シンクタンクFPRC DX 総括:IoTの今後の可能性(先進IoTビジネスの動向|第6回) 
総括:IoTの今後の可能性(先進IoTビジネスの動向|第6回) 

はじめに

これまで5回に渡って国内外におけるIoTビジネスの先進的な事例を取り上げてきた。多岐に渡る分野でIoTは新たなサービス、またより大きく考えてビジネスを創り上げていることが分かった。それに加え、筆者はIoTの今後の可能性について二点感じることがあった。

  1.    IoTの大きなイノベーションは、小さな所から始まる。
  2.    IoTは今後ビジネスを変革するだけにとどまらず、社会の在り方をも変えていく。

それぞれについて説明する。

IoTの大きなイノベーションは、小さな所から始まる

①センサーが小型化および低価格化している点、②通信販売の拡大によって商品の流通網が確保でき、リアルの店舗が必要なくなることによってコストが大幅に削減できる点、③クラウドファンディングの定着によって、資金力の乏しいスタートアップがベンチャーキャピタルの投資を受けずとも商品を販売することができる点、以上の三点によって市場への参入障壁が低くなることで、より多くの小規模スタートアップがイノベーションを起こす可能性がある。特に、流通については、2016年7月にアマゾンがクラウドファンディングプラットフォーム大手のキックスターターと提携し、キックスターターで資金提供を得ることに成功した製品に専用の流通チャネルを提供することになったため、製品を完成させて資金援助を得られればアマゾンで多くの顧客にその製品を売れるというわけだ。

成功するようなビジネスアイディアを有した個人・企業であれば、あまり資金や流通に困らずにビジネスを展開できる。よって、これからのIoTビジネスでは、「アイディア勝負」が激化するのではないだろうか。また裏を返せば、ビジネスのアイディア創出にこれまで以上に多くの時間をかけることが可能になり、イノベーションがますます加速化するかもしれない。

IoTは今後ビジネスを変革するだけにとどまらず、社会の在り方をも変えていく。

次に、二番に関して私は、IoTはこれからもビジネスを起点としながらも社会を変えていく源になると考える。例えば、スポーツ分野におけるIoTの浸透によって指導の理論化が進み、体罰を含んだ保守的・精神論的指導が通用しなくなったり、ベビーバスケなど、スポーツを楽しむことのできる人が増えたり、IoTヘルスケアによって数々の医療問題が軽減されたりする可能性があるというように、IoTはこれから少しずつ社会をより良い方向へ導いていくのではないだろうか。

IoT全盛時代に向けた展望  (D4DR代表・藤元健太郎)

さて、ここまでは筆者が調査して得られた知見を基に推察を述べたが、ここで弊社代表である藤元の見解を要約してここに記す。

IoTの現状と今後の広がり

今の時点で、特にインフラやエネルギー関連においては、センサーを使った仕事の効率化やコスト削減が進んでいる。ただ、これから期待したいもの・面白いものはどちらかと言うと、IoTを通じたサービスやプロダクトのイノベーションである。製造業がサービス化し、サービス業がより付加価値を高めていくような、ビジネスそのものの変化こそが面白い。ただこれらはまだ先進事例が出始めた程度でまだまだこれからといった印象だ。

この点についてもう少し詳しく見てみると、今までは顧客がどう商品を使っているか・どうサービスを享受しているかは企業には見えていなかった。しかし、IoTによってこれらを企業側がある程度把握できるようになった。カメラを例に取って考えてみると、カメラメーカーがユーザーのよく使用する撮影モードを顧客ごとに把握できれば、顧客ごとに異なるサービスを提供することができる。オートモードを多用するユーザーがいると分かれば、「初心者向けのカメラの撮影講座」のサービスを展開することができる。

IoTの可能性は、企業が顧客と直接つながって、顧客が商品やサービスを通してどう感じているか・どう生活が豊かになったか・どう日々が楽しくなったかを把握して、顧客に向けてより良い提案をしていくところにあり、これがIoTによるイノベーションの本質だと考える。

最近の注目事例

最近注目している事例で言うと、アシックスがフィットネスアプリのスタートアップRunkeeperを買収した件。これまでずっと靴を作ってきたメーカーが、ランニングをしている人達全体を把握するために、M&AによってIoTを引き入れて事業を作っていくのはとても良い例だと思う。

もう一つは、体温計のKinsa(詳しくは第4回参照)。このサービスで得られるデータは二面的な価値を持っている。まずユーザー自身が体温・体調を把握できる。また、Kinsaが広がった後に新たな価値が生まれる。地域の「病気の流行」が分かり、拡大を防ぐことができる。このように、Kinsaは両方の価値を提供できる意味で、美しいモデルだと感じる。

世界における日本のIoTの立ち位置

日本ではモノづくりへのこだわりが強すぎており、いいモノを作れば良いと考える傾向が残っている。またこの考え方がサービス化への流れを妨げているように思う。そういう意味では、アシックスのようなM&Aは一つの手だ。

また、日本はグーグルやフェイスブックといったデジタルプラットフォーマーには勝てないが、プロダクトの強みを起点にしたサービス開発にはチャンスがある。例えばグーグルがカメラの領域で日本のカメラメーカーに勝てるわけではなく、日本のメーカーがモノの価値を最大限生かすのは良いと思う。

IoT全盛時代で活躍する人・企業とは

今後は顧客を巻き込みながら、対話してサービスを作っていく流れが重要になってくるため、コミュニケーションの感覚が非常に大事である。つまりそれはマーケティング力であり、マーケティングを企業の中核に組み入れて、またマーケティングの視点を持った経営者を起用することが重要だと考える。

従来通り、モノが良くなければならないので、モノづくりの観点は引き続き大切だが、ユーザーの声が今まで以上に大切になっており、ユーザーの声でモノやサービスを変えられるようになってくる。企業に向けて積極的に発信するようなユーザーを味方につけるブランディングもこれから重要な戦略になるだろう。

総括

スポーツ、ヘルスケア、ファッション、飲食など、様々な領域でのIoT事例を紹介したが、これらはほんの氷山の一角に過ぎず、他にも多くの製品が市場に出て成功しているだろうし、まだ市場に出ていなくてもこれから熟成して成功するようなモノも多くあると思う。

以上を持って、6回に渡る「先進IoTビジネスの動向」の連載を締めたい。小さなイノベーションの先にこそ大きな変革があると感じており、これからもIoTから目が離せそうにない。

(出典)
http://jp.techcrunch.com/2016/07/28/20160727amazon-debuts-a-dedicated-shop-for-kickstarter-products/
http://jp.techcrunch.com/2016/02/16/20160212runkeeper-asics/
www.indiegogo.com/

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D4DRの広報PR担当です。webやソーシャルメディアを通じて、ITビジネス、デジタルマーケティング、各種データ分析、CRM、ソーシャルメディア分析などの消費者インサイト発見に関する情報を発信しています。

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