経営リーダーが取り組む、2040年の未来社会像から妄想する水ビジネスの変革と挑戦
上下水道処理設備をはじめ、水環境のソリューションで社会インフラを支える住友重機械エンバイロメント株式会社。安定した事業基盤を持つ同社ですが、社内には安定しているが故に、経営リーダー層の閉塞感、長期的な課題認識が欠如しているという「静かな課題」がありました。
そこで同社では、D4DRが提供する経営リーダーを対象とした「市場創発ワークショップ」を、組織の活性化と意識改革、長期戦略策定への基盤作りを目的に、2025年3月から7月にかけて毎月1回実施。計5回のワークショップでは、「水」に関する2040年の未来社会像を描き、ビジネスチャンスを発想して、最終日には経営リーダーひとりひとりが「長期ビジョンとミッションステートメント」を発表しました。
今回のインタビューでは、ワークショップ企画の背景にあった課題感と役職や部門の壁を越え「水」ビジネスの未来を議論するプロセスを通じて参加者の意識はどう変化したのか、未来への種まきを始めた経営企画部の取り組みについて伺いました。

<お話を伺った方>
取締役 事業統括部長 村田圭三さん(写真左)
事業統括部 経営企画部 課長 井口寛三さん(写真右)
経営企画のファーストステップ - なぜ今、経営リーダーに「バックキャスト」が必要なのか?
今回の取り組みの背景にあった課題感を教えてください。
村田さん:もともと、部長などの経営リーダー層に「あまりチャレンジしない」「上が決めなければ、我々は動くわけにいかない」といった閉塞感のようなものがあると感じていて、そこを打破したいと思っていました。私も彼らと同世代ということもあり、皆が新しいことを考えてくれたら、皆も会社も元気になるんじゃないか、だから新しいことに取り組んでほしいと思ったのがきっかけですね。
井口さん:これまで短期的な財務目標や課題に対しては、しっかりと施策を打って結果を出してきました。しかし、長期的な視野に立った時に、今うちの会社や事業に何が問題点としてあるのか、そこを抽出して洗い出すということが、なかなかできていませんでした。
そういった部署の課題意識、問題意識に対するアプローチとして、今回のワークショップに至りました。経営企画部としては、長期的な経営戦略を企画・立案するという役割があります。それを果たすファーストステップが「バックキャスト思考」であり、社内でもその思考を周知させる必要性があると感じていました。
なぜワークショップという手法を採用されたのでしょうか?
井口さん:セミナー型の勉強会や講演会といった、研修や自己啓発のプログラムを社内で進める機会は多いのですが、特に経営課題に対するアプローチとしてワークショップというのは、今まであまり社内で実施した実績がありませんでした。
しかし、かねてより弊社の社長が「自分ごととして物事を捉えて考えていく人間を育てていかなければいけない」「そういうスキルを持っていかなければいけない」と言っていることもあり、それに対応することとして、ワークショップという手法が非常にマッチするのではないかと、D4DRさんからご提案いただいたことで検討を始めました。
プログラムの企画や準備で苦労されたことがあれば教えてください。
村田さん:背景の課題意識を踏まえて、(参加者として)経営リーダー層や役員クラスに話をしていったのですが、「これからの事業のことなら、自分たちではなく、もっと若い社員に参加してもらった方がいいのではないか」という声がありました。
そこで「上が変わることによって下も変わっていくし、雰囲気も変わる」、もっと言うと「別に上が変わらなくてもいいけれど、上が何かやり始めたぞという姿を見せることで、下にも影響が出るはずですよ」と力説してですね。
私自身も社内の研修で「変わろう」とか「チャレンジしていこう」という風に自分のマインドに変化があった直後でした。「この感覚をみんなにも(得てほしい)」と思いましたので、割と「ぜひやりましょう」と、私の声として発信しやすかったというのはありますね。


(ワークショップの様子)「未来シナリオ」「重要な変化要素」をインプットし、さまざまな視点から未来の脅威とチャンスを整理して、未来の自社の立ち位置を思い描きました。
「技術者魂」の再燃 - 気づきと情熱を原動力に、組織変革の当事者を意識した瞬間
ワークショップ開催中、参加された方々の様子はいかがでしたか?
村田さん:最初はすごく守りに入った対応だったと思うのですが、2回目、3回目と回を追うごとに、だいぶ自分をさらけ出すようなディスカッションができるようになってきたと感じました。
開催後、参加された方に何か変化はありましたか?

村田さん:社内で「PRIDE PJ(プライドプロジェクト)」という取り組み(編集註:社員一人ひとりが組織の成長・改善のために自ら考え、主体的に行動する風土の醸成を促進するための、全社横断的な組織開発活動)があるのですが、その活動の中で、今回参加したある部長が、純粋な技術の話をすごく楽しそうに、にこやかに皆に話していたそうです。「水処理ってこうやるんだよ」と、いち技術者として喋っている姿がすごくキラキラしていたというコメントがありました。
自分を取り戻した、というのは大げさかもしれませんが、水処理に向き合う初心を思い出したというか、マネージャーではなくエンジニアとしての自分を出してくれる場ができたんだなというのが、すごく嬉しかったですね。
井口さん:いろいろな感想を耳にしましたが、部長と部下とのコミュニケーションのツールとしてこのワークショップを使った、ワークショップでこういうインプットがあったんだよ、という話に使われたと聞いたのが嬉しかったですね。
経営層と部長陣とのワークショップでのコミュニケーション、そしてそれを通じた部長とその下の職階の方々とのコミュニケーションという効果もあったと感じています。
全社員が「自分ごと」で会社を動かす組織への”脱皮”に向けた、次期中計策定へのフィードバック
点数をつけるとしたら、今回のワークショップは何点ですか?
村田さん:点数をつけるなら、僕は70点ぐらいかなと思っています。もっと弾けてほしかった、もっと振り切って自分を出してほしかったというのが正直な気持ちです。ですが、それは実施側だけの話でもなく、こちらの気質というか、カチカチでしたからね(笑)。
井口さん:定量的な測定というより、アンケートの結果や参加者の声からになりますけれど、私は80点~90点ぐらいという感じはしますね。
きっかけを作るというのが今回の目的の1つでもありましたので、そういう意味では目的は達成されたのかなと。それを文化に落とし込むには、ある程度数をこなしていく必要があります。5日間ではなかなか…。残りの10点は、そこの文化に落とし込むための「伸びしろ」というか「やりしろ」、このワークショップの「継続しろ」という意味です。

(発表の様子)最終日には、水ビジネスの将来を自分のパーパスと紐づけ、ミッションステートメントを発表しました。永井社長自らも発表し、最後には総括として、「未来のことを考えることで形になるチャンスが訪れる」「部下の話にも何らかのヒントがある。話をよく聞いて、楽しい会話にしてほしい」と、未来志向を促すお話がありました。
D4DRの支援はいかがでしたか?
村田さん:「水」ビジネスを妄想する前に、前提となる2040年の社会はどうなっているんだろうか?そこから考え始めると、参加者のスタートラインを揃えるのに相当な労力を要すると想像していましたが、前提条件となる未来社会像を提示して頂いたことにより、刺激を受けてどんどん妄想が広がったと感じています。
想定するゴールに導くのではなく、参加者側の考えや思いを引き出して、伴走して頂いたことに感謝申し上げます。
今回の成果を、経営企画部の取り組みや全社的な戦略にフィードバックしていく予定があれば、教えてください。
井口さん:次期中期経営計画(の期間)が2027~2029年度となります。来年、本格的にその中計の方向性や施策を社内で議論するにあたり、そのスタート地点になる基本的な方針に、今回のワークショップのアウトプットや個人の発表内容などが反映できるか、活かせるかと考えています。
村田さん: 今回は経営リーダー層を対象にしましたが、中堅・若手に対しても同じように、ただ言われたことをやっているだけではなく、自分たちの会社や事業を将来どういう風にしていこうかなと考えるきっかけとして活用したいですね。
若い人たちからは、おそらくもっと全然違うアイデアがいっぱい出てくると思うんです。それはこちらにとっても考える材料やチャンスになると思うので、活用したいと思っています。
最後に、達成してほしい長期的なインパクトについて教えてください。
村田さん:参加メンバーには、ぜひもっと元気を出してほしいなと思います。部長であれば上に経営層がいるからといって、「経営層が指示してからじゃないと僕らはできません」といった考え方ではなく、自分たちが決めて会社を進めていくんだ、という意識を持ってほしかったのがきっかけなので。
そういう意識でどんどん経営側に「こうしたいんだ」と提案を出して、自分たちで進めていってほしいと思っています。だいぶ風通しが良くなったと思うので、少しずつ動いてみてほしいですね。
それから、その部下にあたる人たちには、これから(今回と同様の)アイデア出しのようなワークショップを企画していきますので、積極的に参加していってほしいです。会社の技術や事業だけではなく、最新トレンドや業界がどうなっていくんだろうといったところにもアンテナを張っていただいて、その中から新しいアイデアがあればどんどん取り入れて、「うちでやるとしたら、どうすればいいか」ということを考えてほしいですね。
最初にも言いました通り、変わることに非常に奥手な組織なので、そこを打破して、変わることに積極的にチャレンジしてもらいたいと思います。

井口さん:経営企画部というチームは、村田が申した内容を社内に発信していくこと、変化を求めたり企画をしたりしていくこと、そういった役割を担っている部署であるということですね。それを社内に周知することもそうですし、自分に対する戒めとして考えていかなければいけないと思っています。長期的インパクトとしては、外に向けても、自分に対してもそういう意識を持っていかなければいけない。「そういう組織であるべきである」「そういう自分であるべきである」という、意識の変化ですかね。
編集後記
社会へ安定的にサービスを提供することが求められるインフラ企業においては、その求めに応じることが最優先となりがちな一方で、それは時に組織を硬直させる最大の壁となります。
全5回のワークを通して、経営リーダー自らが未来社会像を描き、その未来から水ビジネスの姿を問い直す貴重な対話が生まれました。最終回では、各チームが2040年に向けたビジネスチャンスをロードマップとしてまとめ、さらに参加者一人ひとりが自分の原点や志を言葉にしました。
今回のインタビューでは、ワークショップを通して起こった変化として「自ら価値を創出する水処理のプロ」としての“思い”を発露し、輝きと情熱を取り戻したという経営リーダーの話が印象的でした。
未来を創るのは、技術だけでなく、そこで働く私たちの“思い”です。
今回の学びと気づきが、これからの挑戦を進めるための小さな一歩となれば幸いです。
