ができたことで、社内への説明がしやすくなったこと

などを評価いただきました。そのプロセスや経緯等の詳細を、インタビューで伺いました。

住環境研究所について

住環境研究所は積水化学・住宅カンパニー(セキスイハイム)の調査研究機関です。1975年より、住意識など住まいに関することはもちろん、エネルギーや環境、家族形態や加齢といった、広く暮らしにかかわる生活者の意識を様々な角度から調査・研究し、積み重ねてまいりました。
しかし今回、新型コロナによるパンデミックが起こったことで将来への不確実性が高まり、漠然とした不安を感じるお客様も増えたのではと考えました。やはり、お客様とは未来の視点からもお話しをしていくべきなのでは、と問題意識が高まりました。

住環境研究所:乾 信哉氏
1999年積水化学工業に入社。以降、15年にわたり神奈川県内でセキスイハイム の新築営業を担当。2015年(株)住環境研究所_事業戦略研究室に出向。2020年より情報企画室に配属。未来を起点とした住関連の研究テーマ探索に従事。

お問い合わせの経緯

新型コロナによるパンデミックが、今後の住宅業界に大きな影響を及ぼすのではないか、転換期ではないかという問題意識を持ちました。
「コロナ後の未来シナリオ」を創るべく、最初は様々なパブリックデータを閲覧し、フォアキャストで試行錯誤を繰り返しました。しかし、情報量も多く、取りまとめていく過程で行き詰りを感じていました。
そんな時、D4DRの特集テーマ記事「アフターコロナ時代のビジネス戦略」を発見したことが、D4DRとの一番最初のタッチポイントでした。

アフターコロナに関する様々な記事を閲覧するなか、直近でウェビナーを開催することを知り、お試しで参加することにしました。

元Google村上さんのざっくばらんなご意見がとても面白く感じたこと、ウェビナーで提示された「変化シナリオチャート」を見て、アウトプットへのヒントがあるのではと感じ、問い合わせをしたというのが経緯になります。

今回ご依頼いただいたプロジェクトに関する所感

藤元:

お問い合わせをいただいてから、今回はこのようなフローでご支援させていただきました。
まずは弊社の未来ナレッジを活用したセッションを行い、未来の変化視点から住宅やそれを取り巻く街、価値観変化などの方向性をまとめ、未来の住宅の方向性フレームをお示ししました。
その後、貴社の方で住まいと結びつきの深い4つの領域「ウェルネス・学び・消費・働き方」をご提示いただき、それぞれの領域における未来の方向性イメージをご提示しています。
4つの領域における未来の方向性から、合計約150項目のインパクトファクターを洗い出し、それぞれに対する評価をいただきました。30名ものグループ社員の方に評価をいただき、この評価結果も有意義なアウトプットになったかと感じています。
そして今回は貴社の乾さん、嘉規さんにも登壇をいただき、オンラインウェビナーも開催いたしました。こちらは約80名の方に参加をいただき、非常に面白い意見が聞けたこと、オープンにJKKの研究に関心を持ってもらい、弊社ネットワークを活用して広くリーチすることができたかと思います。
最後のアウトプットでは、インパクトファクターの評価結果も反映し、未来の住宅における必要機能・サービスの洗い出し。そして、より経営・事業計画に近い事業拡大のための新たな視点や、サービス体系の新たなモジュールを提示させていただきました。

乾:

未来コンセプトセッションでの「バックキャスティング思考」、周りの環境や未来がこうなるから、結果住宅がこうなる、という視点が新しく感じました。そこで提示された「都市OS」のフレームワークは、分かりやすく実践的であると思いましたので、現在社内で住まいレイヤーという名称で活用をしています。

4つの領域のインパクトファクター洗い出し・評価ワークショップについては、非常に面白かったので今後社内でまた実施したいと考えています。今回は若いメンバーにも評価をしてもらいましたが、未来を非常に前向きにとらえていて、「こういう未来になったら素敵だよね」との言葉も聞かれたりして、嬉しく感じました。

視聴者参加型オンラインウェビナーについても、社内やグループの社員も視聴してくれましたが、各人から良かったと感想をもらいました。このような取り組みは、自社でも続けていきたいと感じました。

イベントの詳細レポートがご確認いただけます

最後のアウトプット、事業拡大のための新たな視点・改善案商品・サービス体系のモジュール定義については、やはり自前では出てこない切り口・アプローチがたくさん出てきたな、という感想です。未来を捕捉しておくためには、なりたい未来像を構築することも重要ですが、脅威シナリオや問題意識も持っておくことも重要だと、気づかされました。

プロジェクト全体を終えて、出てきた資料を元にすると、社内への問題意識の投げかけや説明が格段にしやすくなりました。

藤元:

お役に立てたようで、弊社としては嬉しい限りです。逆に、ここはもっとこうだったら良かったなど、改善点はあるでしょうか?  
                       

乾:

今回、未来社会コンセプトシートはすべて熟読しました。基本的にテキストベースのシートではあるので、読んでいてしんどかったのはあります。もう少し、ビジュアライズされていたり、動画があるなどすれば、より理解しやすかったと思います。
あと、海外のケーススタディに対しては、その事例をドメスティックな業界、ひいては住宅業界でどう活用していくのか、をあてはめて示唆してくださるとわかりやすかったかと思います。

住宅業界に対する脅威の認識

藤元:

ご指摘いただいた資料のビジュアライズ化は、現在D4DRでも注力して改善しようとしているところです。
海外のケーススタディに関しては、住宅に関係のあるところだと、EUでは新しい資源を極力使用しない方向に規制が進んでいます。個人データ保護の規制であるGDPR(EU一般データ保護規制)でも見られるように、EUの規制は日本に導入されるケースがみられますので、海外事例とはいえ注視しておいたほうが良いと、個人的には感じます。

坂野:

海外では、GAFAやTESLAのようなゲームチェンジャーが市場を席巻する例が数多くあります。それが自分の業界にとってどのくらい脅威なのか、事前に予測しておかないと、5年10年であっという間に対応できなくなってしまった業界も、残念ながらあります。
例えば住宅業界では、TESLAの例は脅威と考えるべきです。TESLAはパネル・電池も自前で調達し、ビジネスモデルにおいても消費者から屋根を借りて、自動的に仮想発電で(消費者に代わり)売電するなど、全く新しい発想で顧客を刈り取りにきている。
突然日本に参入して、いつの間にか顕在化してしまって打ち手がない、ということに陥るケースも考えられなくはありません。
このようなストーリーでお伝えすれば、海外のケーススタディについても、自社のビジネスとの関連性をより理解していただけたかもしれませんね。

乾:

コロナ禍による「衣食」業界の大変な状況に比べると、「住」業界では深刻なニュースが多くないように見受けられますが、果たして安穏としていて良いのだろうかと、問題意識を持ちました。今回のプロジェクトを経て、脅威シナリオを念頭におくこと。そのような脅威に対抗するために、他企業・他業種とのアライアンスや価値提示の方向性など、共創のかたちで試行錯誤をして備えておくことが重要と、再認識しました。
「より素敵な未来を創っていくため」「幸福を追求していくため」「お客様の将来設計に対して寄り添っていくため」そんな理想や想いを現実にし、メッセージとして伝えていくために、共感・共創していける仲間をどんどん作っていきたい、巻き込んでいきたいと強く思っています。

D4DR超長期戦略共創プログラムの今後

藤元:

未来に対しての体系的・網羅的フレームワークを所持していること、また様々な企業とのつながりから、新たな共創の形を提示していけることはD4DRの強みだと自負しています。乾さんの想いを叶えるべく、まだまだお手伝いできそうですね。

乾:

メディアに出演していたり、多種多様な分野のエキスパートの方々と知り合えることは、事業創出において”膠着状態”にある方々にとっては、期待しているところなのではと個人的に思います。

藤元:

手法として、今回のようなウェビナーを通じて顧客や仲間に問うていくだけでなく、有識者を集めて会議を開き、イノベーター的意見を汲み取っていくのもオススメです。そういう方々は、良い未来も悪い未来も見通しているので、メタ的に未来を俯瞰した意見が聞かれ、非常に参考になります。

坂野:

それらをよりナラティブにまとめていくこと。例えば、脅威に対しての打ち手や、会社として将来こうあろう、という話に集約できると、他の社員や経営陣、他部署を動かしていくことができるのかなと思います。周りが動き出せば、バックキャスティングアプローチの強みが生かされていくのかな、と感じました。

藤元:

現在、D4DRの未来ナレッジは主に2030年をスコープにしています。今後は2040年もスコープに入れたナレッジの蓄積、フレームワークの更なる整理など磨きをかけているところです。
引き続き、「共創」の形による新規事業や新しい価値の創造、エコシステムの構築等を、業界横断的視点からサポートしていくことを使命と考えています。未来に向けてより良い世界を創っていくために、貴社もそのパートナーとして、引き続き良好な関係を築いていきたいと考えていますので、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

乾様からご意見いただいた「未来社会コンセプトシート」については、その後社内で検討を重ね、より視覚化をするために「未来コンセプトペディア」と名称を変え、弊社WEBサイト上で公開することといたしました。
https://www.d4dr.jp/fcpedia/
※10月1日、公開いたしました。ご意見・ご感想お待ちしております。

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