b-30 : 核抑止の限界・核拡散・核紛争リスク

核抑止の限界・核拡散・核紛争リスクとは?

予想される未来社会の変化

  1. 核抑止を巡る不安と核拡散リスクが深刻化しつつある。世界の核兵器保有国(9か国)が核兵器の近代化と増強を進め、多くのミサイルが発射準備状態に置かれている。
  2. ロシア・ウクライナ戦争が勃発し、世界の紛争リスクは一気に高まった。その後も、アメリカがイラン攻撃を開始し、世界規模での紛争リスクがますます高まっている。
  3. アメリカの同盟国として日本の軍事協力も迫られている。緊張感が高まる中で、国際社会でどのように立ち回るかが重要になっている。

トレンド

世界の核戦力、2025年1月

出典:SIPRI「新たな軍拡競争の到来で核リスクが増大――SIPRI年鑑が新刊発売」

SIPRI(ストックホルム国際平和研究所)は、2025年版年報で、核抑止を巡る不安と核拡散リスクが深刻化しつつあると警鐘を鳴らしている。

世界の核兵器保有国(9か国)は、2024年にそれぞれ核兵器の近代化と増強を進め、2025年1月時点で全体の核弾頭数は約12,241基と推定され、そのうち9,614基が運用可能な備蓄に置かれている。また、そのうち約3,912基がミサイルや航空機に搭載可能な配備形態にあり、さらに約2,100基が高警戒態勢(発射準備状態)に置かれている。

冷戦終結後、核弾頭の廃棄が新規配備を上回る傾向であったが、現在ではこの傾向が逆転しつつあり、抑止・軍備管理の枠組みが崩れつつあるという分析も示されている。

人工知能、サイバー能力、ミサイル防衛、量子技術などの最新技術の導入が、意思決定を加速し、誤判断・誤通信・技術事故を通じて核戦争リスクを高めうるとも指摘されている。

このように、核抑止理論の前提として機能してきた抑止均衡は揺らぎつつあり、核拡散と核兵器競争の深化、そして技術要因による誤発・偶発衝突の危険性が高まっている。

核兵器を増強する中国

出典:Arms Control Association「国防総省、中国の核兵器は依然として増強中と発表」

米国防総省は、2024年半ば時点で中国の運用可能な核弾頭数が600弾頭を超えていると推定し、2030 年には1,000 弾頭以上、さらに 2035 年以降も拡張を続ける可能性があると報告している。

中国は発射警報時態勢(launch-on-warning)や低出力核兵器の採用、海上発射弾道ミサイル潜水艦(SSBN)の新型開発など、抑止と報復能力の強化を狙っている。

また、中国では高速増殖炉の建設も進んでおり、核兵器を支える燃料サイクル基盤の整備が拡大している。

米国製巡航ミサイル「トマホーク」のウクライナへの供与問題

米国がウクライナにトマホーク巡航ミサイル(射程約2,500 km)を供与する可能性が、2025年10月の時点で協議されている。出典:産経新聞「ゼレンスキー氏、17日にトランプ氏と対面会談へ トマホーク供与問題巡り最終協議」

ウクライナはこれまで、ドローン(無人機)などで露国内の製油所を集中攻撃してロシアを燃料不足に追い込み、ロシアの継戦能力を低下させる戦術を続けている。ゼレンスキー氏は長射程のトマホークの供与を実現し、こうした戦術を推し進めたい考えだとみられる。

ゼレンスキー氏は仮にトマホーク供与が実現しても軍事目標のみを攻撃し、露国民への攻撃には使用しないと表明しているものの、トマホーク巡航ミサイル(射程約2,500 km)はウクライナ国内からロシアの首都モスクワも射程圏内となる。

こうした動きに対し、ロシア側は強く反発。元大統領メドヴェージェフは、発射後には核搭載型との識別が不可能になるとして核抑止論の曖昧性を指摘し、「供与は“誰も得しない結果”を招く」と警告した。プーチンも、供与を「米ロ関係の破壊」「エスカレーションの質的転換」と位置づけ、戦略的均衡への打撃を示唆している。

もしウクライナからロシアに向けてトマホークが発射された場合、ロシアが核兵器で反撃する可能性もあり、動向が注目される。