5G時代に店舗が提供する新しい体験

2019年7月24日、D4DRが企画・運営に関わる第26回「Next Retail Lab(ネクストリテールラボ)」フォーラムが開催されました。今回は登壇者として、フォースター株式会社代表取締役でありJECCICAジャパンEコマースコンサルタント協会代表理事の川連一豊さんを迎えました。

川連一豊

ネットのおもてなし第1人者。フォースター株式会社 代表取締役。JECCICAジャパンEコマースコンサルタント協会 代表理事。書道5段そろばん2級。ヤマハ世界大会出場ベストキーボードプレイヤー賞2年連続受賞。2003年楽天SOY受賞。

川連さんが語る、海外の最新デジタルコマース、リアル店舗事情やテクノロジー情報をもとに、5G時代の小売流通業はどうあるべきか、議論しました。

NYハドソンヤードに見る、最新リテール動向

2019年3月、ニューヨークに最新複合施設「ハドソンヤード(Hudson Yards)」がオープンしました。有名シェフが営むレストランや高級ブランドショップ、体験型ショップが多く集まり、ニューヨークで今一番話題を集めているスポットです。

ハドソンヤードのショッピングモールには来場者を楽しませる仕組みが多く存在しています。モールの至るところに壁画やオブジェなどのアート作品を設置し、様々なフォトジェニックなスポットを提供しており、多くの来場客が写真を撮り、SNSへ投稿している様子を川連さんは目の当たりにしました。

また、ハドソンヤードのショッピングモールの各店舗では先進的なサービスを実施しています。最新IoT、ハードウェア製品をショールーミング型店舗で展示・販売している「b8ta」では、製品の横に解説映像を配信するタブレットが置かれています。タブレットの映像を見ると、メーカーからb8taに広告料が支払われる、いわばリアルなリスティング広告モデルを構築し、収益を得ているそうです。

アメリカの購買体験重視型ニューリテール

ハドソンヤード以外にも、ニューヨークには先進的な体験型ショップが多く登場しています。2018年11月にオープンした「ナイキ House Of Innovation」では「NIKEアプリ」を活用し、新たな買い物体験を提供していると言います。例えば、ユーザーは店舗でアプリを使いチェックインをします。試着をしたい商品が見つかったら、アプリで商品値札のバーコードやQRコードをスキャンし、アプリ上で商品を選択して試着希望のボタンを押します。すると、スタッフが試着室まで商品を持ってきてくれるのです。また、レジが店舗内に“ほぼ”なく(アプリを使えない人のために目立たない場所にあります)、アプリ上で決済することが可能です。アプリを使って、決済や商品情報収集などの手間を省き、リアル店舗でしかできない体験にフォーカスしてサービスを提供しているようです。

5G時代に求められるのは価値ある購買体験

リアル・オンライン共に、リテール分野は次世代移動通信「5G」によって多大な影響を受けるだろうと川連さんは言います。5Gの普及に伴い、ロボットやXR(ARやVR)といった新たなデバイスが登場することで、これからの購買体験は大きく変わる可能性があります。リアル店舗領域では認証技術とサイネージの活用により顧客に合わせた情報の提供が可能となるでしょう。顔認証技術が普及すれば、商品バーコードをスキャンする事なく、自動決済することが一般的になることが予想されます。また、ロボットがショッピング中に後ろを追従しながら、商品のレコメンドやレビューを提供することもあるかもしれません。このような、リアル店舗だからこそできる購買体験が提供されるでしょう。

オンライン領域では、特にアパレル業界が大きな影響を受けると川連さんは言います。5G時代にはバーチャル空間で商品の試着が可能となり、その場に居なくてもほぼ自分のイメージ通り(サイズ、色、形など)の商品を購入することが可能となります。また触覚情報も合わせて伝送することで、商品の質感も遠隔に居ながら把握することができようになります。つまり、5G時代は商品を購入するという点において、リアルとオンラインの境界がなくなると考えられます。

そのためこれからのリアル店舗では、顧客に価値のある体験を提供できているかどうかが競争力に繋がります。実際に行って体験したくなる、何度も足を運びたくなる体験型の店舗設計は5G時代にますます重要となるでしょう。

5Gの普及に伴い、身の回りのインフラ・デバイスが新しく登場することで我々の生活は大きく変わるでしょう。今後、サービス提供者側はアプリでの決済や自動配達など、高い利便性を提供することは当たり前となります。そのため、これからのリアル店舗の競争軸はますます体験価値へシフトしていくのではないでしょうか。つまり、顧客に対して、いかにユニークかつ驚きのある体験を提供することができるかが鍵になると感じます。

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