エンジニアの新たなロールモデルを自ら創る:西脇資哲 第2回
執行役員までのぼりつめた日本マイクロソフトのエヴァンジェリスト 西脇資哲氏に、エンジニアとして追求してきたキャリアについて聞いたインタビュー
良き経営者に恵まれたから今の自分がある
— 西脇さんは、役員の肩書きをお持ちですが、直属の部下はなし。会社の役員としてはかなり異色ですね。
私もそう思いますよ(笑)。会社の役員なら、部下がいるのは当たり前で、人・組織のマネジメントにも携わっているのが普通です。ところが私の場合は、直属の部下はゼロ。かなり異色の役員に見えるはずです。ただし、お客様が私に期待しているのは、「マネジメントの西脇」ではなくて、「エンジニアの西脇」です。「どの技術が、どんなメリットをもたらすか」を分かりやすく伝えてほしいというのが、私に対するお客様の要求であり、期待なのです。
— 役員には、人材の育成という任務も背負わされると思うのですが。
それに関しては、私と一般的な役員と私は教育・育成の対象は変わらないと考えています。どの会社においても、役員は直属の部下しか教育しない、ということはありません、組織全体の人材育成に力を注ぎます。私の場合は会社組織全体はもちろん、IT業界全体の人材、あるいは、お客様/パートナーも対象になるということです。
— 西脇さんが目標にした方はいますか。
それは、いませんね。特定の個人や上司をロールモデルにすると、視野が狭くなるからです。とはいえ、30代後半にこう言われたことがあります。「西脇さんは、1つの会社のエバンジェリストではなく、業界全体のエバンジェリストになるべきだと思いますよ」と。この言葉は、エバンジェリストとしての今の方向性を決めるいいきっかけを与えてくれましたね。
— 確かに、現在の西脇さんは、IT業界はもとより、IT業界の枠を越えて、さまざまなフィールドで活躍されています。そこまで、幅広い分野で活躍できる能力をなぜ獲得することができたのですか。
最大の理由は、優秀な経営者に恵まれてきたからです。日本オラクルに在籍していたときは、佐野力氏と新宅正明氏が、日本マイクロソフトへ移ると樋口泰行氏が、私の上司。どの方も、私の活動に一定の自由度を持たせてくれましたし、私の主張や意見を柔軟に聞き入れてもくれました。それが活動の幅を広げる原動力になったと考えています。
また、エバンジェリストの醍醐味の1つは、彼らのような優秀な経営者を自分の思うように動かせることなんです。「上司の命令に従って、成果を出して認めてもらう」といった受け身のスタンスでは、エバンジェリストは務まりません。ですから逆に、経営者と厚い信頼関係を築くことが、エバンジェリストにとってとても大切になるんです。
— そうした経営者との信頼関係は、経営者や会社に相応のバリューをもたらさなければ、築くことはできませんよね。
そうだと思いますし、私にはそうしてきたという自負もあります。実際に必要であれば社長をミーティングや会食への同席などをお願いしたり、メディアに露出してもらうこともできます。そんなエバンジェリストの面白さに気づいたのは、30代後半のころでしたね。
【プロフィール】
西脇資哲(にしわき もとあき)日本マイクロソフト 業務執行役員 エヴァンジェリスト
1969年8月18日生まれ、岐阜県出身。業務アプリケーションソフト開発業務、ISPの立ち上げなどを経験した後、日本オラクルに入社。プロダクトマーケティング業務やエバンジェリストを担当。12年間在籍した後、2009年12月にマイクロソフトへ移籍しエヴァンジェリストへ。テクノロジーやプレゼンテーションの講演・執筆にも精力的な活動を展開。マイクロソフトだけでなく、さまざまなテクノロジーに精通する。著書に「エバンジェリスト養成講座 究極のプレゼンハック100」(翔泳社)「エバンジェリストの仕事術 自分の価値を高め、市場で勝ち抜く」(日本実業出版社)
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