新規事業・新規参入のための市場調査で調べるべき項目とは?
はじめに
新規事業への参入や新たな市場への進出を検討する際、成功率を高める上で最も重要なプロセスのひとつが「市場調査」です。優れたアイデアや革新的な技術があったとしても、市場の実態を把握しないまま事業を立ち上げると、需要の過大評価、競合の見落とし、規制リスクの見逃しなど、致命的な失敗を招く可能性があります。
実際、スタートアップや新規事業の失敗原因として「市場ニーズの不一致」「競合の激しさ」「資金不足(収益モデルの誤算)」が上位に挙げられており、これらの多くは十分な市場調査によって事前に発見・対処できるものです。
※なぜ新規事業において市場調査が重要であるかは、以下で解説していますので興味がある方はぜひご一読ください。
市場調査とは?新規事業においてなぜ重要か。
本記事では、新規事業・新規参入を検討する方や企業に向けて、市場調査で押さえるべき7つの調査項目を解説します。
調べるべき項目
① 市場規模と成長性
なぜ調べるべきか
市場規模は、事業が中長期的に生み出せる収益の「天井」を示します。市場が小さすぎれば、どれだけシェアを取っても十分な利益を得られません。また、成長性(成長率)を把握することで、参入タイミングの妥当性を評価できます。市場が急成長中であれば早期参入の優位性が高く、成熟・縮小期にある市場への参入はより慎重な差別化戦略が必要です。
調査・分析手法
- 業界レポート・調査会社レポートの活用(矢野経済研究所、富士経済、IDCなど)
- 政府統計・公的データの参照(経済産業省、総務省統計局、中小企業庁など)
- TAM(Total Addressable Market)・SAM・SOMフレームワークによる市場規模の試算
- 業界団体・商工会議所が発行する白書・統計の収集
顧客ニーズ・ペインポイント
なぜ調べるべきか
事業が成立するためには、顧客が「解決したい課題」または「満たしたい欲求」が存在しなければなりません。顧客のペインポイント(痛みの箇所)と、現時点ではどのように解決・回避しているかを深く理解することで、自社製品・サービスの設計に根拠が生まれます。「良いものを作れば売れる」という思い込みから生じるプロダクトアウト型の失敗を防ぐためにも、顧客起点の調査は欠かせません。
調査・分析手法
- 潜在顧客への深堀りインタビュー(1on1ヒアリング)
- オンライン・対面アンケート調査(Google Forms、SurveyMonkeyなど)
- SNSや口コミサイトでのユーザーコメント分析(定性的VOC収集)
- エスノグラフィー(行動観察)による実態把握
- カスタマージャーニーマップを用いた課題の可視化
競合・競争環境
なぜ調べるべきか
市場には必ず既存のプレイヤーが存在します。直接競合だけでなく、同じ顧客の課題を別のアプローチで解決する間接競合も含めて把握することが重要です。競合の強みと弱み、価格帯、マーケティング戦略、顧客評価を分析することで、自社が差別化できるポジションを見出すことができます。また、競合の多寡は参入難易度とも直結します。
調査・分析手法
- 競合各社のWebサイト・SNS・採用情報・決算資料の調査
- マイケル・ポーターのファイブフォース分析(業界構造の評価)
- SWOTおよびSTP分析を活用した自社ポジショニングの検討
- 口コミ・レビューサイト(Google、Amazon、食べログ等)での顧客評価収集
- 展示会・業界イベントでの競合製品の直接確認
規制・法的環境
なぜ調べるべきか
業界によっては、参入に際して許認可の取得や資格保有が義務付けられていたり、特定の規制を遵守しなければなりません。このような参入障壁を事前に把握しておかないと、事業開始後に多大なコストや時間が発生したり、最悪の場合は事業継続が不可能になるリスクもあります。また、規制強化の動向は将来的な市場環境にも影響を与えるため、現状だけでなくトレンドの把握も重要です。
調査・分析手法
- 関連法令・省令・ガイドラインの一次調査(e-Gov法令検索など)
- 所管官庁・行政窓口への確認・ヒアリング
- 弁護士・行政書士・業界専門家への法的観点からのヒアリング
- 業界団体のセミナー・研修への参加
流通・販売チャネル
なぜ調べるべきか
優れた製品・サービスを開発しても、それが顧客に届く経路(チャネル)がなければ事業は成立しません。業界ごとに流通構造は大きく異なり、卸売・小売・代理店・Eコマース・直販など、どのチャネルが主流なのか、参入者にとって現実的なのかを事前に把握することが、Go-to-Market(GTM)戦略の精度に直結します。
調査・分析手法
- 業界の流通構造図(バリューチェーン)の作成・分析
- 流通業者・代理店・小売店へのヒアリング
- 既存プレイヤーのチャネル戦略の分析(年次報告書・インタビュー記事など)
- ECプラットフォーム(Amazon、楽天等)での競合販売状況の観察
技術トレンドと代替品・代替技術
なぜ調べるべきか
現時点で有望に見える事業でも、技術革新によって市場が激変するリスクがあります。特にデジタル技術・AI・素材技術の進歩が著しい分野では、数年のうちに市場の前提が変わる可能性もあります。代替品や代替技術の出現可能性を事前に評価することで、事業の持続可能性を見極め、必要に応じて技術投資や特許戦略を検討することができます。
調査・分析手法
- 特許データベース(J-PlatPat、Google Patents)による技術動向の調査
- 技術系調査レポート・ガートナーのハイプサイクルの参照
- 学術論文・技術カンファレンスの動向チェック
- 業界展示会・見本市への参加による最新技術の把握
収益モデルと価格水準
なぜ調べるべきか
事業が持続可能であるためには、顧客が支払える・支払いたいと思う価格(WTP:Willingness to Pay)と、自社のコスト構造が合致しなければなりません。市場の標準的な価格水準、業界の収益モデル(単品購入・サブスクリプション・従量課金など)を把握することで、現実的な財務計画と競争力のある価格設定を実現できます。
調査・分析手法
- 競合製品・サービスの価格帯の調査と比較
- 顧客インタビューによる支払意思額(WTP)の確認
- コンジョイント分析(価格×機能の最適組み合わせを探る手法)
- 業界の標準的なビジネスモデル(BtoBかBtoCか、マージン水準など)の調査
まとめ
新規事業や新規参入で失敗しないためには、思い込みではなく「事実とデータ」に基づいた意思決定が不可欠です。本記事で紹介した7つの調査項目は、それぞれが独立した項目ではなく、互いに連動しています。たとえば、市場規模が大きくても競合が強固であれば参入難易度は高く、顧客ニーズが明確でも規制が厳しければ事業化に時間がかかります。
これらの調査を体系的に行うことで、「参入すべき市場かどうか」「どのようなポジションで戦うべきか」という根本的な問いに対して、根拠をもとに答えられるようになります。以下の表に、今回紹介した調査項目をまとめましたので、チェックリストとしてご活用ください。
| 調査項目 | なぜ調べるべきか | 主な調査・分析手法 | 優先度 |
|---|---|---|---|
| 市場規模・成長性 | 事業の収益ポテンシャルを把握するため | 業界レポート・政府統計・TAM分析 | ★★★ |
| 顧客ニーズ・ペインポイント | 製品・サービス設計の根拠とするため | インタビュー・アンケート・行動観察 | ★★★ |
| 競合・競争環境 | 差別化戦略と参入難易度を評価するため | 競合分析・ファイブフォース分析 | ★★★ |
| 規制・法的環境 | 参入障壁やコンプライアンスリスクを把握するため | 法令調査・行政窓口・専門家ヒアリング | ★★☆ |
| 流通・販売チャネル | 現実的なGTM戦略を策定するため | 業界団体・流通業者へのヒアリング | ★★☆ |
| 技術トレンド・代替品 | 将来リスクと機会を先読みするため | 特許調査・技術レポート・展示会視察 | ★★☆ |
| 収益モデル・価格水準 | 財務計画と価格競争力を検討するため | 競合価格調査・顧客WTP調査 | ★★☆ |
D4DRでは、20年以上の調査経験から上記7項目を体系的に調査することができます。また、調査設計や一次情報の取得だけではなく、そこからお客様の目的に適した分析、示唆出しまで一貫して行うことができます。
新規事業や新規参入のための調査にお困りの方は、お気軽にお問合せください。
Sho Sato
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