カスタマージャーニーマップの設計における3つのポイント

カスタマージャーニーマップは、マーケティングのDXを推進し、全体最適化を図るするプランニングツールとして、大きな効果が期待できます。一方、思慮を巡らせずにカスタマージャーニーを設計・作成すると、施策への有効活用ができずに終わってしまう可能性があります。
本記事では、弊社の経験をもとに、実際に現場で発生する課題とそれらへの対応案をいくつかピックアップしてお伝えします。

ピックアップした課題は以下の3つです。主にカスタマージャーニー作成後に認識されやすい課題です。
順を追ってご紹介していきます。

1.マーケティング施策に落とし込まれない
2.組織/部署間の連携が上手くいかない
3.現場オペレーションやシステムとマッチしない

マーケティング施策に落とし込まれない

課題
カスタマージャーニーマップは顧客行動とコミュニケーションのあり方を網羅することで、マーケティングの全体最適をしようという目的で作成されます。しかし、全体を把握しようとするあまり、盛り込まれる要素や情報が膨れ上がり、結局どのジャーニーを追えばよいのかがわからなくなってしまい、具体的な施策に落とし込まれないというケースが見受けられます。
 

対策
マーケティング施策を検討する上で必要な要素(セグメント、チャネル、コミュニケーション内容、コミュニケーションのタイミングなど)を分解し、それぞれの要素の優先順位付けを行うための指標(期待収益率、認知率、接触率、来店率等)を設定します。その指標をもとに、カスタマージャーニーマップを作成した大目的(一般的には、顧客LTVあるいはマーケティングROI最大化すること)を達成するために、要素の優先順位付けを行います

以下、セグメント、チャネルの優先順位付けの考え方の一例です。
 
※セグメントの優先順位付け:
期待収益率、態度変容の期待度、ブランドロイヤルティ等の指標で、重点的に狙うべきセグメントを選定します。
セグメントを選定すると、それぞれの特性に合わせたコミュニケーションや接点が明らかになります

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※チャネルの優先順位付け:
顧客の認知率・来店率・購買率などの指標に寄与するチャネルを明らかにし、
施策の目的(認知獲得・来店獲得・購買獲得)に応じて、チャネルを選定します。

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組織/部署間の連携が上手くいかない

課題
カスタマージャーニーは、チャネル/部門横断的にマーケティングの最適化をするのに適した手段と言えます。しかし、カスタマージャーニーを作成し、次のアクションに落とし込もうという段階で、各部門担当者(広告、WEB、SNS等)にマップを共有しようとしても、なかなか共感・協力が得られない、ということが多く見受けられます。理由としては、各部門担当者の意見を反映させないままマップ作成してしまったがために、現状の施策とマッチしない、各部門の利害とマッチしない(全体のROIよりも、各部門目標が優先される)と捉えられてしまうことにあります。


対策

特定部門のみでカスタマージャーニーを作成すると、どうしてもその部門に都合の良いジャーニーに偏りやすくなってしまいます。
客観的かつ、他部門の納得がいくマップを描くためには、他部門の方へのヒアリングあるいは他部門を巻き込む形でマップを作成していくべきでしょう。例えば、ワークショップ形式などで各部門が抱える課題や仮説をすり合わせながらマップ作成することを推奨します。

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しかし、組織形態や予算の都合上、いきなり部門をまたいでカスタマージャーニーに取り組むのもなかなか難しいことかと思います。
その様な場合は一度自らの部門に関わる範囲の部分最適をカスタマージャーニーにより実現し、その実績やデータを活用して、次のステップで各部門担当者を巻き込む形でマーケティング全体最適のための取り組みを行うといった、ある種戦略的な動き方も必要になるでしょう。

現場オペレーションやシステムとマッチしない

課題
カスタマージャーニーは顧客視点でサービスやチャネルの“あるべき姿”を定義するために作成されます。しかし、”あるべき姿”を実現するスタッフやシステムの視点が抜け落ちてしまうと、苦労して描いたマップが実現困難な絵に描いた餅になってしまうこともあります。実際に、店舗オペレーションや、システム設計(消費者接点と連動するリテール/EC系のシステム等)に落とし込む際に、カスタマージャーニーの作成が、現場と独立して進んでしまい、うまく整合性が取れないといったケースも見受けられます。


対策

サービス設計/デザインを行うために、顧客視点でカスタマージャーニーを描くと同時に、提供者側の視点で、お店やスタッフ、裏側のシステム、データ基盤などのサービスを取り巻く環境で、カスタマージャーニーで描いたサービスのあるべき姿をいかにして実行/運用するかを明らかにしておく必要があります。手段としては、以下にあげるようなサービスブループリントをカスタマージャーニーマップと連動した形式で作成することなどが挙げられます。


※サービスブループリント
サービスブループリントとは、顧客とのタッチポイントや提供サービスおよび、提供スタッフやオペレーションを網羅するツールのことです。
カスタマージャーニーマップがマーケティング戦略・施策のインプットになるのに対して、サービスブループリントは、業務フローやシステム設計のインプットとなります。馴染みのある方も少なからずいるツールかと思いますが、カスタマージャーニーと統合して活用するのもひとつの手といえるでしょう。もちろん一手段なので作り方や形式などは問いません。目的は、カスタマージャーニーのあるべき姿を現場の実行力とすり合わせる/実現可能にするためサービス環境を定義するとことです。

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(参照元:UPMC Neuro Clinic Service Design

その他にもデータ、物流など、カスタマージャーニーと連動して、リソースや価値の流れが変化し、尚且つそれらを
最適な形でコントロールする必要がある場合は、カスタマージャーニーと同時にフローを明らかにしておくことも重要と言えるでしょう。

以上、カスタマージャーニーマップ作成の現場で直面しやすい壁として代表的と思われるものをピックアップしました。対応案として、いくつか形式やツールもご紹介しましたが、手段のひとつとして捉えていただければと思います。

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