ソーシャルメディア活用からミエルこと

こんにちは。アナリストのYOSSYです。

ソーシャルメディア分析、ECサイトやWebサイトの分析、行動情報の分析、といった業務と関連する営業を担当しています。まだまだ駆け出しですが、日々勉強しながら、分析によってクライアントの課題解決に導くお手伝いをしていきたいと思って邁進していますので、ご愛顧よろしくお願いします。

はじめに

現代では、スマートフォン普及の背景もあり、あらゆるシーンでソーシャルメディアが活用されています。

企業の皆様から聞かれる悩みは、、、

「ソーシャルメディアってなにがわかるの?」

「効果がいまいちわからず、活用に至らない。」

「必要性は理解しているけど、現状業務が優先で手を付けられない。」

など。

そこで今回は、居酒屋では専らビール派の私が、ソーシャルメディアで話題となっていたあるビールの成功実例を踏まえて「ソーシャルメディア活用でミエルこと」と題して行った分析をご紹介します。

ビール業界に風雲急を告げる「僕ビール、君ビール。」の下剋上

「販売数はアサヒビールの「スーパードライ」に次ぐ第2位で、単月ではキリンの「一番搾り」を上回った。」

あるメディアに掲載された記事を目にして私は、衝撃を受けました。「僕ビール、君ビール。」は、ヤッホーブルーイングより製造され、14年10月からローソンで限定販売された「僕ビール、君ビール。」。このクラフトビールが、大手ビールメーカーであるキリンの「一番搾り」を単月で販売数を上回るという快挙を成し遂げ、ビール業界での下剋上を起こしたのです。

なぜそんなことができたのでしょうか?その反響はソーシャルメディアから知ることができるのでしょうか?

事例をご紹介の前に、ここで今回取り上げる題材のご紹介と調査内容をお伝えします。

ヤッホーブルーイングの「僕ビール、君ビール。」
僕君パッケージ2

引用元:http://yohobrewing.com/bokukimi/より

【題材】:「僕ビール、君ビール。」

【概要】:「僕ビール、君ビール。」は、ヤッホーブルーイングとローソンによってコンビニ業界初のオリジナルクラフトビールとして共同開発され、2014/10/28(火)より全国のローソングループ酒販店で限定販売されました。ビール缶のパッケージデザインには若い世代を意識したカエルのキャラクターが表現されており、若者層を取り込む狙いが込められています。この協業やターゲティング等の要素が相まって、販売当初からソーシャルメディア上でも話題となりました。

(一部比較する題材:「一番搾り とれたてホップ」   選定理由:「僕ビール、君ビール。」と同じ販売日(2014/10/28)のため、話題量の比較ブランドとした。)

※キリンの「一番搾り とれたてホップ」

とれたてホップ

引用元:http://www.kirin.co.jp/company/news/2014/0731_05.htmlより

【調査概要】:

・ソーシャルメディア【Twitter】の抽出データを基に分析

・集計期間:2014年9月8日~2015年3月8日。(「僕ビール、君ビール。」および「一番搾り とれたてホップ」)

※「僕ビール」の販売発表があった2014年9月8日より6か月間を集計

KIRINの限定ビール「一番搾りとれたてホップ」を凌ぐ盛り上がり

「僕ビール、君ビール。」と「一番搾り とれたてホップ」のツイート数比較
トレタテホップ_話題量比較グラフ修正

※集計期間:2014年9月8日~2015年3月8日

※集計対象:twitter

「僕ビール、君ビール。」とキリン「一番搾りとれたてホップ」との投稿件数を比較しています。
両ビールの投稿件数を見てみると「僕ビール」が約1.6万件、「一番搾り」が0.8万件で約2倍の差があります。tweet数とRT数の割合においても全体と同じ傾向で大きな違いは見られません。ヤッホーとキリンの一般的なブランド力を鑑みると「僕ビール」に対する話題量の多さが際立っています。

「僕ビール、君ビール。」と「一番搾り とれたてホップ」のTotal view数比較

とれたてほっぷ_TOTALVIEW修正

※集計期間:2014年9月8日~2015年3月8日

※集計対象:twitter

※Total VIEW数=アカウント毎のフォロワー数×投稿数を積算した総インプレッション数

こちらは、インプレッション指標であるTotal VIEW数を両ビールで比較しています。「僕ビール」が約2,100万VIEW、「一番搾り」が1,200万VIEWで約2倍の差となっています。単純にTotal VIEW数だけでの比較は、同一ユーザーの複数投稿もあり判断が難しい面もあります。その点を考慮しても、「僕ビール」のソーシャルメディアでの露出機会が多かったことがうかがえます。

「僕ビール、君ビール。」が、生活者に評価されたわけ

コメント有り/無しおよび 「コメント有り」のポジネガ分類
コメント_ポジティブ修正

※集計期間:2014年9月8日~2015年3月8日

※集計対象:twitter

※ポジネガ対象データ=コメント有りの400件をサンプリング抽出

twitterは、公式RTがそうであるように自分でコメントを加えなくてもツイートできる手軽さが受け入れられているメディアでもあります。誰かのコメントを引用すれば自分自身がその都度文章を考えなくてもツイートできるわけですが、「僕ビール、君ビール。」に対しては、コメントを書いて発信したユーザーが半数程度を占めていました。

また、コメントのあるツイートをみてみるとポジティブなものが約9割、存在していました。生活者にこれほど好意的なイメージを持たれたことは、市場投入間もない「僕ビール」にとっては大きな特徴だと思います。

話題分類(「コメント有り」のポジティブ要因)
ポジティブ話題

※集計期間:2014年9月8日~2015年3月8日

※集計対象:twitter

※n=346(ポジネガ判定のうちすべてのポジティブなツイート)

さらに、ポジティブな声の内訳をみてみました。

「僕ビール」を実際に購入した人が、何らかの好感を持って書き込んだものが約6割にのぼっていました。また、購入を希望する声、商品を探し求める声も約3割みられており、購入がきっかけになってポジティブなツイートが誘発されていることがわかります。

そのほか、ソーシャルメディアでの情報接触を通じて商品への訴求が高まったユーザーも一定量確認でき、ポジティブな論調が生活者の購買意欲に好影響を与えたことがうかがえます。

また、商品の「味」を評価した内容が3割を占めており、「フルーティーな香りと味わいで飲みやすい」、「ちょっと他にはない感じのビール」との声があがっていました。商品自体の「確かな品質」、「味の差別化」がポジティブ投稿の要因と言えます。

ソーシャルメディアの話題拡散は、ヤッホーの狙い通り!?

販売当日の話題分類
話題分類別 捕獲大作戦

※集計期間:2014年9月8日~2015年3月8日

※集計対象:twitter

話題の内容を細かく分類してみると(D4DRではこのような分析にはアナリストの目視を主に用いています)、拡散した要因として、ヤッホーのソーシャルメディアを活用した販売戦略が大きく寄与していました。

上記は、販売当日の話題内容を分類したものですが、ヤッホーがキャンペーンの企画として投じた「かえる捕獲大作戦」(緑)が約61%もの割合を占めています。販売当日にツイートされた件数が、集計期間内でも最大の為、この企画が話題拡散に起因していることがうかがえます。

また、「かえる捕獲大作戦」の企画内容をヤッホースタッフが投稿していましたので、ご紹介します。

・ヤッホースタッフ『みんも @minmoYOHO 』と『へぐ @hegYOHO 』の2人が東京23区の「僕ビール、君ビール。」国盗り合戦ならぬ、区盗り合戦を開始します~!#かえるビール

・「僕ビール、君ビール。発見!!」と最初にツイートをした瞬間に、その区をゲット。より多くゲットできた方を勝利とします!

・「僕ビール、君ビール。」を、ちかくのローソンでみつけたよ~!という情報お待ちしております!ハッシュタグ #かえるビール をつけてね♪

生活者は、生活圏などにあるローソンで「僕ビール」を購入(かえる捕獲)すると”#かえるビール”をつけたツイートを投稿共有し、国盗り合戦のごとく競い合いましょうという企画です。この”かえる捕獲大作戦”に販売当日にヤッホー側のスタッフも参加し先導することで、エンターテイメント性が高まり、商品を認知した生活者間で話題が伝播していったと考察できます。

ソーシャル活用で欠かせない自社媒体への誘導

引用媒体別ランキング(商品認知)
媒体名ランキング2

※集計期間:2014年9月8日~2015年3月8日

※集計対象:twitter

twitter上では、ツイートのときにwebメディアなどのURLを引用する投稿をよく見かけます。上の表は、ツイート中のURLのうち、ヤッホーブルーイングのURLが、約半数を占めていることを示しています。ヤッホーの自社媒体への誘導が、認知向上と話題性を高めた要因と考えられます。

一方、ヤッホー以外のメディアではNAVERまとめが約1割を占めています。まとめサイトのような生活者間での双方向のコミュニケーションを促進するメディアに取り上げられたことも話題拡散の要因と言えるでしょう。

「ヤッホー」は、ソーシャルメディアの特性を活かした戦略的なマーケティング行うことで、潜在ニーズを持った若い世代などへ認知を拡大し、販売数を伸ばしました。もちろん、この仕掛け以外にも、若者にささる質の高い商材(パッケージ、飲みやすさ)に作り上げ、差別化したことが成功の要因の1つでもあることは忘れてはいけません。

販売向上における個性的な商品開発と効果的なプロモーション戦略は、ビール業界において起爆剤となったのではないでしょうか。今後も引き続き、動向をウォッチしたいと思います(個人的な意味も含み)。

ソーシャルメディアの活用は、プロモーション強化、ブランド力向上、他社との差別化などの手段として用いることができ、活用の仕方次第で、売上に大きく影響を与えることができます。今後の販売戦略において、ソーシャルメディアが重要な役割を担うことは想像に難くありません。

売上への寄与度が高まっているソーシャルメディアを活用し、分析を行い、施策効果がミエル化することで、施策の最適化を図ることが可能となるのです。

D4DRでは、商材・ブランドのソーシャルメディア上の話題を分析するサービスをご提供しています。

興味がある方は、お気軽にお問い合わせください。

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