座談会:コンサルタントというキャリアの虚実〜単に頭がいいだけの人と、社会を変える人との分かれ目とは?(第3回)

画像: 座談会:コンサルタントというキャリアの虚実〜単に頭がいいだけの人と、社会を変える人との分かれ目とは?(第3回)

第3回 末は教授か経営者、は本当か?〜コンサルタントのキャリアステップ

大学で教えるためには「論文」と「博士号」

藤元:この10年、日本でも増えてきた「コンサルタント」ですが、そのキャリアステップについては、どのような可能性があるでしょうか。

鳥山:私のように大学で教えることは、選択肢のひとつでしょう。大学には研究を続けてきたアカデミック教員と、企業で働いた経験のある実務家教員がいます。学生には実務家教員のほうが評判が良いですよ。給料は高くありませんが、若い人に教えるというやりがいのある職場です。

非常勤で教えた経験は実績としてあまり考慮されません。本気で大学で教えたいと考える人は、学会で論文発表をして博士号を取るべきです。採用を検討する際には様々な分野の教員が関わるので、最終的には査読付き論文の数と学位が採用の判断基準になります。

森:MBAを取得できる一橋大学大学院 商学研究科経営学修士コースや早稲田大学ビジネススクールには、コンサルティングファームのトップ経験者が教授陣として揃っていますよね。

鳥山:そうですね。日本の大学の状況を把握しておく必要もあるでしょうね。例えばITの分野は、日本の大学側がコンサルタントの受け入れ態勢がまだ弱いですね。

森: 技術版のMBAといわれるMOT(Management of Technology)もこれからですね。むしろ、理系トップスクールの経営/管理工学系大学院や、東京大学工学部 システム創成学科や慶應義塾大学の大学院システムデザインマネジメントなど良いところがいくつか出てきているかと思います。日本の理系の人が、社会課題についてもっと関心を寄せるようになるといいですね。あらゆる場面で日本はサイエンスが足りません。計量して分析することが日本では民間も大学も弱い。

藤元:日本の製造業の生産性は高まりましたが、サービスサイエンスは進んでいませんよね。サービス業はウォルマートなどのアメリカの先進事例を常に真似していればよかったからでしょう。

森:製造業はむしろ日本がリードしていたので、自ら改善して前へ進まなければいけなかったんですよね。

地方の優良企業の経営者という道

藤元:どのような業界から、コンサルタントのニーズはありますか?

伊藤:コンサルタントを採用できる業界は限定されますね。一番の要因は給料です。コンサルティングファーム出身の35歳を採用する場合、給料は通常1000万円を超えます。

SPAをてがける大手アパレルレベルになればコンサルタントの採用に積極的ですが、一般的には内資のサービス・流通・小売りの給与水準では採用は難しい。

藤元:地方の優良はどうでしょう?事業継承に困っている企業に社長として入る。

鳥山:潜在的なニーズはありますが、全てのコンサルタントが適しているとは言えません。

コンサルタントと経営者は同じ経営用語を使って会話をしていても、行動原理は相当違います。経営者はリスクを取るのが仕事ですが、そのリスクを取らせないようにするのがコンサルタントの役割です。
また、コンサルタントは自分がタダ働きをする程度のリスクすらも取らないのです。

コンサルタントも、経験を積むうちにリスクを取って決める覚悟を固め、一皮むければ良い経営者になるでしょう。

森:まずは社長室などで実績を出すのが良いかもしれませんね。
世襲の会社にアドバイザーとして入り、社長は会長で残るという体制も上手くいくかもしれません。コンサルタントには、二代目と仲良くなれるタイプの人が多いですからね。

画像: 地方の優良企業の経営者という道

年齢と年収のせめぎあい

藤元:コンサルタントが独立すると、どのような仕事がありますか。

伊藤:コンサルタントとして独立した場合、50歳を過ぎて特にこれといった強みが無いと、仕事は減るケースが多いですね。しかし、自分で営業できる人は年令に関係なく仕事があります。そのあたりを意識して将来像を描きながらチャレンジしていけば可能性も広がるでしょう。

森:長年働いたコンサルティングファームを辞めた後、大学などの教職以外には、フリーのコンサルタント、あるいは事業会社でビジネスをリードするという選択肢もあります。単に社長になりたいだけであれば、雇われ社長になったほうができる範囲も広く、大きな事業を動かせます。

私個人の関心でもあるのですが「社会的なインパクトをどれくらい与えることができるか」ということが大切だと思います。会社に数億円を儲けさせたことより、社会的に影響のあるEVのようなイノベーションを生み出せるかどうか。それを実現できる可能性があるなら、挑戦すればいいと思います。

藤元:意思と意欲の高い未成年の若者の事業計画と、コンサルティング経験者のストーリーが美しい事業計画があった場合、どちらを選びますか。

森:両方兼ね備えているほうがいいですね(笑)。選ぶとなれば前者です。ローリスクローリターンのほうが試しやすいし、やり直しも利きやすい。

藤元:コンサルタントであれば、CXO的な役割で経営者のヴィジョンをサポートできますよね。

伊藤: CXOのサポート的な役割を期待してコンサルタント経験者を積極採用している企業も多いです。募集年齢は企業によって異なりますが、35歳~40 代前半位が多いですね。

コンサルタントの場合、年齢が上がると年収も事業会社との乖離が広がります。例えば、40歳のコンサルタントであればIT系で1500万円くらい(シニア・マネージャー)の年収ですし、戦略系だと2000~3000万円くらいです。事業会社への転職はコンサルタントが事業会社側に合わせて年収を下げられるかどうかも鍵になります。

ただ事業会社への転職を希望してくるコンサルタントの多くは、転職理由が明確ではないのです。でも「いやなこと」ははっきり言う。「金融とITはいやです」とか(笑)。事業会社へ移る動機が明確ではないから、年収も柔軟に対応できない。

藤元:事業会社に入って、成功するコンサルタントの特徴はありますか。

伊藤:意外かもしれませんが、安定志向の人は事業会社へ移ると失敗するケースが多いです。上手くいっている人はチャレンジングな人ですね。採用する企業としても成長戦略を実現するなり、何かを変革するためにコンサルタント経験者を採用するわけですから。安定を望むのであれば、最近ではワーク・ライフ・バランスが取れたり、定年まで働けるファームもあるので、今までの経験をそのまま活かせるコンサルタントのままでいたほうがいいと思います。

森:外資系企業を渡り歩く「外資回遊系」の人もいますよね。

伊藤:人気があるのはGE、P&Gなどの外資系企業です。しかし採用人数も多くないのでそこへ転職できるコンサルタントは意外と少ないです。少し話はそれますが、例えば大手企業から戦略ファームに移り、数年後に事業会社へ転職しようとした場合、年収も含めてさらにキャリアアップするのは機会を捉えないと難しいですね。

藤元:年収が上がるので、行き場がないのでしょうね。IT系は厳しいですか?

伊藤:先ほどもお話ししましたがIT系コンサルタントの場合でも、例えば総合系ファームのシニア・マネージャーになると年収が1500万円位になります。採用する事業会社からしてみれば、その人でないといけない、というスペシャリティが欲しいわけです。ですから、例えばITコンサルタントをしてきた方が40歳前にして「事業会社で経営企画をやりたい」と言っても難しいです。

IT系のコンサルタントの場合、ひとつの選択肢としてベンダーやSIerの管理職につくというのもあります。部長職くらいで入り、定年くらいまで在職する。上流行程の提案もでき、営業もできるから重宝されるでしょう。

森:ただし、SIerのビジネスが構造的に全般的に厳しくなってきているという状況があることも考慮しないといけませんよね。
<第3回 了>

 

プロフィール

森 祐治
電通コンサルティング 取締役・シニアディレクター
国際基督教大学(ICU)教養学部卒業後、日本電信電話を経てICU大学院博士前期課程修了。同大の助手を経て、Golden Gate University, Graduate School of Technology Management(MBA)及びNew York University, Steinhardt School (Ph.D)へ奨学生として留学。早稲田大学大学院国際情報通信研究科博士後期課程単位取得修了)
米国滞在中にベンチャー創業・売却を経験。日米のマイクロソフトを経て、マッキンゼー・アンド・カンパニーへ。その後、コンテンツ投資・プロデュース、国際展開支援を行うシンクの代表に転ずる。設立したファンドの償還に伴い、電通コンサルティングに参加。クライアントサービス全体を統括している。


鳥山 正博 
立命館大学 教授
マーケティング / マーケティング・リサーチ / 商品開発 
国際基督教大学卒(1983)、ノースウェスタン大学ケロッグ校MBA (1988)、東京工業大学大学院修了、工学博士(2009)。1983より2011まで(株)野村総合研究所にて経営コンサルティングに従事。 業種は製薬・自動車・小売・メディア・エンタテインメント・通信・金融等と幅広く、マーケティング戦略・組織を中心にコンサルテーションを行う。とりわけテクノロジーベースのマーケティングイノベーションと新マーケティングリサーチインフラの構築が関心領域。マーケティングリサーチ・メディア・小売領域でビジネスモデル特許出願多数。


藤元健太郎
1993年からインターネットビジネスの研究を開始し,1994年に野村総合研究所で日本最初のサイバービジネス実験サイトであるサイバービジネスパークをトータルプロデューサーとして立ち上げた。2002年からD4DRを立ち上げ代表に就任。ITによる社会システム革新やマーケティングイノベーションに関わる多くのプロジェクトに関わる。最近では行動情報マーケティング,オムニチャネル戦略などをテーマにしたものが多い。青山学院大学大学院EMBA非常勤講師,経済産業省産業構造審議会情報経済分科会委員なども歴任。現在日経MJや日経電子版で奔流eビジネス,CMO戦略企画室などを連載中。


伊藤文隆 
アクシスコンサルティング株式会社 エグゼクティブコンサルタント/執行役員
製造業で営業・企画・ブランドマネジメント・事業部マネジメント等を10年経験した後、コンサルティング業界に特化した人材紹介会社の立上げに参画。アクシスコンサルティング入社後も引き続きコンサルティング業界を中心としたキャリア支援に強みを持ち、特にマネージャ~パートナークラスの転職サポート実績が豊富。過去に転職サポートした方からの求人依頼も多く、独自のネットワークを築いており、コンサルティング業界からのEXITにも強みを持つ。

The following two tabs change content below.
Sho Sato

Sho Sato

D4DRアナリスト。Web分析からスマートシティプロジェクトまで幅広い領域に携わる。究極のゆとり世代の一員として働き方改革に取り組んでいる。