先進IoTビジネスの動向|第5回『飲食におけるIoTの事例』

はじめに

これまでに、スポーツ、ファッション、ヘルスケアにおけるIoTの動向について取り上げたが、今回はもう少し大きな視点で「飲食」のIoT化について考えたい。

まず、生活の基本「衣食住」の一つである飲食に関するビジネスにおいては、多くのプレイヤーが関わっている。よって、「飲食」には様々な切り口がある。ここでは、顧客サイド、すなわち「食べる人」に注目して、人の行動を整理したいと思う。

そこで、「飲食」を顧客の視点で分解した結果、下図のようになった。なるべく「モレなくダブりなく」を意識したが、見落としもあるかもしれないので、大目に見ていただきたい。

 

 

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第1回『IoTの概況』
第2回『スポーツ分野におけるIoTの事例』
第3回『ファッション分野におけるIoTの事例』
第4回『ヘルスケアのIoT化』
第5回『飲食におけるIoTの動向』 ←今回
第6回『総括:IoTの今後の可能性』

 

まず、「食べる」人が食事を考えた時、内食、すなわち自炊をするか、外食・中食という選択肢がある。自宅で自炊するとなると、食材を調達し、調理しなければならない。そして、食材調達には、多くの場合は買い物を利用するだろうが、中には自宅で栽培したものを使う人もいるだろう。また、中食・外食は店先で注文し、決済する。

これら各要素における事例(上記図表内に赤字にて明記)を紹介していきたい。

 

 

I.スマートガーデン:Click and Grow

food_02_smart-herb-gardenまず紹介するのは、最近流行りつつある「スマートガーデン」の一つである「Smart Herb Garden」。開発したのはエストニアにあるClick and Grow社。

主な特徴は、植物の種子と独自開発の土が入ったポッドを、光・水・栄養を感知するセンサーを内蔵したプランターに入れ、一ヵ月に一回水をやると自動で植物を栽培してくれること。センサーが読み取った情報を基に自動で水や光や栄養の配分を調整することで、最適な栽培環境を整える。ユーザーは簡単・手軽に野菜やハーブを栽培できる。

さらに、このClick and Grow社の展開しているビジネスが興味深い。種子の種類別のポッドの販売以外に、ポッドのセット販売をテーマに分けてしている。例えば、「グルメピザミックス」はバジル、タイム、オレガノの種子をセットで販売し、ピザのトッピングとして使うように促している。この他には、「カクテルミックス」や「イタリアンペストミックス」などがある。

植物の管理がほぼ不要なスマートガーデンなら、忙しい人や、初心者でも簡単にできるため、小規模ながらハーブ類や野菜を自家栽培で収穫して料理などに使うのが、特に都市部に住んでいて自宅に庭のない人の間で人気になってきている。

 

 

Ⅱ.買い物

①Walmart Pay

food_03_walmart_pay-png次に紹介するのは、アメリカの小売の巨人Walmart社が2016年6月にWalmart全店で導入した電子決済システム「Walmart Pay」。Walmartのアプリにクレジットカード情報を登録すると、店舗決済時にアプリでQRコードを読み取るだけで決済ができる。また、アプリでWalmartのECサイトから買い物ができる。さらに、決済後のレシートは全て電子レシートとしてアプリに蓄積される。またそのレシート内の商品を「買い物リスト」に加えてECで買うこともできる。

Walmartは独自のモバイル決済・ECシステムを構築し、Apple PayやSamsung Pay、そしてアマゾンに対抗している。

 

Amazon Fresh

food_04_amazon_fresh次に紹介するのは、食材調達の手段の一つ「買い物」のうちの「デリバリー」。ECの王様であるAmazonがアメリカの数都市とロンドンで限定的に展開している、食料品の配達サービス「Amazon Fresh」について紹介する。

Amazon Freshとは、年会費300ドルで、食料品を翌日・翌朝に自宅のドアの目の前に配達してくれるというもの。Amazonは一般的なスーパーに置いてあるもの全般を取り扱っており、特にアメリカでは他の食料品配達サービスの強敵となっている。

さらに、AmazonはFreshユーザー向けに試験的にDashというサービスを展開している。バーコードスキャンと音声認識機能を搭載したDashデバイスで、食料品のバーコードをスキャンするか、食料品の名前をマイクに向かって話すことで注文できる。

このように、AmazonとWalmartの事例を見ると、両社ともに「買い物」を究極的に簡素化しようとしていることが分かる。

 

 

Ⅲ.調理:Mellow

food_05_mellow次に紹介するのは、スマートクッカー「Mellow」。フランス料理によく用いられる真空調理法である「sous-vide」(スーヴィード)を応用した調理器であり、味付けをした材料を真空パックに入れてMellowに入れておき、スマートフォンアプリで料理の種類や終了時間を指定しておくと、Mellowがその時間に調理を完了するように自動で調整してくれる。よって、仕事やランニングから帰宅してすぐに食事をすることができる。真空調理法によって、肉や魚の中まで火を通しつつ焦がさず、簡単に高級レストランの味が楽しめるそうなので、興味のある人はぜひ試してほしい。

この調理器の特徴は、人工知能によってユーザーの好みを学習する点だ。料理を食べた後、スマートフォンアプリに火の通り具合などをフィードバックすることで、Mellowが次回以降の調理や調理前の提案に活かすそうだ。

これまでプロにしか手の届かなかった調理器具が、IoTによって一般にも広がり、我々の食生活をより豊かに、より便利にしてくれる。また、このような話は飲食に限らず、スポーツにおいても、ヘルスケアにおいても言えることである。

 

 

Ⅳ.注文・決済:PaidEasy

food_06_paid_easy最後に紹介するのは、モバイル決済アプリの「PaidEasy」。端的に言うと、飲食店の検索、注文、決済機能を一つに集約したアプリだ。現在アメリカの数都市で展開しており、今後も広がる様子だ。

まずアプリでPaidEasy加盟店を検索すると、その店までの道順を教えてくれる(PaidEasyはアメリカの飲食店レビューサイトYelpと提携している)。もしくは、配車サービスUberを手配してくれる。店に入ると、ユーザーのスマートフォンが店内のiBeacon(Bluetoothを用いた通信手段)に反応し、入店とともに勘定が開き、店員への注文が自動的にアプリ内の勘定に反映される。食事が終わったら、Apple Payや事前に登録したクレジットカードを使ってキャッシュレスに決済ができる。決済後、電子レシートの受け取り、レビュー、Uber予約などがすぐにできるため、食事後もスムーズに店を出ることができる。

以上の様々なユーザー側のメリットに加え、レストラン経営側にもメリットがある。手数料1.9%で利用でき、PaidEasyで決済した顧客ひとりひとりに向けてのダイレクトマーケティング施策の実行や、顧客からの直接のフィードバックの収集を通して、より効率的なロイヤリティ獲得・顧客満足度向上ができる。

このように、店の検索から支払いまでを一つのアプリで行えることで、外食における顧客の行動は簡略化される。今までだと、例えば食べログで店を調べ、グーグルマップで行き方を調べ、店で注文し、クレジットカードなり現金なりで決済していたが、PaidEasyのようなシステムが定着すれば格段にレストラン選びから決済までが便利になる。

 

 

今後

「Amazonで生鮮食品をオーダーし、自家栽培でハーブを集め、それらの食材を真空調理器に詰め、仕事にでかける。昼食はスマホアプリで検索したレストランへ行き、同じアプリで自動決済。仕事を終えて帰宅し、真空調理器から出来上がった料理を取り出し、皿に移して食べる。」

近い将来、このような生活をしている人がいったいどれだけいるだろうか。いや、先端技術が集まるニューヨークやサンフランシスコでは既にこんな生活を送っている人がいるかもしれない。ニューヨーク・サンフランシスコに住んでいなくとも、このような便利な生活を楽しみにしている人は多いのではないだろうか。「衣食住」の「食」の部分を簡単・便利にし、時間を節約していくことで、より生産性が上がったり、娯楽や健康維持に費やせる時間が増えたりするかもしれない。

ここで気づいたのは、「先進IoTと言うけれど、逆にスマートフォンがなければ何もできない」ということ。確かに、現実ではスマートフォンの重要性は日々増しているように思う。しかし、IoTの本質は、あらゆるモノがインターネットに繋がること。つまり、理想的にはスマートフォンを介さずにモノがネットに繋がり、ユーザーとコミュニケーションが取れることではないか。そのためのインターフェイスは、現在様々な試みがなされている段階だ。例えば、Amazon Echo。「Siri」のような音声認識AIアシスタント「Alexa」を搭載したスピーカーで、ユーザーは音声認識を通して音楽などのコンテンツを楽しんだり、アマゾンで買い物したりできる。もう一つの例は「リキッド・ペイ」。日本発の生体認証決済サービスで、指紋を決済IDとすることで、決済にスマートフォンすらいらない。

このような例を見るに、ユーザー自身が直接モノやコトと繋がるようなIoTのインターフェイス(特にここで挙げた生体認証)が、「飲食」に限らず今後大きく発展していくのではないだろうか。

 

次回は、総括としてIoTの今後の可能性について掲載予定です。

シリーズへのリンクはこちら

第1回『IoTの概況』
第2回『スポーツ分野におけるIoTの事例』
第3回『ファッション分野におけるIoTの事例』
第4回『ヘルスケアのIoT化』
第5回『飲食におけるIoTの動向』 ←今回
第6回『総括:IoTの今後の可能性』

 

D4DRでは、IoTを活用した事業戦略コンサルティングや、行動情報を用いたマーケティングのお手伝いをしています。ご興味のある方はぜひこちらのお問い合わせフォームよりお気軽にご連絡ください。

(出典)
www.paideasy.co/
www.cookmellow.com/meet-mellow#
www.clickandgrow.com/
fresh.amazon.com/dash/
fresh.amazon.com/help
www.walmart.com/cp/3205993
liquidinc.jp/index.html
www.amazon.com/Amazon-Echo-Bluetooth-Speaker-with-WiFi-Alexa/dp/B00X4WHP5E

 

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