「山本海苔店の不易流行 時代と共に生きるイノベーション」 (ネクストリテールラボ 第21回)

2019年2月28日、D4DRが企画・運営に関わる第21回「Next Retail Lab(ネクストリテールラボ)」フォーラムが開催されました。今回は登壇者として、株式会社山本海苔店 専務取締役 営業本部長兼管理本部長の山本貴大さんをお迎えしました。

プロフィール

山本貴大

1983年生まれ。2005年に慶應義塾大学法学部卒業後、大手銀行に入行し、法人営業などを経験。2008年に山本海苔店入社。仕入部で海苔全般の勉強を行い、山本海苔店100%子会社丸梅商貿(上海)に勤務、おむすび屋「Omusubi Maruume」の立ち上げにもかかわる。7代目を引き継ぐ立場として、山本海苔店の営業全般を担当するとともに海苔文化の普及活動にも尽力している。

海苔市場の現状とこれからについて語っていただき、山本海苔店の目指す方向性について教えていただきました。

日本人と海苔の関わり方の変化

 海苔はご飯や蕎麦、寿司など日本人の食事において、必要不可欠な存在です。古くから贈答品としても親しまれ、食以外でも日本人の生活に大きく関係してきました。しかし近年、贈答用の高品質な海苔市場が急激に縮小しているといいます。それは、「配達技術の向上」「選択肢の広がり」「虚礼廃止」の3点が原因だと、山本さんは語ります。軽くてかさばらず、運びやすい海苔ですが、配達技術が向上することによって、重いものでも効率よく運べるようになり、贈答品として選ばれる品物(例えばビールなど)の選択肢が増えたことが影響しているそうです。また、そもそも人に物を送るという機会も減少していることから、贈答用の海苔市場は縮小してしまったといいます。

おいしい海苔が世の中から消える!?

 海苔は、海苔の芽が伸びて収穫が早ければ早いほど品質が高くなるとされています。贈答用の海苔市場が縮小することで、高品質な海苔を売る市場がなくなってしまうようです。それは海苔の業態に、海苔を作る人(漁師)は作るだけ(売れない)、販売する人は売るだけ(作れない)という風に、完全に切り分けられている「製販分離」の文化が深く根付いていることが大きく影響しているそうです。 
 品質の良い海苔の需要がなくなることで、漁師さんから高く海苔を買えなくなります。そうすると漁師は効率を求めて海苔の芽を伸ばしきってから収穫してしまうようになってしまいます。そうなってしまうと、高品質な海苔が世の中からなくなってしまうと山本さんは語りました。

「言わない美学」から「伝える美学」へ

 日本橋界隈には老舗が多く存在し、それら老舗の中では自らの良さを主張しすぎるのは野暮であるという考えがあるようです。しかし、山本海苔店は、これから自分たちで自らの良さを積極的に発信し、「高級品だから」ではなく、「おいしいから」と感じてお客様に購入していただけるようにしたいと考えています。「言わない美学」から、「伝える美学」へと方向転換していくと山本さんは言います。贈答品や百貨店だけの商品展開だけでなく、日常的にお菓子感覚で食べられる「おつまみ海苔」のような、いつでもどこでも買えるおいしい商品を作っていきたいと山本さんは語りました。

画像: 会場で試食用に配られた、山本海苔店の「おつまみ海苔:うにの味」 2枚合わせの海苔に、うにがサンドされている。ビールや日本酒などのお酒に合う味付けとなっている。もちろんおやつにも最適な一品。
会場で試食用に配られた、山本海苔店の「おつまみ海苔:うにの味」
2枚合わせの海苔に、うにがサンドされている。ビールや日本酒などのお酒に合う味付けとなっている。もちろんおやつにも最適な一品。

 現代の日本人の海苔への認識は「おにぎりの海苔は手が汚れないため」というような程度の人が多いかもしれません。海苔の美味しさを伝え、海苔の価値を消費者に認識してもらうことが、これからの海苔市場を盛り上げるには重要だと感じました。
 「言わない美学」から「伝える美学」へと歩みだした山本海苔店。海苔をただ売るだけでなく、海苔の利用シーンも提供していく構えであるとのことなので、これからは様々な場所で山本海苔店を目にすることができそうです。まずは海苔のストーリーを消費者に上手く伝え、興味を持ってもらい、食べていただくということを繰り返せば、海苔の品質が良いので、すぐに価値は伝わっていくと思います。今回の山本さんの熱い講演を聴いて、かつて時代のニーズに合わせて、ドライブスルーを日本で初めて導入した先代のように、現代に合わせた海苔の価値を消費者に伝えられると感じました。

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D4DR PR Staff
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