OMOとは?スマホ決済や中国・米国小売業から日本のOMO推進について考察

2019/7/24に開催した第25回Next Retail Labはゲストに、株式会社デジタルシフトウェーブ代表取締役社長の鈴木康弘氏、游仁信息科技(上海)有限公司シニア・マネージャー家田昇吾氏、ジャーナリストの津田大介氏を招きました。三者の講演をもとに、スマホ決済を普及するために必要な要素や、OMOを推進するために必要な戦略などについて考えていきます。それぞれの講演テーマは下記の通りです。

鈴木氏:AmazonやウォルマートなどIT投資を積極的に行っている米国小売業者の例などをもとに、デジタルシフト成功への道について
家田氏:WeChat Pay(weixin)や、Alipay(アリババ)など中国のモバイルペイメント(スマホ決済)事情と、中国新小売について
津田氏:メディアのサブスクリプションモデルや、新聞社の未来について
※Next Retail Lab:D4DR株式会社代表の藤元が幹事を務める、小売業の今とこれからを考えるフォーラム

OMOとは(O2Oとの違いは?)

OMOとは、「Online merges with Offline」の略であり、日本語に訳すと「オンラインとオフラインの融合」です。O2O(Online To Offline)が、オンラインからオフラインへ誘導・送客する、という概念であったのに対し、OMOはオンラインとオフラインという概念を取っ払ってユーザーの行動をデータ化・活用することでユーザー体験を統合的に向上させる、という概念です。例えば、ユーザーは、リアル店舗に陳列されている商品のQRコードをスマートフォンで読み込むと、商品の詳細やレビューを閲覧することができます。サービス提供側は、商品情報を読み取ったユーザーの詳細(いつ、誰が、どこで)がデータ化され個別IDに紐付けられることで、個人に適したクーポンやコンテンツなどを配信することができます。さらに、ユーザーがスマホで決済することで購買情報も紐づけることができます。

このような、OMOという概念は、中国でモバイルペイメント(スマホ決済)とQRコードの普及に伴って、広まっていきました。

中国の小売とスマホ決済(游仁信息科技(上海)有限公司家田昇吾氏による講演)

游仁信息科技(上海)有限公司家田昇吾氏は、中国のモバイルペイメント事情と中国新小売について講演を行いました。本記事では、中国のスマホ決済について主に紹介します。

中国のモバイルペイメント事情と日本のスマホ決済の課題

日本では、2019年7月現在、LinePayやメルペイなど、スマホ決済事業者によるポイント還元合戦が激化しています。しかし、それでも中国ほどモバイルペイメントが普及していないのが現状です。なぜ中国ではモバイルペイメントが普及したのでしょうか?家田氏の講演の中で、その理由の一つとして挙げられたのは、中国ではQRコードが流行した2013年に、日本のsuicaやPASMOのような非接触カードがほとんどなかったことでした。また、中国では、個人間送金に関する法律がおそらく存在しないため、個人間送金を始めるためのハードルが低く、さらに銀行口座との連携が容易であることなども考えられる、といいます。

銀行口座との連携を日中間で比較してみましょう。日本では銀行口座との連携をする際、連携する銀行のwebサイトも含め約8枚の画面に入力する必要があります。さらに規約など、登録意向者が読まなければならない情報も多く、ワンタイムパスワードや通帳記載残高の入力が必要です。それに比べ中国(wechat pay)では、wechat pay内の5つの画面のみで完結し、読まなければならない情報も多くありません。ポイント還元のために、スマホ決済を始めようとしたけれども、登録作業が煩雑で途中で挫折したという方も多いのではないでしょうか。「登録の煩雑さ」は、日本のモバイルペイメント事業の一つの課題とも言えるでしょう。

家田氏はさらに続けます。「中国のモバイルペイメント事業者の争いは、決済だけにとどまらず、アプリが起動される回数の争いになってきています。モバイルペイメント事業もネットで完結させるのではなく、生活者の可処分時間をどれだけ占有できるか、が重要になってきています。
中国はEC化が進んでいるものの、EC化率は20%であり、80%のPOSはオフライン(小売)にあります。AlibabaのECシェアは約50%なので、Alibabaグループは中国人の購買情報の10%「しか」知らない、ということになります。残りのPOSを取得するためには、オフラインに進出するしかないため、モバイルペイメント事業者も小売へ進出し始めています。」

       LinePayの決済画面

新小売とは?新小売戦略すべての起点にモバイルペイメントあり

「新小売」とは、2016年にAlibabaグループ会長ジャック・マーが提唱した概念で、「EC」という言葉はなくなり、「新小売」だけが残るというものです。新小売構想は、ECサイト運営で得たノウハウを駆使し、小売市場のオンラインとオフラインの統合(OMO)を掲げています。新小売戦略のすべての起点には、モバイルペイメントがあると、家田氏は言います。

デジタルシフト成功への道(デジタルシフトウェーブ鈴木康弘氏による講演)

デジタルシフトウェーブ代表取締役鈴木康弘氏は、「デジタルシフトの波に日本企業はどう立ち向かうのか」をテーマに講演を行いました。本記事では、デジタルシフトが進む米国小売業についてと、日本企業がデジタルシフトを成功させるために必要なことを紹介します。

デジタルシフトが進む米国小売業~ウォルマートとAmazon

ネットとリアルの融合には、2つのパターンの道筋があると鈴木氏は言います。ひとつは、リアル店舗の規模を先に拡大し、その後にECの規模を拡大するパターンです。もうひとつはその逆で、ECの規模を先に拡大し、その後にリアル店舗を拡大するパターンです。前者の代表として、米国小売大手のウォルマートが挙げられます。ウォルマートは、1兆円超のIT投資をしており、デジタルシフトの波を牽引していると言えるでしょう。後者の代表には、Amazonが挙げられます。1995年は本を販売するウェブサイトでしたが、2018年には、レジなしのリアル店舗Amazon Goをオープンしました。

日本企業がデジタルシフトに成功するためには

鈴木氏は、ウォルマートやAmazonのような欧米企業は、To-Be発想戦略であるのに対し、日本企業はAs-Is発想戦略である、と言います。無人レジを例にすると、To-Be発想戦略は、お客様が楽できるように無人化するのに対し、As-Is発想戦略は、人不足という現状課題を解決するために無人化する、という発想です。鈴木氏は、日本の企業もTo-Be発想戦略にしていかなければならない、と言います。To-Be発想戦略にすることで、自ずとデジタルシフトは必然である、という結論に至るでしょう。

デジタルシフトを成功させるためには、経営者の意識改革や、トップマネジメント改革、ITマネジメントプロセスの構築などが必要だと、鈴木氏は話しました。

メディアの未来(ジャーナリスト津田大介氏による講演)

津田大介氏は、メディアの未来について話しました。「2018年の広告費は、かろうじてテレビ広告費がインターネット広告費を上回っているが、今年(2019年)は、インターネット広告がテレビ広告を抜くでしょう。また、新聞社は、食べログのように、広告モデルから予約モデルへ変化していき、生活者の行動モデルによりマネタイズしていくのではないか。」とメディアのこれからを話します。

日本でOMOを推進するためには

家田氏が言うように、オンラインとオフラインを統合し、生活者の体験価値を高めるために、スマホ決済は重要な役割を果たすことが考えられます。そのため、スマホ決済が一層普及していく必要があるでしょう。より普及するためには、鈴木氏が言うように、As-Is発想戦略で自分たちの課題を解決するためにビジネスを進めるのではなく、To-Be発想戦略で生活者の体験価値を高めることを主眼においた取り組みが必要不可欠になると考えます。
さらに、OMOでは、生活者はスマートフォンを通じて常時デジタルにつながっており、リアルタイムで可視化されます。AmazonやAlibabaなど、外国企業が日本でのシェアを増加させていくなかで生き抜くためには、デジタルシフトを成功させ、蓄積・分析したデータをいかに早く施策に繋げることができるか、が重要になってくるのではないでしょうか。

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Sho Sato

Sho Sato

D4DRアナリスト。Web分析からスマートシティプロジェクトまで幅広い領域に携わる。究極のゆとり世代の一員として働き方改革に取り組んでいる。