イギリスの子育て世代が今注目しているブランドは?(海外SNS事例)

近年、スマートフォンやタブレットなど、通信デバイスの普及に伴い、多くのソーシャル・ネットワーキングサービス(SNS)が生み出されています。日本でも、Facebook・Twitter・Instagram・LINEなど、多くの人がSNSを利用しています。Facebook、Twitter、Instagramなどは、全世界で使用されているグローバルなSNSですが、中国で主に使われている「微博」やロシアで最もよく使われている「vk.com」など、その国、地域で独特のSNSも存在します。

今回の記事では、イギリスの子育て世代向けのSNS、「Mumsnet」の投稿データをBrandwatch社(イギリスのSNS分析ツールベンダー)が分析した事例をご紹介します。イギリスの子育て世代が何を話題とし、何に対してポジティブ/ネガティブに感じているのか見ていきましょう。

Mumsnetはイギリスで有名なSNS

Mumsnetは月間アクティブユーザーが1400万人を超え、月に100万回投稿される、イギリスではメジャーなオンラインコミュニティの一つです(図. 1)。

(図. 1 MumsnetのTop画面

出典:Mumsnet HP)

Mumsnetの特徴として、ユーザーが完全匿名であること、投稿の文字数制限がないことが挙げられます。そのため、ユーザーはコメントを自由に書きたいだけ書くことができるので、他のSNSの投稿に比べて、情報量が多いです(Twitterは1回の投稿につき、英語:280文字、日本語・中国語:140文字の字数制限あり)。また、子育て世代に特化したSNSであることから、この世代の商品・サービスに対する評価や、興味の対象に関する投稿が大部分を占めます(日本のサービスでは、株式会社ベネッセコーポレーションが運営するママ友交流サイト「WOMEN’S PARK」がMumsnetのイメージに近いです。)。このようなMumsnetの特徴から、投稿内容に偏りがあることが想像できますが、逆にその特徴を活かすことで、子育て世代の消費者心理について理解できると考えられます。

分析手法について

Brandwatch社が行った分析の条件は以下のとおりです。

・分析対象ブランド数:200(業界文献やFortune500、Interbrand Best Global Brandsなどの資料を参考に選出)

・分析対象期間:2018年6月18日-9月19日

・使用ツール:Brandwatch社製分析ツール

100日以上の期間を対象に、200万の投稿を分析しています。

イギリスの子育て世代が最も話題にしているブランドとは?

さっそく結果を見ていきます。まずは、どのブランドがMumsnet上で話題となっているのかを集計しました(表. 1)。

(表. 1 Mumsnetにおける、各ブランドの言及数

出典:Brandwatch社レポート)

 表. 1を見ると、最も話題量が多かったものは、BBCで、その次にTesco、IKEA、NHS、Waitroseと続いています。予想通り、Mumsnetユーザーはイギリスのブランドについて多く言及しています。また、上位8つのブランドが、それぞれ7つの異なった分野に属することから、Mumsnetユーザーの投稿が幅広い分野に及んでいることがわかります。

しかし、なぜBBC(英国放送協会:イギリスのラジオ・テレビを一括運営する公共放送局)に関する投稿が一番多くなったのでしょうか? この疑問について投稿内容を詳しく調査すると、BBCのBrexit(イギリスのEU離脱)に関する記事が多く引用されていることがわかりました。Mumsnetユーザー内でのBrexitへの関心が高まったと同時に、Brexitに言及しているBBCを話題の情報源とするユーザーが増えたため、BBCに関する投稿が全体の半数を占めており、最も多くなったことがわかりました(図. 2)。(他の情報媒体からBrexitの引用はBBCに匹敵するほどの投稿は集められていないことが明らかになりました。これは、子育て世代がBBCを情報ソースとして最も信頼していることを示唆しているのかもしれません)

(図. 2 Mumsnetにおけるニュース媒体に関する言及の割合

出典:Brandwatch社レポート)

どの産業についての投稿が一番多い?

今度はブランドごとではなく、より広く、産業別で見ていきましょう。(表. 2)

(表. 2 Mumsnetにおける産業別の話題数

出典:Brandwatch社レポート)

表. 2からは、デパートメントストア(スーパーマーケットなどの小売店全般)に対する話題が最も多く、テレビ、ファストフードがそれに次いでいることが読み取れます(逆に投稿数が少なかった産業は少ない方から順に、保険、エネルギー、スピリッツとなっています)。デパートメントストアの中では、Tesco, IKEA, Waitrose, Argos, Debenhamsの順で話題数が多くなっています。

さらに、子育て世代の人々がデパートメントストアに並ぶ各ブランドの商品価格について、どのように(高い/安い)評価しているのかも分析しています(図. 3)。

(図. 3 スーパーマーケットの各ブランドの値段に関する印象調査

出典:Brandwatchレポート)

図. 3から、値段に対して言及している投稿のうち、Halfordsについて「安い」と述べている投稿が全体の70%を超え、最も高い割合となっていることがわかりました。逆にTopshopについては、投稿の65%以上が「高い」と述べていることが明らかになりました。この結果、Topshopの商品は、実際にはより「高い」価格の商品を取り扱っている他のブランド(House of Fraser・Waitrose・M&S)よりも、Mumsnet上では商品価格が「高い」という印象を与えていることが示されました。

もっともポジティブな印象を与えている割合が高いブランドはどれか?

これまでは、ブランドに対する評価が「ポジティブ」かどうかについて、ビジネス上のKPIとして取り入れることはほとんどありませんでした。しかし近年、消費者がブランドに対してどのように感じているのかを把握することが、マーケティング戦略を考える上で重要であると認識され始めてきました。そのため、ブランドパフォーマンスを評価する上で、ブランドに対するポジティブ/ネガティブの比が指標として取り入れられつつあります。

本調査では、どのブランドが子育て世代に最もポジティブな印象を与えているのかをBrandwatch社のセンチメント分析ツールを用いて調査しています(図. 4)。

(図. 4 ポジティブな話題の割合が多いブランドTop12

出典:Brandwatch社レポート)

図. 4 より、Diorに関する投稿が最もポジティブの割合が高く、その次にNew Balance、Ralph Laurenと続いています。この結果、最もポジティブな投稿が多いブランドはDiorであることが分かりました。面白いことに、図. 3で示したブランド中、4つがファッションブランド(Dior, Ralph Lauren, Swarovski, Gucci)でした。なぜそのような結果となったのかを探るため、投稿データをテーマ別に分類しました。上位3つのテーマについて見てみます。

  1. Looking(見た目):年間439件
  2. Finding a good price(お買い得感):年間325件
  3. Present for a friend(友人へのプレゼント):年間209件

これらのテーマは高級ブランドにとって、ポジティブな話題を作り出します。高級品ブランドの購入を考える際に、見た目やお得な値段、友人へのプレゼントなど、そもそもポジティブな話題が多いことが想像できます。高級ファッションブランドは、消費者に対して、友人へのプレゼントを促すようなキャンペーンを実施するのが良いかもしれません。

ネガティブな話題の割合が最も高かったのはどのブランドか?

ブランドに対して、ポジティブかどうかも重要ですが、ネガティブな話題を特定することも重要です。ネガティブな話題は拡散しやすく、ブランドイメージに大きな影響を与えてしまいます。オンライン上のネガティブな話題によって、売上や株価の深刻な落ち込みが生じてしまった例は数多くあります(McDonald’sやAppleなど)。最近では、カイリー・ジェンナーのツイート一つでSnapchatに1.3億ドルの損失をもたらした例が挙げられます(詳しくはこちら:Bloomberg記事)。このように、ブランドはオンライン上のネガティブな話題について常にチェックし、リスク管理を行う必要があります。

(図. 5 ネガティブな話題の割合が多いブランドTop12

出典:Brandwatch社レポート)

調査の結果(図. 5)、ネガティブな話題の割合が多い一位と二位は、通信業界のBTとSkyであることがわかりました。これらは、感情を含む投稿の内、ネガティブなものの割合が60%を超えていました。Mumsnetのユーザーは通信事業者を利用した際の不満を書き込むケースが多く見られ、これがネガティブな話題の増加につながっています。それでは、どのような不満が書き込まれているのか見てみましょう(図. 6)。

(図. 6 BTとSKYのMumsnet上に投稿されたネガティブな話題の種類とその割合

出典:Brandwatch社レポート)

調査結果より、「値段が高い」に対する投稿の割合が最も高く、その次に「故障品」、「サービスの品質の悪さ」が続いています。このことから、最も不満に感じられているのが、コスト面についてであることがわかります。2社の通信業者は利用料金を下げるなどして、こういった不満を解消していかなければならないでしょう。こしたネガティブな話題は、多くの潜在顧客の目に入ってしまっています。一つのネガティブな話題で、多数の新規顧客を犠牲にしないためにも、何らかの対策が重要です。

通信業者同様、飲料業界のRed BullとPepsiについてもネガティブな話題が多いことがわかりました。子育て世代は、砂糖やカフェインが多く含まれている飲み物に対して、マイナスイメージを強く持っているようです。

産業レベルでポジネガ分析

それでは次に、ブランドごとではなく、産業別にそれぞれのイメージを分析するとどうなるでしょうか。200ブランドを20グループに分けて、各産業の話題がポジティブなものが多いのか、ネガティブなものが多いのかを分析しました(図. 7)。

(図. 7 業界別ポジティブ/ネガティブ診断

出典:Brandwatch社レポート)

図. 7を見ると、ファッション業界が一番ポジティブな話題の割合が多く、通信業界が一番ネガティブな話題の割合が多いことがわかります。この結果は大体予想どおりのものとなりましたが、さらにデータを詳しく見ていくと、

・ポジティブな投稿の割合が最も高いのはFashionで、その次にHotels、Beerと続いた。ネガティブな投稿の割合が最も高いのはTelecomsで、その次にPayment cards、Publicと続いた。

・日常的に悪い報道が流れているにも関わらず、ファストフードブランドは非営利の団体よりもポジティブな話題が多かった。

・消費者金融では、ポジティブな話題とネガティブな話題が混在しているが、消費者金融が扱っているペイメントカードに関しては、ネガティブなものが多かった。

・ビールブランドはスピリッツよりもポジティブな話題が多かった。

というような、想像とは違った結果も得られました。

D4DR分析アナリストの目線

今回の事例のように、属性がある程度絞られたSNSを分析することは、ターゲットを絞ったマーケティング戦略を考える上で有効でしょう。自分たちの商品の価値を、伝えたい人々に、的確に伝えられることが重要です。このような調査を通して、企業が提供している(と想定している)価値と、消費者がそれに対して抱いているイメージのギャップを理解し、次のアクションを起こすことがブランド力向上に繋がるでしょう。

D4DRでは、専門のアナリストがブランドやテーマに応じて最適な分析手法を選択し、SNS分析を行っています。TwitterとInstagramの双方から広告戦略、マーケティング戦略につながる分析も可能です。また、今回の事例のように、ヤフーニュース、ヤフー知恵袋、おしえてgoo、newspicsなどのオンラインコミュニティのデータを分析することも可能です。