【イベント報告】1/27第44回NRLフォーラム 「コロナ禍に引き継いだ老舗若手社長が仕掛ける伝統とイノベーション」

Next Retail Labの第44回目のフォーラムが1月27日に開催された。

今回はゲスト講師として株式会社山本海苔店 代表取締役社長の山本 貴大 氏をお招きした。NRLフォーラムのご登壇は3度目となる山本氏だが、2021年7月に現職に就任され、伝統ある老舗企業を牽引していく立場としての挑戦や展望について伺うことができた。

山本 貴大 氏

1983年東京都生まれ 慶應義塾大学法学部卒業。東京三菱銀行へ入行法人営業などを経験。
2008年山本海苔店入社。山本海苔店子会社・丸梅商貿(上海)に勤務し、おむすび屋「Omusubi Maruume」の立ち上げ、シンガポール髙島屋、台北三越店と海外店舗立上げに参画する。
現在は1849年創業「山本海苔店」の170年続く事業の7代目を受け継ぐ立場として尽力している。

革新によって繋いできた伝統

創業から170余年の歴史を持つ山本海苔店は、経営者の代替わりを重ねながら、時代に合わせた革新的な展開によって、海苔業界の発展に貢献してきた。その一方で、一貫して香りが豊かな高品質の海苔にこだわっており、長い歴史の中で多くのファンを獲得していることもまた事実である。そして社会環境の変化が著しい今、さらに新たな革新によって、山本海苔店の伝統が次の時代に受け継がれようとしている。

海苔業界の危機

しかし、海苔産業の中でも特に高品質な海苔が取り扱われる贈答用海苔の市場は顕著に縮小を続けている。物流技術の発達や価値観の変化が主な理由と考えられるが、市場の縮小は一次生産者にも影響が及び、最終的に高級海苔が姿を消してしまう懸念さえある。

新たな挑戦に向けて

そんな海苔業界の危機に対抗するべく、山本海苔店も21世紀に入ってから販路拡大や海外展開といった施策に挑戦している。それでも、これまでの百貨店を中心とした営業基盤が揺らぐという危機感が社員の中で浸透せず、社内が分断されつつあったそうだ。そこで山本氏は、まず経営の教科書的な基礎から取り組みを始めたのだという。

山本海苔店には、代々伝わる行動原理「良品廉価」「品質第一」があった。山本氏はこれをもとに、社内の意識を統一するための「共通の理念」を社員と創り出し、それに基づいて営業戦略を考えるというフローを実施。その結果、「よりおいしい海苔を、より多くのお客様に楽しんでいただく」という共通の目的に向けた商品・売り場展開が検討されるようになったということである。また、商品の原価などの情報を公開し、社員一人一人が業務を自分ごととして捉えられる仕組みづくりも進めてきたことで、社内の意識は徐々に揃いつつあると山本氏は語る。

その内情に関しては、ディスカッションでも話題に上がった。以下に一部を抜粋する。

逸見氏(フェロー):原価が公開されたことで、社員も売上しか見ないのではなく、利益を意識するようになったことは山本海苔店にとっても大きかったのではないか。

山本氏:これまでの時代は売上が上がれば利益がついてきていたが、今はそうではない。社内での情報公開はメリットのほうが大きいと考えて実施している。

逸見氏(フェロー):危機感の共有や、信頼関係構築にもつながる。

藤元(モデレーター):見えることによって改善案なども社員から出やすくなるだろう。

川添氏(フェロー):原価などの情報公開に際しての拒否感は他の業界でも大きい。変革を起こすには、少しずつ味方を増やしていくしかないと感じている。

山本氏:味方を増やせたのは、昔からの百貨店ビジネスの中にいなかったためだと思う。海外事業やECなどの新しい部署でともに経験を積んだ、お互いに信頼関係のある人が何人かいたおかげで、「うねり」を起こすことができた。

市場の縮小による産業全体の品質・供給の維持困難化は他の業界でも多く見られる課題であるが、長期的に社会の変化を俯瞰することで、別の提案によって新たな市場を創出するなど道を切り開く余地はまだある。長年リーディングカンパニーとして様々な革新を重ねてきた山本海苔店で、さらに先の未来まで見据えた挑戦のために社内の基盤を整えてきた新社長。その次の一手に注目と期待が集まっている。

山本海苔店の次のアプローチとは

これからの展開について、ディスカッションパートではフェローも交えて議論を行った。他の業界にも通じるマーケティング的アプローチや新たなサービスコンセプトのヒントが含まれるコメントの一部を紹介する。

山本氏:今後はもっと海苔に関する体験を含めて提供していきたい。海苔の「一番美味しい食べ方」を提案するような飲食店も構想している。

逸見氏(フェロー):海苔業界を挙げて、「海苔をこう食べてほしい」という海苔自体のブランディングができるとよい。海苔に対する好みが様々な以上、それを逆手に取って「このシーンではこの海苔」といったPRをするのがよいかもしれない。基準が明確化されてそれぞれの楽しみ方が確立されれば、お客様もいろんなシーンで選ぶことを楽しめるし、語りたくなる。

坂野氏(フェロー):様々な海苔を食べ比べて体験として楽しめるコンセプトは、昨今他の食材でも挑戦されており、顧客体験価値が高いのではないかと感じる。

ディスカッションの後半は各メンバーの知見を活かしたブレストとなったが、視聴者の方にもイノベーションの種を持ち帰っていただけたのであれば幸いである。

老舗企業の伝統とはイノベーションの連続によって成り立っており、そのイノベーションのためには、都度改めて社内で意識を共有することが必要になる。山本氏の講演とディスカッションを通して、これまで積み重ねてきた歴史を踏まえつつ未来のビジョンを持つことで、業界の発展にもつながるということが再認識された回となった。

※本記事はNext Retail Labから許諾を得て元記事と同内容にて掲載しております。
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