Web3.0は「消滅可能性都市」を救えるかーー加賀市の挑戦から考える地方創生(前編)

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加賀市Web3.0未来エンパワーメント会議 イベントバナー

2022年12月、石川県加賀市で、新しいテクノロジーを活用した地方創生について考える「加賀市Web3 0未来エンパワーメント会議」が開催された。

本イベントは、「スマートシティ加賀」を目指す加賀市が主催し、弊社・D4DRが企画運営を担当した。

加賀市は急激な人口減少問題に直面し「消滅可能性都市」としても名前が挙がっている。イベントでは加賀市の取り組みや今後の展望などが紹介され、Web3.0を活用した地方創生について熱い議論が交わされた。

本稿では、イベントの様子について2回にわたってレポートし、前編では、デジタル技術を活用した街づくりをすすめる加賀市の取り組みと、株式会社フィナンシェ代表・國光宏尚氏の基調講演について紹介する。

「消滅可能性都市」加賀市の挑戦

石川県加賀市のホテルで開催された、加賀市Web3.0未来エンパワーメント会議。市内外から多くのWeb3.0に取り組む事業者などが、会場だけではなくオンラインでも聴衆として集まった。

開催にあたり、主催者代表として加賀市の宮元陸市長が登壇し「われわれ地方都市にとって、人口減少、都市消滅の危機からどうやって脱却していくかということは喫緊の課題です。テクノロジーを使って、加賀市がどうやってもう一度浮上するか、関係人口をどう増やしていくか、そして実際の産業構造をどう変えていくかということを、今回のイベントを通じて考えるきっかけにしたいと思っています」と挨拶した。

次に、加賀市のデジタル最高責任者・山内智史氏が加賀市の取り組みなどについて紹介した。

石川県南西部に位置する加賀市は、人口およそ6万4000人の地方都市。温泉など豊富な観光資源に恵まれ、2024年には北陸新幹線の加賀温泉駅が開業を予定している。

加賀市が直面している大きな課題が、急激な人口減少問題だ。毎年およそ1000人もの人口が減り続け、2014年には日本創成会議が作成した消滅可能性都市のリストのひとつに挙げられた。こうした課題を解決するため、加賀市はデジタル技術を活用したスマートシティを目指し、移住促進など地域活性化に向けた取り組みをすすめてきた。2022年には国家戦略特区の認定を受け、Web3.0を活用した都市構想を掲げている。

e-加賀市民で関係人口100万人を目指す

その取り組みの一つが、いわゆる関係人口の一つである「e-加賀市民」の創出だ。関係人口とは、定住している住民でも一時的な旅行者でもない、地域と多様に関わる人々を指す。

人口減少に悩む地方都市を中心に、若年層など多様な人材が関係人口となり、地域づくりの担い手となることが期待されている(参考:総務省「関係人口とは」)。

地域の特産品などをモチーフにしたNFTを販売し、関係人口として取り込んで地方創生につなげる取り組みが全国各地で始まっている。

加賀市でも、NFTを用いた関係人口e-加賀市民を創出し、「加賀100万人コミュニティ」を作ることを計画している。今後、加賀市公式のNFT販売サイトを立ち上げ、e-加賀市民と一緒になった地域づくりを目指す。

実現に向けて国家戦略特区の仕組みを活用

もうひとつ、加賀市が取り組んでいるのがWeb3産業の集積だ。加賀市で事業を始めやすい環境を整えるため、「国家戦略特区」の仕組みを活用している。国家戦略特区とは、「世界で一番ビジネスをしやすい環境」を作ることを目的とする国の制度で、地域や分野を限定し、規制・制度の緩和や税制面の優遇を行う規制改革だ(参考:内閣府「国家戦略特区_制度概要」)。

加賀市は、2022年に「デジタル田園健康特区」に認定。Web3関連事業に携わる外国人に対する特例ビザの発給や、起業に必要な申請事務のサポート、税制支援など、さまざまなスタートアップに対する規制緩和・優遇措置を検討している。

リアルで快適に過ごせる土台整備も必要

また、多くの人に加賀市を実際に訪れてもらえるよう、滞在しやすい街づくりもあわせてすすめている。温泉旅館を活用したワーケーションサービスや、現在は市民でないと利用できない乗合タクシーをe-加賀市民に解放するなど、市の資産をいかしたサービスを計画中だ。

市では、関係人口の創出、Web3産業の集積、民間資本の導入、そしてWeb3の人材育成を4つの柱に掲げ、そのほかにもさまざまな取り組みをすすめている。

山内氏は「ここで成功モデルを作らないと日本は終わってしまうという気持ちでやっています」と危機感を強める。

加賀市の取り組みが、デジタル技術を活用した地方都市再生のモデルケースとなるのか、注目が集まっている。

Web2.0からWeb3.0へ、
新しいテクノロジーは何を実現するのか

基調講演では、株式会社フィナンシェ代表・國光宏尚氏が登壇。「Web3.0の現状と地方創生における可能性」というテーマでプレゼンテーションを行った。Web3.0に関する著書出版や講演など各方面で活躍している國光氏は、Web3.0にいち早く注目し、多くの事業を手がけてきた。基調講演の内容を一部抜粋して紹介する。

成熟期のGAFA、次の10年を牽引するのは

Web3.0という言葉をあちこちで耳にするようになりました。Web3.0について考える前に、まずWeb2.0とはなんだったのか、振り返ってみたいと思います。

Web2.0は、2007年に始まりました。この2007年はテクノロジー業界的に凄まじく重要な年で、iPhone、Twitter、ほぼ同じ年にAmazonのAWSクラウドサービスが出た年です。

スマートフォン、ソーシャルネットワーク、クラウドという、それ以降の10何年間を変えるテクノロジーが、偶然2007年前後にでて、この三つが有機的にまじわっていきました。

そして、Web2.0を代表するGAFA、すなわちGoogle、Facebook(Meta Platforms)、Apple、Amazon、この4社の時価総額が、去年770兆円となりました。日本の全ての上場企業の時価総額を合わせて750兆円ですが、それを、この4社で抜いてしまったんです。

ただ一方で、全てのテクノロジーは、成長曲線から逃れられないものでもあります。イノベーター層からはじまり、大きく成長し、成熟期に入っていきます。

この猛威を振るったWeb2.0も、10数年がたち、いよいよ成長しなくなっています。GAFAの決算はボロボロで、日本のWeb2を代表するメルカリやLINEのような会社も全然成長していません。

Web2.0が成熟期を迎え、次の新しいチャンスが生まれつつあると言えます。スマホがVRや眼鏡型グラスに、ソーシャルネットワークがブロックチェーンに、そしてクラウドがAIに変わってきています。これまでのトレンドがいよいよ終盤を迎え、新しいトレンドに入りつつあるんです。

さらにもう1つ振り返って、Web1.0についても少し見てみます。スマホの前はPC、ソーシャルの前はヤフーとか昔のWebサイト。クラウドはオンプレミスみたいなものですね。こうしたWeb1.0時代に重要だった会社をみると、PCを売っていたDELL、HP、NECは存在感が小さくなっているといえます。アメリカのヤフーも買収されました。結局、このWeb1.0時代に猛威を振るった会社も、新しい時代についていけなくなると、すぐ重要ではなくなってしまうんです。Web2.0で大成長したこのGAFAも、4社で日本の全部の時価総額を超えていますが、ただ、彼らの成長も止まりました。

これから次の10年間で、Web3.0をしっかり乗り切る会社が出てくると、再び勢力図がガラガラポンになる可能性が十分にあると思っています。

オーナーが富を独占したWeb2.0へのアンチテーゼ、
インセンティブの民主化を目指すDAO

Web3.0第1世代として出たのが、ビットコイン、その次に出てきたのが、イーサリアムです。

イーサリアムは、ビットコインの基盤になっているブロックチェーンというテクノロジーを使って、いろいろな分散型のアプリケーションを作れるプラットフォームができるんじゃないか、そういう発想で生まれました。このイーサリアムを作ったのは、当時19歳のヴィタリック・ブテリンという若者です。そこから、このWeb3.0の革命が始まりました。

今、このイーサリアムの仕組みを使っていろいろな新しいものが生まれています。2020年に出た分散型金融のディファイン、NFT、さらに今、特に注目されているのが、「DAO」です。DAOは自律分散型組織というもので、地域創生を考える際にとても重要になってくると思います。

トークンを使ったDAOの仕組みについて、僕がやっているFiNANCiEを例に説明します。(以下は、FiNANCiEの紹介動画の音声より)

『FiNANCiEは、ブロックチェーン技術を活用したトークン発行型クラウドファンディングで、スポーツチームやクリエイターの活動をサポーターが応援できる仕組みです。サポーターはオーナーが立ち上げるプロジェクトのトークンを購入することでプロジェクトを直接かつ継続的に支援することができます。

かわりにサポーターはオーナーから特典を獲得できたり、トークンホルダー専用のサイトでコミュニケーションができたり、投票機能を使ってプロジェクトの意思決定に参加できるなど、プロジェクトの成長をオーナーと一緒に体験することができます。

サポーターはプロジェクトのトークンをいつでも売ったり買ったりすることができますし、支援者のニーズに応じてトークンの価値が上下します。それはサポーターにとって、最初から応援することのインセンティブになります。』

今までのクラウドファンディングだと、商品をつけてお金を集めるだけで、成功しても失敗してもファンが受け取るメリットに違いはありませんでした。

対してDAOは、トークンを発行し資金を集めます。このトークンが疑似流通マーケットで売買できるので、需要と供給に応じて価格が上がったり下がったりするというのがひとつのポイントです。もし、応援したところが成長すると、結果、トークン欲しい人が増え、トークンの価格も上がり、応援したファンにもメリットがあるかもしれません。こうしたインセンティブ設計がDAOのすごく大きな特徴です。

今までのWeb2.0時代では、GAFAみたいな巨大なプラットフォーマーが、アイデンティティもお金も富も、全てを支配するような結果になっていました。Web3.0のムーブメントは、そうしたものに対するアンチテーゼのひとつでもある、そんな見方もあります。

例えばWeb2.0時代にめちゃくちゃ成功したYouTube、このYouTubeの時価総額は40兆円くらいです。この40兆円がどこにいったかというと、最初にYouTubeを作った企業家、投資したVC、YouTubeを買収したGoogle、これらが40兆円の行先です。もちろん、彼らは当然貢献したけれど、YouTubeの成功に貢献したのが彼らだけかというと、そうではありません。まだ全く流行っていない頃から動画を投稿し続けた名もなきクリエイターや、その頃から見ていたファン、それを友達に知らせた人、記事にした人、コードを書いた人、いろいろな人がYouTubeの成功には貢献してきたはずです。しかし、彼らに対する報酬はゼロなんです。

これがもし、Web3.0時代のDAO的なYouTubeがあったとすると、YouTubeトークンみたいなものがあって、動画を投稿する、動画を見る、友達に知らせる、記事に書くといったそれぞれの貢献に応じてYouTubeトークンがちょっとずつもらえるはずです。

そして大成功した暁には、YouTubeでいう40兆円が、貢献に応じて広くちょっとずつ分配されていく。この辺がこれまでとの大きな違いです。

DAOのすごく大きな特徴は、このインセンティブの民主化という点です。貢献に応じて報酬が支払われる形が本来あるべき姿だとすると、今まではここが過度に一部の資本家によっていました。この部分を変えてインセンティブを民主化し、オーナーだけではなく、従業員、さらに顧客やファンにも広げていこうというのが、このDAOの大きな流れです。

Web3.0を地方創生にどう活用するのか

最後に、地方創生の例として、静岡県三島市のウイスキープロジェクトをご紹介します。

三島市は富士山のふもとに位置していて、綺麗な水を活かした日本酒で有名なところです。地方創生やインバウンドを強化する中で、その地方でしか作れない名産を作ろうという動きがあり、今まで規制が厳しかった蒸留酒作りでも規制緩和が始まりました。

そこで手を挙げた自治体の一つが、三島市です。土地をいかして、市だけではなく、多くの人を巻き込んでDAOという形で三島産のウイスキーブランドを作ろうとしています。

プロジェクトでは、トークンを買うと、トークンの保有量に応じてそれぞれ熟成年数の違うボトル製品を購入する権利がもらえます。ウイスキーは熟成に時間がかかるので、みんなで蔵の場所を決めたり、マーケティングや宣伝方法について相談したり、この三島ウイスキーを世界的ブランドにするためにトークンオーナーはプロジェクトに意見を出すことができます。もしみんなのがんばりが報われて、一番最初に商品が出てくる3年後の製品が有名になったら、その時三島ウイスキーは初回購入した値段では買えなくっているかもしれません。そうすると、またトークンの価格が上がって、トークンを購入した人たちに更なるメリットが発生します。

トークンを使うことで、多くの関係者を巻き込みながら、自立的にみんなががんばる、そして成長が早まる仕組みになっているんです。

この三島市のプロジェクトでトークンを買っている人には三つのタイプがあって、一つ目は三島愛にあふれる地元住民や地元企業。二つ目は、自分たちで世界ブランドのウイスキーを作るという点に面白さを感じてプロセスを楽しむために参加する人、最後はトークンの価格上昇を期待して参加する投資家。

今までの地方創生では、住民や地元に縁のある人以外に参加を促すことが難しかったのですが、地元民以外のより幅広い人を巻き込んでいくことができるのも、DAOのひとつの利点なのかなと感じています。

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以上、「加賀市Web3 0未来エンパワーメント会議」について、前編では加賀市の取り組みと、株式会社フィナンシェ代表・國光宏尚氏の基調講演について紹介した。引き続き後編では、加賀市での取り組みをすすめる事業者らが参加したディスカッションの様子をレポートする。

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